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見たもの読んだものについての電子雑記帳


by 春巻まやや
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Razorblade Tears:息子を殺された父親コンビが犯人を追い詰めるバイオレンスミステリー

前科者の黒人男性と前科者の白人男性が手を組んで、互いの息子を殺した犯人探しをするという、バイオレンスに満ちた復讐サスペンスミステリです。大変おもしろかったので、あとは本で読んでください!と言いたいところですが、出だしをもう少し詳しく説明します。

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Razorblade Tears
S.A. Cosby著、Flatiron Books

Ikeは出所してから庭師の会社を立ち上げて、まっとうに暮らしていた。だがある日、息子のIsiahが夫のDerekとともに射殺されるという事件が起こる。

Ikeは息子がゲイであることを受け入れられず、白人男性と結婚したことにとてつもない嫌悪感を抱いており、それがもとでIsiahとは疎遠になっていた。

息子の葬儀からしばらく経ったある日、彼のもとに、息子の夫Derekの父親であるBuddy Leeがやってくる。

息子のセクシュアリティを受け入れられなかったのはBuddy Leeも同じだった。おまけに結婚までしてしかも相手は黒人だ。とはいえ、貧しいトレイラー暮らしで、妻とはずいぶん昔に離婚しているBuddy Leeにとって、Derekはたったひとりの家族であり、心から愛していた息子だった。

警察はどうも捜査が行き詰まっていて、このままでは事件が迷宮入りになる、ふたりで犯人を探そう、とBuddy LeeはIkeに持ちかけるのだが、Ikeは自分の社会的立場を考えていったんはその申し出を断る。

だがしかし。

ある出来事をきっかけに、IkeはBuddy Leeとともに犯人探しをする決意をする。ふたりは、ジャーナリストだったIsiahがDerekと一緒になにかを追っていたことを掴むのだが……


元ギャングの一員でキレやすいIkeと、ホワイトトラッシュのBuddy Leeは、最初はお互いにあまり気を許してない。Buddy Leeは、俺は差別してるわけじゃないんだよと言いながらも悪気のない差別的発言を連発してIkeをイラつかせるし、IkeはIkeで衝動的な怒りを抑えきれずにいろいろやらかして、Buddy Leeを呆れさせたりもする。

しかし、なかなかこのふたり、それぞれが抱える偏見を変えようとするし、いいコンビなんですよ。そしてふたりとも、犯人探しをするということは、おそらく汚れ仕事をするということになり、引き返すことができなくなるのもわかってる。

IkeはBuddy Leeの申し出を断ったときには、『ローリング・サンダー』や『ジョン・ウィック』じゃあるまいし、と言うんだけども、事態はまさにそんな方向に。映画でいえばタランティーノとかサム・ペキンパーが得意そうなR指定のバイオレンスなやばい展開になるとだけ書いておきます。

しかしあまりに警察が無能で機能してんのかな?って状態ですけど、そんな無能な有様だから、事件の全容は警察には永遠に謎でしょうね(ある意味よかったのかな)。

Commented by 古島 at 2021-09-17 10:04 x
  ジョー・R・ランズデールのハップ&レナードシリーズを思い出します。同性愛者に対する偏見はまだまだ強いでしょう。そういえば小生(中年男)は百合物が好きなんですが、白眼視されてしまうことが多いです。面白いんだけどなあ。
  同じくランズデール先生が
「凍てついた七月」
という作品を上梓していまして。これは父と息子のつながりを熱く哀切に描いていました。凶暴な物語でしたが妙に心に残っています。
Commented by rivarisaia at 2021-09-18 00:26
ああ、ハップ&レナードとも共通点があるかもしれませんね。 ハップ&レナード、私はドラマ版を先に見てから原作を読んだのですが、ドラマはキャスティングもぴったりで、どちらもとてもよかったです。『凍てついた七月』は未読なのでこんど読んでみます。
by rivarisaia | 2021-09-08 17:34 | 書籍 | Trackback | Comments(2)