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見たもの読んだものについての電子雑記帳


by 春巻まやや
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The Gods of Gotham(ゴッサムの神々)

ここ最近読んだ長編小説で、ダントツおもしろかった本。

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The Gods of Gotham』Lindsay Faye著、Amy Einhorn Books/Putnam

1845年、ニューヨーク。それはニューヨーク市警が設立された年、そして、ジャガイモ飢饉がアイルランドを襲った年。

酒場で働いていたティモシー・ワイルドは、大火事に遭い、一夜にして家も金も失ってしまった。そんなティモシーは兄から設立されたばかりの警察(NYPD)で働くようにすすめられる。見回り警官となったティモシーは、ある晩、血まみれの少女に遭遇する…


読書中、私は1845年の混沌としたニューヨークに行ってました。マンハッタンを襲う猛火の中をくぐり抜けたし、悪臭漂うスラム街を駆けまわった。いやあ楽しかったな!

謎の殺人事件を担当するハメになる主人公。そういう意味では本書はミステリですが、事件の展開はうすうす察しがついちゃうかもしれない(が、おもしろい)。そのうえ実在の人物や出来事が織り混ざっているので、歴史小説としても読み応え抜群です。

街だけではなく、出てくる登場人物がみんな魅力的。主人公はナイーブすぎる面があるので、途中イラッとしたのも事実ですが、ラスト付近の成長っぷりはどうよ。主人公の兄も破天荒で大好きだ。

当時の政治的な背景も興味深いんですよね。そもそもアメリカはプロテスタント国家だったので、アイルランド移民=カトリック教徒の急激な増加は、パワーバランスに大きく作用するのだった。

アイルランド移民は「野良犬やネズミとノミを分かち合っている」という貧しい状況にあるんですけどね。それ以上に虐げられてたよね…カトリックだから…。なんといっても「papist(カトリック野郎というニュアンス)」呼ばわりだしな!

本書はちょっと英語が読みにくいかもしれません。見慣れない単語だけでなく、当時のちんぴら用語「Flash」が曲者。文脈で察しも付くし、読んでるうちに馴れるけど、巻頭の Flash 用語集も駆使しました。

映画『ギャング・オブ・ニューヨーク』を思い出す人もいるかもしれませんね。あの舞台となったスラム街ファイブ・ポインツもがんがん出てきます。映画は1862年がメインだったので、小説よりも後の出来事ということになりますね。

ちょうオススメの1冊なので、これから読む人向けにオマケをつけようと思ったんだけど、時間がないので次回に続く!
by rivarisaia | 2012-05-16 23:04 | | Trackback | Comments(0)