The Tiger's Wife(タイガーズ・ワイフ)

早寝早起きに憧れているので、昨晩9時に就寝してみたところ、午前3時に爽やかに目が覚めた。

私の理想より、ちょっと早いね…。5時頃がよかったんですけどね。3時って。修道院の朝課みたいだ。今日の昼頃に訪れるであろう睡魔との戦いに勝てるかどうかが不安。せっかくなので早起きついでに、たまりにたまっている洋書の感想でも。

これは大変おすすめで、評判もいいし、おそらく邦訳出るんじゃないかなあと期待。

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The Tiger's Wife』Téa Obreht著、Random House

内戦が続いたバルカン半島のある国。医療活動のため海の近くの孤児院へ向かった主人公の若い女医ナタリアに、祖父の死の知らせが届く。古ぼけた『ジャングルブック』をいつも携えていた祖父。ナタリアは、その祖父と子ども時代に動物園にトラを見に行ったこと、そして祖父が語った肉屋の妻 "Tiger's Wife" の話や、不死身の男 "Deathless Man" の話を思い出し…


バルカンで寓話、というと映画『アンダーグラウンド』を思い出しますが、読後の印象も少し近い。「トラの奥さん」と「不死身男」(デスレスマン、という響きがいい)はふたつとも祖父の体験談なのですが、現実にはありえなそうで意外とありえる、という気がしてくるのも舞台がバルカンだからかもしれません。

「トラの奥さん」は肉屋の夫から虐待を受けているムスリムの聾唖の女性。第二次世界大戦のとき、爆撃によって動物園から逃げだしたトラが村に迷いこみ、人々が恐怖におののくなか、肉屋の妻だけがそのトラと心を通わせたため、村人から「トラの奥さん」と呼ばれて恐れられてしまうのだった。

「不死身男」と祖父が何度か遭遇する話もとてもおもしろくて、川のほとりのホテルのレストランで偶然に不死身男と再会して食事をする場面がなんだか好きだ。読んでいる私も「また会いましたね」と言いたくなった。

しかし、本書でいちばん印象的だったのは、ある夏の夜中、主人公と祖父ががらんとした町の路上で象を見る場面。人生には自分の心に大切にしまわれる瞬間というのがあって、これもそうした大切な瞬間ひとつなのだった。遠く離れた場所に住む人や後世の人など皆で共有される、記録として残る戦争の話とは別に、心の中だけに秘められた個人的な物語というのが人々の数だけ存在して、語られない物語はそれぞれが、きっとこの夜中の象のようにとても美しいものなのでしょうね。
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by rivarisaia | 2011-06-15 06:57 | | Trackback | Comments(0)

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