Mr. Penumbra's 24-Hour Bookstore(ペナンブラ氏の24時間書店)

個人的にかなりツボ。出だしからずっと含み笑いが止まりませんでした。なんだこの本は!

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Mr. Penumbra's 24-Hour Bookstore』 Robin Sloan著、Farrar, Straus and Giroux刊

サンフランシスコに住む元デザイナーの主人公 Clay は失職中。ある日、彼はヘンテコな古書店に求人募集の張り紙がしてあるのを目にする。

24時間営業のその書店で、夜のシフトに入ることになった主人公。そこではふつうの本も売っているのだが、奥にある天井までの本棚には決して中を見てはならない謎の古書がズラリと並んでおり、時折怪しげな人物たちがそれらの本を「借り」にやってきて…


怪しい書店のバイトが謎が謎を呼ぶ冒険に発展するのですが、紙とコンピュータ、電子書籍に稀覯書、3Dモデリングと糊とカッターを駆使したモノづくり、海賊版にフリーソフト、データ・ビジュアライゼーションに Ruby、活版印刷からグーグルによる本のスキャン、暗号解読、怪しい秘密結社、伝説の活字に謎のフォント会社、巨大な博物館のアーカイブに地下の図書室…と、楽しすぎるキーワード満載の1冊。

なにせ、アルドゥス・マヌティウスも出てくるからね!

このあたりのキーワードがグッとこないと、ノリノリで読めないかもしれないけど、「本」が好きな人ならけっこう楽しめると思う。アナログも好きだし、ハイテクも好き、という人にもおすすめ。書体好きの人も楽しめるはず。

まずもって、主人公のクレイが大変に愉快である。なにせしょっぱなから、求人広告をスキャンしつつ、ついついあちこちネット見ちゃったり、本ダウンロードしてみたり…他人とは思えない。クレイとは仲良くなれる気がする。私、お友だちになりたいです。

クレイが使ってる Kindle は機種が古くてデザインがダサいのだが、『2001年宇宙の旅』のガジェットに似てるよね、とクレイは言うのである。 「so uncool it's cool again」(笑)
しかし24時間書店のコンピュータはもっとすごい。いまだにMac Plusなのである。

物語でかなり重要な役割を果たすもののひとつが「フォント/活字」。すべてのMacにプレインストールされているという超有名書体「Gerritszoon」というのが登場。Kindleでもデフォルトのフォントってことになってるんだけど、どんな書体なんだろ。

この書体は、アルドゥス・マヌティウスのもとで働いていたというGriffo Gerritszoon が作成したという設定である(笑)。で、その書体を現在販売しているのが FLC Type Foundry。面白すぎる。

アルドゥス・マヌティウスは実在の人物で、ルネサンスの時代にヴェネツィアで印刷出版を手がけた偉大な人。詳しいことはこの辺を読んでもらうとして、おおざっぱな話をすると、アルドゥスは小型本=文庫を出版、この時にイタリック体を生み出し、非常に美しい組版をしたのだ。アルドゥスさんの右腕となった実在の活字彫刻師が、金細工師の息子フランチェスコ・グリフォ。

だから、Gerritszoon のファーストネームがグリフォなんだなー。

ちなみに、Fontshop.comで Gerritszoon というフォントを検索してしまった私である(当然、実在しなかったけど、他にも検索した人いるだろー)。あと、フォントメーカー FLC も実在しません。ITC Type Foundry という有名な会社はあるけど。

ちなみに実際の Kindleの書体は、おそらく本文は Linotype の Caeciliaだと思う。

本書は「世界は、昔の知識と新しい知識が入りまじって構成されている」「世の中には、埋もれてしまった謎もたくさんある」ということをひしひし感じさせてくれて、読み終わったあとも、とってもわくわくする気分が持続しました。楽しい!
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by rivarisaia | 2012-10-18 20:36 | | Trackback | Comments(0)

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