Thank You for Your Service(帰還兵はなぜ自殺するのか)

『アメリカン・スナイパー』に関しては、映画原作あわせて、もやもやしたものをずーっと抱えっぱなしなんですが、映画(フィクション)と原作(現実)は関係ない、と割り切れないものがあるからなんですよねえ。うむー。

私には、イラクに行ってた友人・知人が数名いる。

私と彼らの間では、イラクの(あるいは戦争の)話はタブーのようになっていて、唯一、D君とは「今度イラクに行くことになったんだー」「ええ!?」「まあ、たぶん大丈夫だよ」「そう、気をつけてね」というやりとりがあった。ずいぶん前に。

しょっちゅう顔をあわせてるような付き合いであれば、また違うのかもしれないけど、とてもじゃないけど気軽にイラクの話なんて出せないし、向こうだって何か聞かれても当たり障りのないことしか言えないだろう。

幸いなことに、みんな無事に帰ってきたけど、手放しでよかったねと言えるのかどうかすらもよくわからない。見えないところで苦しんでいるかもしれないからだ。『アメリカン・スナイパー』では原作でも映画でも、戦争は主人公の精神面に大きく影響を及ぼしたわけだけれども、そうした戦争の影響、特にPTSDに関して扱った本がこちらです。

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Thank You for Your Service』David Finkel著、Sarah Crichton Books

アフガニスタンとイラクに派遣された兵士約200万人のうち、50万人が精神的なストレス障害に悩まされており、また、自殺者の数は年々増加している。どうしてそうなってしまうのか。戦争に行く前はとてもいい人だったはずの夫が、帰還後は妻に暴力をふるうようになり、自殺を試み、家族は疲弊していく。戦場から平穏な世界に戻ってきたはずなのに、どうしても日常に適応できない。軍もこうした状況を放置しているわけではなく、何とか対策を立てようとしているんだけれども、うまくいかず、出口が見えない。

戦争に対する自分の意見は極力排除するよう努力した、と著者がインタビューで述べているように(アメリカのアマゾンのページにQ&Aがあります)、思想的なことは一切書かれていなくて、帰還兵とその家族、医療関係者などへの綿密な取材から得た事実だけがそこにあり、戦争の代償であるそれらはとても重い。読み終わった後に、しみじみと表紙を見て、このタイトルが胸に突き刺さってくるような気持ちになりました。

こちらの本ですが、『帰還兵はなぜ自殺するのか』(デイヴィッド・フィンケル著、古屋美登里訳)というタイトルで亜紀書房から邦訳が出ましたので、ぜひどうぞ。

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Commented by 大澤遼 at 2015-03-28 01:25 x
しかし、皮肉のきいた原題ですね。(;_;)

四人に一人が発症って、米国が無人機の開発に邁進するのも分かる気がしてしまうのが、怖いです。(+無人機でも発症しないという保証はないですけどね。映像で見ている訳だから…)
Commented by fontanka at 2015-03-28 12:06 x
数年前にヨーロッパに行った時、TVでアメリカのニュースをみていたら、画面の下の帯に。
戦死者 ○○州。××・・・というテロップが流れていて、
そうか、世界中にいるアメリカ人に、知らせているんだ。。。と思いました。
Commented by めいぷる at 2015-03-28 15:20 x
今、翻訳本を読んでいる最中です。
本人も家族も崩壊していって、凄い緊張感の中で暮らしていて。なんともやりきれない悲しい気持ちです。
いつか平穏な日々が訪れますようにとありきたりな言葉しか言えません。

でも、読んでよかったです(まだ途中だけど)。
Commented by rivarisaia at 2015-04-05 14:38
>大澤さん
そう、原題がアイロニーに満ちていると思ったんですけども、本書を読んでから原題に立ち返ると、これ皮肉ではなくて心からそう言っているように取れるんですよね、そこが辛い。。。無人機でも結局は人間が関わるから、根本的な問題は解決しなそうですよね。。
Commented by rivarisaia at 2015-04-05 14:41
>fontankaさん
家族が戦地行ってる人たちは気が気じゃないですよね。いつまでたっても中東方面はキナ臭い感じがおさまらないし、どこまで続くのかしらと思うと憂鬱。
Commented by rivarisaia at 2015-04-05 14:46
>めいぷるさん
せっかく無事に帰国できても、これほどまでに日常に適応できなくなっちゃう人もいるのか…というのが、あまりに辛すぎますよね。本人も苦しいけど、家族も大変で、私もどうか平穏な日が来ますように、としか言えないです。。。。
Commented by 大澤遼 at 2015-04-05 16:33 x
クリント・イーストウッド監督の「アメリカン・スナイパー」も監督自身は本気でラストのメモリアル・イベントの本物の映像を挿入していますよね。だから、左派から反発を買うわけですが…、僕はあそこにこそ、健全なはずの"Patriotism"(祖国愛)の真の、そして巨大な闇を見ました。(;_;) >「本書を読んでから原題に立ち返ると、これ皮肉ではなくて心からそう言っているように取れるんですよね、そこが辛い。。。」
Commented by rivarisaia at 2015-04-11 01:01
そうそうあの本物映像は敬意を込めて入れてますよね。そのせいでPatriotismの巨大な闇が浮かびあがっちゃうんだけど。『アメリカン・スナイパー』のクリス・カイルの奥さんも参加してる、『Lone Survivor』の著者マーカス・ラトレルの「Patriot Tour」の映像などをみると、うむむむ…と何ともいえない気持ちになってしまいますよ。
Commented by 大澤遼 at 2015-04-11 21:29 x
はい。クリント・イーストウッドはそのあたりを意識していたのでしょうか? 外国人の僕らだから気づく…、ということでもないような気がするのですが。映画を観る限りという注釈はつきますが、クリス・カイルは純粋だっただけに、悲劇性もつよいですよね>「そのせいでPatriotismの巨大な闇が浮かびあがっちゃうんだけど」
by rivarisaia | 2015-03-27 23:27 | | Trackback | Comments(9)

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