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彼ら(Loro)

大好きな映画監督と大好きな俳優が大嫌いな実在の人物を描くというので、観たいような観たくないようなさんざん迷って観てみたら、すごいよかった。やっぱりソレンティーノは今回もソレンティーノ。

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彼ら(Loro)』監督:パオロ・ソレンティーノ

娼婦斡旋をしている野心家のセルジョは、ベルルスコーニ元首相に取り入ろうと画策する。そして4度目の首相の座を狙うベルルスコーニは、妻の愛情を取り戻そうとする。金と女と汚職にまみれてドロドロしたローマの政界と、やたらゴージャス極まりないけど空虚なサルデーニャの別荘。

若者セルジョのほとばしるエネルギーは、一枚も二枚も上手でしたたかな老獪ベルルスカにすべて吸い尽くされる。セルジョだけでなく、若さだけを武器に張り合おうとしてると、いろいろ奪い取られて気づいたら抜け殻みたいになっているのだった。虚飾にまみれた、魔物の棲家の政界怖い。

さて以下、内容(最初と最後の場面)に触れます。

本作の出だしは羊で始まる。ベルルスコーニの別荘の中に入ってきた羊が、エアコンの温度がどんどん下がって凍えて死ぬ。あれは一体何だったんだろうなと考えてて、途中で羊と同じようにベルルスコーニが家に入る場面があるので、ベルルスコーニ自身の運命を暗示しているのかなとも思ったのですが、でも。

映画のラストでは、ラクイラの地震で救助活動に励む名もなき人たちの姿が映し出され、崩れ落ちた教会からイエス様の像を掘り出す様子が描かれる。イエス様の像を見たときに、羊はきっとイタリアの国民を象徴しているんだなという気がした。知らず知らず状況が悪化しても動けずに死ぬかもしれない迷える羊。

タイトルの「彼ら」も、映画中盤で「彼らだって皆同じことやってるさ」と言われる政治家や、乱痴気騒ぎに明け暮れて政治家に取り入ろうとする彼らを指しているのかと考えたけれど、ラストでわかるけれども、権力争いに夢中になっている政治家たちからきれいさっぱり無視されている「国民」のことなのだ。

ずっと見てきたキラキラしたゴージャスなあれやこれやを一瞬で吹き飛ばす、まさに言葉を失うほど力強いラストシーンだった。

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by rivarisaia | 2018-11-05 20:59 | 映画/洋画 | Trackback | Comments(0)

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