ラ・ヨローナ伝説:東京国際映画祭2019
2019年 11月 05日
『ラ・ヨローナ伝説(La Llorona)』監督:ハイロ・ブスタマンテ
グアテマラの映画。かつてグアテマラでは内戦があり(終結は1996年)、多くのマヤ人が殺戮されたという史実が映画の背景となっています。
ジェノサイドを指示した罪で告発されている将軍の家では、夜な夜な女性の泣き声がすると将軍が訴え、家族はアルツハイマーの進行を疑うが、使用人は恐れをなしてひとりを除き全員辞めてしまう。そこに新たに若い女性が雇われることになるのだが……
将軍の家では、ボディガードの男性はいるものの、家族は女性ばかり。老婦人である将軍の妻、医師をしている長女とその娘、そして古株のマヤ人のメイドがいる。他の使用人たちが怖気づいて逃げ出す中、ひとり残るこのメイドは将軍家に非常に忠実なのだが、その理由はのちのち判明する。
将軍の長女の夫はどうやら行方不明であるらしく、直接的には言及されないけれど、母親やボディガードとの会話から察するに失踪には将軍が関与しているのではないかという気がした。おそらく人権を尊重する人物だったのではないか。
監督いわく、これは3部作の3つ目の作品で、3部作全体のテーマは「侮辱」だとのこと。侮辱され差別されている代表的な対象が3つあり、まず、グアテマラではマジョリティのはずなのに差別的な扱いを受けている「マヤの人たち」。それからマチズモの社会で女性的だとされて蔑まれている「ゲイの人たち」。ゲイの人たちへの差別は、女性を下に見ているという思想とつながっている。そして最後は「共産主義」で、これは政治的な意味ではなく「人権=共産主義的発想」だととらえられているから(これは日本でもそうじゃないですか? 人権が、という話をするとすぐにサヨク呼ばわりするよね)。
大量虐殺を指揮し、マヤの女性たちを虐げてきたのにまるで反省の色のない将軍に対する、ラ・ヨローナの復讐の物語。
ラ・ヨローナの伝説にも女性蔑視的なところがあり、女性だから気がふれて我が子を殺して呪われた、というオリジナルの話を、そうではなかったという形で語り直したと監督は話していました。
メモ:劇中ではスペイン語のほかに、カクチケル・マヤ語、イシル・マヤ語も話されています。
by rivarisaia
| 2019-11-05 22:28
| 映画/洋画
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