からのゆりかご―大英帝国の迷い子たち

ケン・ローチの息子が監督した『Oranges & Sunshine』という映画について Telegraph の記事を読みまして、かなり興味津々。日本で公開するかなあ。日本語の紹介記事もコチラにあります。

『Oranges & Sunshine』の内容を上の記事から抜粋します。

英国政府が19世紀から1970年代にかけて、13万人以上の孤児や何らかの理由で親から引き離された児童を、福祉の名のもとにオーストラリアほか英連邦諸国の施設に送り込んでいた「児童移民制度」にメスを入れた作品。


児童移民? 何それ? ということで、この問題を告発したソーシャルワーカー、マーガレット・ハンフリーズの本を先に読んでみました。
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からのゆりかご―大英帝国の迷い子たち』マーガレット・ハンフリーズ著、
都留信夫・都留敬子訳、日本図書刊行会

ソーシャルワーカーのマーガレットのもとに、届いたオーストラリアからの1通の手紙。イギリスから船に乗せられてオーストラリアに送られたという女性からの、親を探してほしいという依頼が、すべての発端だった。

子どもだけでオーストラリアに養子に行ったなんて、そんなバカな、と最初は信じられないマーガレットだが、他にも次々と名乗りを挙げる「児童移民」たちが現れ、調査するにつれ、それが国家ぐるみの大きな「事業」だったことが明るみになる。

旅行に行くのだと思っていた子どもたちは、はっきりとした理由も聞かされず、外国に送られる。行き先はオーストラリアだけでなく、カナダやローデシア(ジンバブエ)、ニュージーランドなどで、教会関係の施設や孤児院に入れられた子どもたちは、精神的・肉体的に虐待が行われたり、過酷な労働に従事させられたりしていたのだった。

また、養子に出した親のほうも、自分の子どもが外国に移民させられたことを知らなかった。戦後の厳しい社会状況で、裕福なイギリス人家庭に養子にもらわれたほうが子どもの幸せだと考え、泣く泣く子どもを手放した親は事実を知って愕然とする。

いや…すごいね…。私は英国でこんなことが70年代まで行われていたなんて知らなかったし、しかもそれが1986ににマーガレット・ハンフリーズが調査を開始するまで誰にも気づかれず、2009年にようやく首相が謝罪したということにショックを受けた。各国政府と施設の隠蔽体質も恐ろしい。

さらにマーガレットが、ジャーナリストや友人、家族などの力を借りつつも、実質ひとりで、身体がボロボロになりながらも取り組んだことも驚嘆。この件から手を引けと脅されて、命の危険まであったのに。

しかし誰にも気づかれずに、どうしてこんなことができたんだろう。15万人の子どもが人知れず外国に送られて、なかには3歳の子どももいた。児童移民という言葉は体裁がいいかもしれないけど、実態は奴隷みたいなものだしなあ。この政策の背景のひとつはお金の問題で、要は英国内の施設で子どもひとり当たりの養育にかかるお金よりも、オーストラリアで養育してもらったほうが安い、ということなのだった。

邦訳は日本語がちょっと読みにくいんだけど、読んでるうちに慣れます。原書のタイトルは『Empty Cradles』です。

●参考リンク
British children deported to Australia/BBC
Telegraph のブラウン首相謝罪の記事
Child Migrants Trustのサイト
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Commented at 2011-04-01 18:06 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by rivarisaia at 2011-04-02 01:06
これはあまりに酷いというか、言葉もない話ですよね…。

政府レベルでは、かたや白人の労働人口が増えるし、もう片方は養育費を国が出さなくて済むからお得、みたいな考えなんでしょうけど、子どもにとってはたまったもんじゃないですよ。

本当にすさまじい話。映画も公開されるといいなあ。
Commented by fontanka at 2012-03-24 17:09 x
ミステリチャンネルで「ダルジール警視」ものをやっていますが、今回、この児童移民をとりあげてました。
原作ではない話ですが。
Commented by rivarisaia at 2012-03-24 20:58
これ映画版が4月に公開になります(東京は4月14日から岩波ホール)。ミステリチャンネル、うち見られないんですよね。ダルジール警視もの見たいな〜。
by rivarisaia | 2011-03-04 23:25 | | Trackback | Comments(4)

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