Astray: エマ・ドナヒューの短編集

ちょうど『ルーム』公開つながりで、エマ・ドナヒューの短編集を紹介。これ、感想書いたつもりでいたけど、気のせいだったみたい。読んだり観たりしたらすぐ書くようにしたい……(これ言うの何度目)。

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Astray』Emma Donoghue著、Little, Brown and Company刊

タイトルの「astray」は、「道に迷った」という意味で、本作は「Departures」「In Transit」「Arrivals and Aftermaths」の3つのパートに分かれており、移民、逃亡者、放浪者、弁護士や彫刻家などなど、様々なさまよえる人々が主人公の短編が14話収録されています。

どの短編も、現実に起きた出来事が元になっていて、ひとつひとつの物語の後に、実際の出来事について紹介するページがある。それは新聞に掲載された小さな記事だったり、どこかに保管されていた記録だったり、断片的な情報しか残っていないけれど、彼らは確実に存在していた。そんな人々の、もしかしたらこんなだったかもしれない物語。

短編集の常として、心に残る話とあまりピンとこなかった話が混在してはいるものの、特に印象深かったものを厳選すると、私の場合は以下の6話。

「Last Supper at Brown’s」
元になったのは1864年にテキサス州で起きた事件。主人を殺害して、その妻と逃亡した奴隷の話。

「Counting the days」
1849年、カナダ。ある移民の夫婦の話。夫が先に移住して、後から妻がやってくるんだけれども……。これはとても切ない。

「Snow-blind」
ゴールドラッシュの時代の、二人の男の友情と別れ。

「The Gift」
以前『Orphan Train(孤児列車)』という本を紹介したけれど、これはその孤児列車がらみの話で、養子縁組団体を介して交わされた、産みの母親と養父の手紙が元になっています。

『Vanities』
1839年ルイジアナ州のプランテーション。従姉妹の死の謎を探る少女の話。

『The Hunt』
アメリカ独立戦争さなかの少年兵の話。1776年末、ニュージャージーやスタテンアイランドにおいて、英国とドイツ軍によって組織的なレイプが行われていたというのを知らなかったので、本書でいちばん衝撃的だった。参考文献としてあげられていた『Rape and Sexual Power in Early America』(Sharon Block著)を読んでみたい。

そのほか、亡くなった時に女性だったことが判明したMurray Hallの話(「Daddy's Girl」*実際にはHallの娘が主人公)や、男装の女性 Mollie Sanger の話(「The Long Way Home」)も良かった。

著者は、実在の人々のその後を調査していたりもするので、事実紹介ページは後日談のようでもあった。フィクションとリアルが交差して、不思議な読後感を味わえる短編集でした。


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by rivarisaia | 2016-04-18 22:39 | | Trackback | Comments(0)

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