The Orphan Master's Son(邦題:半島の密使)

北朝鮮を舞台にした小説は読む気がしない、という好みの問題でながらく避けていた2013年ピュリッツァー賞受賞作品。それを読むことにしたきっかけは、自分でもバカバカしい理由なのだが、毎回どこかのサイトやら書店やらで表紙のトラの絵を目撃するたびに「あれ? この本なんだっけ? おもしろいの?」→「ああ、例の北朝鮮のやつか…」ともうろくババアのような状態を繰り返してたから!!

いいかげんタイトルと概要覚えろ、自分! っていうか、ここまできたらもう読んだらいいんじゃない?

で、読んだ。そしたら予想外にすごい本だったのだ。

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The Orphan Master's Son』Adam Johnson著、Random House

本書は、

Part 1: The Biography of Jun Do
Part 2: Th Confessions of Commander Ga


という二部構成である。そして時折、突然に「国民の諸君!」というプロパガンダ放送らしき章が挿入されている。

主人公は孤児院長の息子(Orphan master's son)であるPak Jun Do。美人歌手だったという母親を平壌に奪われ、残された父は孤児を集めた労働キャンプを指揮しており、Jun Doは孤児らとトンネルを掘削しているときに、日本人拉致の工作員としてスカウトされる。

そこでさらなる功績を認められ、英語を学び、スパイとして漁船に乗り込み、大活躍のJun Doだが…


というのが第1部。正直、第1部にはそんなに心ひかれず、やっぱり北朝鮮、興味ないわ~とわたしはやや投げやり気味に読んでいたのだが、いきなり司令官Ga (いったい誰!?)の尋問記録になる第2部で、最初なにがどうなっているのか混乱をきたしたものの、だんだん謎が解けてくるあたりで俄然おもしろくなり、ラストでひっくり返った。こ、これは…マジックリアリズム炸裂のおそるべき小説だった…。

なにせ本書のいうことには、

For us, the story is more important than the person. If a man and his story are in conflict, it is the man who must change.


ということで、重要なのは人より物語。そこに矛盾が生じるなら変わるべきは人のほう。したがって、ついには現実とフィクションは融合し、挙げ句のはてにフィクションが現実をはるか超越してまさかのアメコミ的展開が待ち受けているという怒濤のラスト。えっと、キーワードは映画『カサブランカ』です。

なに言ってるのかわからないとおもいますが、気になる人は邦訳も文庫で出ておりますので、ぜひどうぞ。

『半島の密使』(上下)アダム・ジョンソン著、佐藤耕士・蓮池薫訳、新潮文庫
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by rivarisaia | 2013-12-06 23:54 | | Trackback | Comments(0)

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