殺し屋ケラーと切手蒐集

新しい切手ファイルを手に入れたので、切手の整理に余念がない最近の私ですが、切手蒐集といえば、殺し屋ケラーさん。

ローレンス・ブロックの「孤独な殺し屋ケラー」のシリーズは大変におもしろいのでオススメです。連作短編と長編あわせて、ぜんぶで4冊邦訳が出ています。

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このシリーズが一風変わっているのは、哀愁漂うケラーの心情と日常がメインであるという点。殺人の部分は非常にあっさりしてます。そこがポイント。

ニューヨークに住む40代の独身男性ケラーさんの仕事はヒットマン。依頼がくると、遠くの街におもむき、淡々と仕事をこなし、またニューヨークに戻ってくる。引退したいなあ、などと思ったりもするけれど、切手蒐集にお金がかかるので、考え直した(えっ!?)という、なんだかお茶目な人。

稼業は殺し屋なのに、9.11にショックを受けて具合が悪くなったり、ボランティアに参加したりする、非常に憎めないケラー。殺し請負いの元締めの女性、ドットとの会話も楽しい。

最終巻『殺し屋 最後の仕事』では、罠にはまったケラーの超絶はらはらする展開の合間に、ケラーと切手の関わりがうまーく挿入されていて、もう最高ですよ。

そもそもなぜ切手を集めているのか、という話に加え、切手用のマイ・ピンセットを胸ポケットに入れてたりすること、旅に出る際には分厚い『スコット・カタログ』を持っていくことまで判明。切手カタログ持ち歩く殺し屋…なんだこのギャップ(笑)

絶体絶命のケラーやドットの運命も気になるのに、ケラーの切手コレクションがどうなっちゃうのかもスリリング。他人の切手コレクションについて、こんなに一喜一憂することになろうとは。

それにしても、ケラーはかなりの金額を「ただの紙切れ」である切手に注ぎこんでいるようす。自由な時間の大半を費やし、アルバムに几帳面に切手をはりつけている「殺し屋」。なんて愉快な人なんだ。

そうしたコレクションを自分ひとりが鑑賞できればよい、という気持ち、わかるわ〜。わかるよ、ケラーさん!

私もねえ、切手集めてどうすんのと思うことありますよ。でもケラーはこうも言う。

世界がトチ狂い、まったく制御不能になってしまったように思えるときでも、切手は秩序ある世界を示してくれる。静穏が支配し、論理が勝る世界を。


なんだか壮大だ…。さすがケラーは深淵である。私も見習いたいものだ。

さて、今回は切手に注目しましたが、ケラーのシリーズは切手がメインというわけじゃないので、切手に興味がない人にも大変にオススメですからね! 一度読み出したら止まらないことをお約束します。


●殺し屋ケラー・シリーズ リスト
『殺し屋』 連作短編集
『殺しのリスト』 長編
『殺しのパレード』 連作短編集
『殺し屋 最後の仕事』 長編
すべて ローレンス・ブロック著、田口 俊樹訳、二見書房
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Commented by fontanka at 2011-11-23 21:05 x
ケラーシリーズは一応読んだはず→今回の作品のイントロ「切手をかっちゃったから」は、深かったですよね。

古切手を精力的に友人への手紙その他に使いまくっている私です。
Commented by rivarisaia at 2011-11-24 17:55
あそこで切手買っちゃった、というのが結構あとあとまで響きましたねー。

古切手を精力的に手紙に使いまくるのはいいことです!
もらったほうも楽しいし。私が集めてるのは海外の古切手なので、使えない...ほんとうにただの安い紙切れだわ...。
by rivarisaia | 2011-11-22 14:52 | | Trackback | Comments(2)

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