The Burgess Boys(バージェス家の出来事)

オリーヴ・キタリッジの生活』のエリザベス・ストラウトの新刊。『オリーヴ・キタリッジ』は連作短編集で一篇、一篇を読んでいくうちにオリーヴ・キタリッジの人物像がみえてくるという作品でした。今回は長編作品ですが、人物の多面的な描写が相変わらずうまい!

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The Burgess Boys』Elizabeth Strout著、Random House

ジムとボブのバージェス兄弟は故郷のメイン州からNYに移り住んでいた。ジムはやり手の企業弁護士として成功しており、弟のボブはそんな兄をいつも誇りに思っていた。

ある日、故郷に残っている妹のスーザンから、息子のザックが事件を起こしたと連絡がきて、兄弟は故郷に戻ることになるが…


ボブは4才の頃に、父親を亡くすのですが、その父親が死んだ事故の責任は自分にあるのではないかとトラウマを抱えています。父の死は、ボブだけでなくバージェス兄弟(ボブの双子の妹スーザン含む)に暗い影を落としています。

スーザンの息子のザックがほんの出来心で起こした事件は冗談では済まされないもので、ソマリアからの移民に対するヘイトクラムとして大きく波紋が広がります。同時にそれは、周囲の大人たちの差別意識や無理解、ときに悪気のない心ない発言を誘因することになるのでした。

読み進めるうちに、それぞれの登場人物の意外な一面がふっと現れてきて、最初の印象がどんどん変わってきます。ここがすごくおもしろい。ボブがうらやむ、よくできた兄ジムだって誰にも言えない悩みを抱えているし、スマートなジムをみんなが高く評価しているわけではないのだった。

正直、共感できるような好ましい登場人物はまるでいないんですが(脇役のひとりをのぞく)、結局のところ、わたしたちは他人のことを100%理解できやしないし、相手の内面をすべて知ることもできない。同じ家族やごく近しい人の間であってもそうなのだから、言葉や文化、宗教、価値観、住む環境がまったく違う人たちが理解しあうのってなかなか難しい、という、当たり前だけど忘れがちなことを読んで実感するという1冊です。
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by rivarisaia | 2013-12-04 23:58 | | Trackback | Comments(0)

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