American Sniper(アメリカン・スナイパー)

アメリカン・スナイパー』の原作である、クリス・カイルの自伝の感想。私は原書で読んだのですが、邦訳も出ています。原書房から単行本で出たときのタイトルは『ネイビー・シールズ最強の狙撃手』でしたが、映画にあわせて『アメリカン・スナイパー』と改題されてハヤカワから文庫になりました。

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American Sniper: The Autobiography of the Most Lethal Sniper in U.S. Military History』Chris Kyle、Scott McEwen、Jim DeFelice著、HarperCollins刊

内容に賛同するかどうかはおいといて、読んでよかった。同じくシールズのマーカス・ラトレルの『Lone Survivor』よりも読みやすかったです(訴えていることは似てるんだけども)。

ここ最近、イラク戦争をテーマにした小説を読む機会も増えていて、そうした小説の場合、たいてい主人公の兵士は人を殺すことに葛藤を抱えていたり、戦争に不条理さや虚しさを感じていたり、戦いたくないと思っていたりするわけですが、クリス・カイルにしてもマーカス・ラトレルにしても、フィクションとは正反対な主張をするのが興味深いところです。

クリス・カイルはハッキリと「I missed the excitement and the thrill. I loved killing bad guys」と言えてしまう。自分はSEALの一員であり、戦争のために訓練された人間なので、戦いたいし、敵を殺すのが大好きだと書いている。自分に子どもが生まれても、軍隊のほうが重要だし、戦争に行きたくて仕方ない。

戦争の目的は「make the other dumb bastard die. But we also want to fight」とずいぶん率直なんだけども、軍人が戦いたいのは、アスリートが大きな試合に出たいと思うのと同じで、さらに愛国心とも密接に関係している、とクリスは言うわけですよ。

彼にとっての優先順位は、神、国、家族。妻のタヤは「神、家族、国じゃないの…?」と不満なんですが、妻の苦労は理解していても、国とSEALを重視してしまうクリスなのでした。でも彼は真面目な人ではあるんですよね、むしろなぜにこんなに生真面目なのか……。

戦争に行きたい、敵を殺したい、という文章は繰り返し出てきます。戦争における自分の役割を明確に認識していた、というクリスが後悔していることは、救えなかった仲間たちのこと。敵を殺すことについてはあれこれ考えをめぐらしたことなどない。なぜなら罪を裁くのは神だから。

しかしそのいっぽうで「Everyone I shot was evil. I had good cause on every shot. They all deserved to die.」という言い訳を(神様に対して)しちゃうところが、彼の弱さの気がします。でも本人は気づいてないと思う。

敵は、常に「bad guys」で、「savage(野蛮人)」で、「evil(悪)」で、人格はない。むしろそう思わなければ精神のバランスが取れなかったのではないか。クリス自身は白黒はっきりさせたい性格なのだそうですが、そうじゃないとシールズでやってけないのかもな……とも思ったりした私でした。


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Commented by 大澤遼 at 2015-03-25 21:55 x
まあ、確かに、"Every enemy is a Orc."と考えないと、狂っちゃいますよね。
Commented by rivarisaia at 2015-03-27 23:31
マーカス・ラトレルも似たような調子だったんですが、どこまで本気でそう思ってるのかな…というか、自分にそう言い聞かせてるようにも見えちゃうんですよねえ。本人はそのつもりじゃないかもしれないけど。
by rivarisaia | 2015-03-24 23:50 | | Trackback | Comments(2)

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