魔都上海に生きた女間諜 鄭蘋如の伝説

そういえば昔、上海の女スパイ鄭蘋如(テイ・ピンルー ※本書ではテンピンルー表記)の話をしたんですけど、アン・リーの映画の公開もあってか、最近いろいろと関連書が出版されるようになりました。昔はちょっとしか書籍がなかったのに、映画の影響って大きいですね。私は肝心の映画『ラスト、コーション』はじつはあんまり好きじゃないです…。うう、すいません…。

私が読んだのはこれ。

魔都上海に生きた女間諜 鄭蘋如の伝説 1914-1940』高橋信也著
平凡社新書596

彼女が登場する本としては、例えば西木正明氏の『夢顔さんによろしく』は、フィクション要素が多く入っていると思われる演出じみた描写が耐えられないくらい嫌いだったのですが(甘ったるい感じというか、ステレオタイプのいかにもな造形が気持ち悪かった)、本書はノンフィクションとして鄭蘋如の生い立ちから処刑までを、さまざまな資料や歴史背景、遺族のなどをもとに構成しているので、すっきりまとまっていて淡々と読むことができてよかったです。

また、鄭蘋如の生涯だけではなく、映画プロデューサーである松崎啓次の上海やさまざまなテクストやフィクションにおける鄭蘋如(どのように彼女が表現されているか)といった事柄も紹介されていて、多角的な視点で考えることができるのもよい点。

ああ、なるほどと思ったのは、彼女自身(と彼女にまつわるエピソード)が魔都・上海のメタファーになっちゃってるんじゃないか、という指摘で、遺族にとっては「間違っても上海のメタファーなどではない。(中略)抗日烈士として七十年前、現実に犠牲になった鄭蘋如なのである」という1文に、いままで何を読んでもしっくりこなかった部分は、メタファーと化したイメージの中の彼女の姿しか見えてこなくて、ひとりの女性としての姿がよくわからなかったからなんだな、と感じました。

興味のある方はぜひどうぞ。こういう本を、もっと何十年も前に読みたかったな〜。上海租界時代に今よりも興味津々だった頃の私に読ませたい。
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by rivarisaia | 2011-09-09 20:17 | | Trackback | Comments(0)

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