女神の見えざる手
2017年 12月 11日
『女神の見えざる手(Miss Sloane)』監督:ジョン・マッデン
大手ロビー会社で大胆な戦略を武器に活躍していたエリザベス・スローンは、銃規制反対派についた自社の仕事を蹴って、「規制法案」を通すべく小さな会社に移り、元の会社(および巨大な権力)と対決する。味方も欺き、利用する彼女のやり方にはチームから反発も出るのだが、勝利を目前したとき、不正疑惑で彼女自身が聴問会にかけられることに……
観ている最中はぐいぐいとスピードで押し切られて面白かったんだけど、もう1回観たら果たしてどうかなーと思うところもなきにしもあらず。それはたぶん、「銃規制」は小道具にすぎず、あくまでこれは「ミス・スローンの話」だからで、繰り返し観ると物足りなく感じるかも。
ただ、ミス・スローンの、手段をとわず一人孤高に戦うその戦いっぷりは、彼女の行動に共感できないところがあったとしても、感嘆せずにいられないところ。
相手が最後の切り札を切ったあとで、自分の切り札を出す、とミス・スローンは言っているので、当然聴問会でもミス・スローンがぐうの音も出ないネタを出してくるだろうなというのと、途中で「Bug」の話が出たときに絶対仕掛けてる!と思ったので、最後の展開は予想通りだったんだけども、密偵を残してたところにびっくりしました。それ想像してなかったー。驚いた。
最初のほうの一見他愛もない会話で、ミス・スローンがソクラテスの話をするんですが、それがすごく気になっていて、あとでつらつらと考えたんだけど、ソクラテスといえば倫理かな?と思ったんですよ。
ミス・スローンは、個人的な感情や利益抜きにして、倫理的に銃は規制すべき、と考えていて、そこはゆるがないわけだし。
でもそのあとで、そういやソクラテスって裁判にかけられて、有名な反論(ソクラテスの弁明)をするじゃない。結果的には有罪になるんだけども。聴問会にかけられて、最後がっつりと民主主義や正義をふみにじる巨悪なシステムに反論して、ただ有罪にはなっちゃう……って、ミス・スローンのまんまじゃないですかー。
想像ですけど、ミス・スローンは、電話でソクラテスの話を聞いた時に、最終的に自分が訴えられて罪をひっかぶるところまで計算済みだったんじゃないですかね。密偵のあの人は、どこまで計画知ってたんだろ。映画には映らないふたりのやりとりとか知りたい。
本作は、銃規制についての話ではないけど、職業倫理の話ではあるなと思いました。大手ロビー会社や議員の人たちは、倫理もへったくれもないんですが、ミス・スローンはじめ弱小ロビー会社、スローンの密偵など、倫理を貫く人たちもいる。なかでも印象的だったのは、エスコート・サービスの男性。職業上知りえた秘密は絶対にバラさない。
彼に関してだけは、ミス・スローンは計算外だったかもしれないね。
by rivarisaia
| 2017-12-11 22:31
| 映画/洋画
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