みかんの丘
2021年 05月 04日
『みかんの丘(Mandariinid/Tangerines)』
監督:ザザ・ウルシャゼ
ジョージア西部に位置するアブハジア自治共和国が舞台。19世紀後半、多くのエストニア人がアブハジアに移住した。ジョージアとアブハジアに紛争が勃発し、エストニア人たちは祖国に戻っていったが、老人のイヴォと彼の友人のマルガスはまだアブハジアに留まっていた。イヴォは毎日マルガスのためにみかんの木箱をつくっていた。あるとき戦闘で負傷した敵対する二人の兵士を、イヴォは自宅で介抱することになる。ひとりはチェチェンの傭兵で、もうひとりはジョージアの兵士だった。
背景にあるアブハジア紛争についてはこの映画で初めて知りました。ムスリムでチェチェンの兵士アハメドと、キリスト教徒のジョージアの兵士ニカは、それぞれ相手に仲間を殺されているため、最初は敵意をむき出しにして、一触即発のムードが漂いますが、イヴォは自分の家の中で殺し合いをすることを禁じます。命を助けてもらった恩義もあるため、しぶしぶ納得するふたり。思えばアハメドは初登場の場面でも、兵士にしては礼儀正しいところがあったんだよね。年長者を敬うところは敬虔なムスリムだからなのか、もともとそういう性格なのか。
みかんの収穫が終わったら報酬を得てエストニアに帰ろうとしているマルガスもイヴォの家にしょっちゅうやってきて(というか、ご近所にはもはやこのふたりしかいない様子)、兵士たちの間に漂う緊張感もほどけていくのですが、しかし戦争とは不条理で悲しくつらいものです。国や歴史や民族といった帰属意識をいったん脇において個々の人間として相手と向き合うことができれば、無益な争いもなくなるかもしれないのにね。簡単なようでなかなか難しい。
ストーリーとは直接関係ないのですが、イヴォの家の台所の佇まい、洗面台(水道はなくて水を入れるタンクがある)、食卓のようすなども興味深かったです。怪我人たちがごはんを食べる場面。湯気の立ったスープに、お皿にもったパン、バターやチーズの小皿、ゆで卵が入った洗面器などがテーブルにありました。それからたくさんのみかん。
この映画はずっと観たかったけどなんだかんだ毎回機会を逃していて、ようやくGYAO!の無料配信で観ました。2021年5月23日まで配信しているので、未見の人はこの機会にぜひどうぞ。→ LINK
by rivarisaia
| 2021-05-04 21:37
| 映画/洋画
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