Lilac Girls

女性を主人公にした第二次世界大戦の物語でベストセラー入りしている、と聞くとうっすらと警戒心を抱いてしまうようになったのは、昨年読んだKristin Hannahの『The Nightingale』に納得がいかなかったからで、あれはページターナーだったけれども、たくさん盛り込みすぎてて、読後に残るものもなく、なぜあんなに評価が高かったのかほんと謎な1冊でした(私は感想を書いてないけれども、渡辺ゆかりさんのレビューとほぼ同意見なのでそちらをお読みください)。

さて、そして今年。女性を主人公にした第二次世界大戦の物語で、ベストセラー入りしていた本がこちらです。同じように、ページターナーで、メロドラマ的な要素も予定調和的な展開もあるのに、この本はずっしりと心に刻まれた。なんでだろう?

b0087556_21432443.png
Lilac Girls』Martha Hall Kelly著、Ballantine Books
1939年9月、ドイツ軍がポーランドに侵攻。
その時から1959年までの20年間を、ニューヨークのフランス大使館で働く社交界の女性 Caroline、ポーランドの女学生 Kasia、ドイツの女医 Hertaという3人の女性の視点で描く、実話をもとにした物語です。

3人の主人公のうち、アメリカ人の Caroline Ferridayと、ドイツ人の Herta Oberhauserは実在の人物、Kasia についてはモデルがいるけれど、フィクションです。

ニューヨークにいる Carolineの章は、彼女の勤務先がフランス大使館ということもあって、刻々とヨーロッパの緊迫した状況が伝わってくるものの、海を隔てた米国にいるわけですし、さらに著者が創造した Paulという人物とのロマンス要素がかなり入ってくるので、わりとのんびり構えて読めていたのですが、ポーランドの Kasiaとドイツ人のHertaの章が序盤から過酷さを増して、どんどん壮絶なことになってきます。

おかげで、Carolineと Paulとのロマンス、最初はけっこう鬱陶しかったというのに、これくらいないとやっていけないよ……という気分に!

以下、少し内容にふれますが、私、内容を知らずに読んだのですけど、本書は、ラーフェンスブリュック強制収容所の話なのでした。

ラーフェンスブリュック強制収容所は、主に女性が収容されており、カープ・ゲプハルトによる人体実験が行われていた場所です。主人公の一人であるヘルタ・オーバーホイザーは、人体実験の助手を行っていた医師でした。

たった一人の女性として男性ばかりの勤務地にやってきた当初は、確かに医師としての倫理観があったはずのヘルタの感覚が麻痺していく様がとてもつらい。さらに、Kasiaとその周囲の人々の身の上に次々と起こる出来事はあまりにひどすぎて絶句するしかない。

戦後、世界はナチスのユダヤ人に対する仕打ちに驚愕し、そのインパクトがあまりに強すぎたせいで(そしてそのほかの要因もあって)、「ウサギ」と呼ばれていたラーフェンスブリュックのポーランド人に対してはさほど注意が払われなかったのでした。人体実験の後遺症に苦しんでいるのに、忘れられつつあった彼女たちに世間の目を向けさせ、彼女たちのケアに奔走したのが Caroline Ferridayです。

本書の結末は出来すぎかもしれないけれども、もしかしたらありえたかもしれない、ひとつの克服のようにも感じました。

Caroline Ferridayについては、本書で初めて知り、非常に興味を持ったのでもっと詳しく調べてみたいです。ちょっとググってヒットしたDaily Mailの記事のリンクはこちら




[PR]
トラックバックURL : https://springroll.exblog.jp/tb/26038957
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by fontanka at 2016-08-01 21:57 x
最近、ナチス関係の本(アウシュビッツの図書係とか、野戦病院でヒットラーに・・・)が多いような気がしますが、トライして、ダメだ・・・(ごめんなさい。ツライので挫折)とかだったりしています。

なんで本当に最近は、娯楽(昔のミステリ)に専念しています。
年取ったせいなのかも・・・・

ちなみに、「真田丸」が秀吉パートが、「老人問題」になっていて、正視できないぞ。
でした。
Commented by rivarisaia at 2016-08-06 23:57
最近、ナチスをメインにした第二次世界大戦関係の小説も多くて、なんでだろうと不思議なんですが、もしかするとある程度時間が経ったこともあって、ひとつのジャンルとして確立しつつあるのかも。フィクションのこの手の小説にもいいかげん食傷気味になってきたので、私はこの本で打ち止めにして、しばらくお休みしようと思ってます。

楽しい小説が読みたいなー。最近の「真田丸」見てないのですが、秀吉パートがなんとそんな辛いことに!

by rivarisaia | 2016-07-22 22:13 | | Trackback | Comments(2)

見たもの読んだものについての電子雑記帳


by 春巻まやや
プロフィールを見る