The Perfect Child
2020年 07月 08日
『The Perfect Child』
Lucinda Berry著
Thomas & Mercer
とてもページターナーだったけど、久々にとっても胸糞悪い話を読みました。いや〜な話を求めている人におすすめ。そうじゃない人や子育て中の人にはすすめない。
どんな話かというと、
医師のChristopherと看護師のHannahは幸せな夫婦。ただ子どもに恵まれないということをのぞいては。
ある日、ふたりが勤務する病院にJanieと名乗る血まみれの少女が運び込まれてくる。Janieはあまりの小ささに幼児と思われていたが6歳であることが判明、そして彼女が暮らしていたトレイラーでは惨殺された母親の死体が見つかった。
トラウマを抱えるJanieは、骨折の治療をしてくれたChristopherになつき、やがて夫妻はJanieを養女にするのだが……
と、ここまで書けば誰もが察するように、よくある邪悪な子どもの話です。映画でいうなら『悪い種子』や『危険な遊び』のような直球な展開で、『エスター』のようなひねりはないです。
邪悪な子供の話は特に読みたくなかったのに、ちらっと最初だけ見たらソーシャルワーカーに対する取り調べの章から始まり、一体どんな惨劇があったのか?というのが気になって最後まで読んじゃった。本書はソーシャルワーカーへの事情聴取の章と夫と妻がそれぞれ語り手になる章で構成されています。
感想は一言でいうなら
DISTURBING(全部大文字かつ太字)
明らかに行動がおかしいJanieにそういうことをやらせたら、当然そういう結果になるだろうよ、という読者の予想を裏切らない酷いことばかりが起こります。中でもイライラさせられるのは
夫のChristopher。
大体、こいつは医師といっても整形外科医であって、精神科医でもないのに専門家の言うことを聞かない。専門的なアプローチを必要とする子どもがそこにいるのに、専門家の助けを積極的に得ようともしない。愛情さえあればJanieは大丈夫!というナイーブな考えの持ち主で能天気で役立たずのボンクラである。現実が何も見えてない。
Janieの問題行動に悩む妻の話にはまるで耳を傾けないし、そもそも養女にするという話も妻ときちんと話し合わずに勝手に決めてんの。Janieがかなり酷い行動をしても、そのたびに「仕方ないよ、トラウマを抱えてるんだ、きっと気のせい、故意じゃない」ときたもんだ。Christopher、まるで学びがない。バカなのか?
一応注意事項として、少しだけ展開にふれておきますが
・Janieは子猫を飼います
・Hannahは途中で妊娠、息子を出産します
薄々察しがつくでしょうが、おおよそみなさんが察した通りのことが起きます。でもChristopherは、ショックだけど信じがたい、きっと何かの間違いだ、と毎度同じみの現実を見ようとしない反応。いい加減に目を覚ませ。
Hannahも妊娠してから、夫とJanieコンビによって精神がますます追い詰められていきます。Hannahのパートがかわいそうすぎて、大丈夫なのか早く逃げてー!と不安になるのがページターナーだった理由ですが、できれば周りにもっと助けを求めてほしかったなあ。とくに親友のような姉妹Allisonには何もかも打ち明けておくべきだったのに、すべてが後の祭りです。
ほんとにあんなことやこんなことがあってもなお、この夫婦が離婚してないのが不思議なくらいです。気になるのはラストでぼんくらChristopherが警察から聞かされるであろう話にどんな反応を示すかな?ということ。
ソーシャルワーカーの事情聴取の章では、こんな事態になって夫はよく妻を置いて仕事に行けるものだ、という警察からの疑問に対して、夫婦と懇意にしていたソーシャルワーカーが、Janieの医療費や学生ローンに家のローンもあって彼はもう仕事が休めないのだ、と説明してあげたり、福祉の現場の大変さを切々と訴えたりと妙に現実的な話になるのはちょっとおもしろかった。
予算と人手不足で福祉の現場がいかに逼迫しているというのが著者が訴えたかったことかもしれません。このソーシャルワーカーも行動がいまひとつ謎なんだけどね。
by rivarisaia
| 2020-07-08 20:52
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