Leave the World Behind:ある日突然、世界が壊れたら
2021年 11月 06日
『Leave the World Behind』
Rumaan Alam著、Ecco
AmandaとClayの夫婦はラグジュアリーな休暇を過ごすべく、十代の息子のArchieと娘のRoseを連れてNYからロングアイランドの片隅に立つ一軒家へと向かった。
初日は買い物を済ませて家についているプールでのんびり過ごし、翌日も近くのビーチに出かけたりと、リラックスした休暇になるはずだった。しかし夜になって子供たちが寝た後、突然ドアをノックする音がする。
不審に思うと同時に恐怖も感じつつ夫婦がドアを開けると、そこには年配の黒人夫婦が立っていた。Washington夫妻と名乗る彼らはこの家のオーナーであり、NYで突然大停電が起きたためにマンハッタンから避難してきたのだというのだが……
出版前にちょっと話題になっていて、気になっていた本。出版後にもさらに話題になったはいいけど、期待値が高かった人々の評価があまりよくなくて、私は読むのを保留にしてたのですが、
え、なんで? おもしろいじゃない!!!
低評価のレビューを見ると「何も起きない」「結末がはっきりしない」「よくわからない」「あの事細かく描写している買い物リストはいったい何なのだ」という感じで、要するに「ガッカリ」というものが多いんですけど、いや、ほんの数日なのにかなりいろいろなことが起きてるじゃん。結末も曖昧な点もあるけど未来を予感させるところもあるし、あの細かい買い物リストのくだりでAmandaがどんな人間なのかがわかるじゃない?と私は思ったんだけどな。たしかに、あっさりしているところがあるのと(実際に物語は4日間くらいの出来事だし)、さまざまな謎がすっきり解決するわけでもないので、好みがわかれるのはわかる。でも星ひとつってことはないと思う。変に話題になってしまったからですかね。
AmandaとClayはそれほどリッチではない中流階級の白人で、特にAmandaが裕福な暮らしに憧れているところが見受けられます。その夫妻がゴージャスな田舎の一軒家でのんびり休暇を過ごそうとしていたら、大きな邪魔が入る。その家のオーナーだという黒人の夫婦が、夜半に突然やってくるのです。このときのAmandaは、Washington夫妻が強盗か殺人鬼じゃないかと疑い、かなりヒステリックな対応をします。この夫婦が黒人なのに自分たちよりも知的レベルも上で裕福である、というのがどうもAmandaの心にひっかかっているというか、プライドを傷つけているようなのが時折垣間みえる。かたやWashington夫妻も、本来なら自分たちの家なのに居候のような気詰まりな思いをしなくてはならないことにわだかまりがあります。しかも家族全員がそろっているAmandaたちと違って、自分たちの娘家族とは連絡が取れない状況で、心配はつのるいっぽう。
都市部で大停電が起きているのはどうやら本当らしいことは薄々わかるのですが、テレビも携帯電話もつながらない。ただロングアイランドのその家には電気はまだきている。明らかに何かおかしなことが起きているようだけれど、二組の家族には世界で何が起きているのか知る術はありません。ただその郊外の家でも、異常な現象をいくつか経験し、Amanda一家とWashington夫妻は互いに協力していこうとするのでした。
世界で何が起きているのかについては、謎のままのところと、読者に向けてある程度明かされることがある。
後半でArchieの身に起きる不可解なことがかなり恐怖なんですけど、あれはどういうことなんだろう。近隣の人の妻(Karen)にもいずれ同じことが起きるんですよね。音と関係があるのかな。ダニに噛まれたことは何か関係があるのでしょうか。
Amandaがまだまだ子供だと思っていたRoseがおそらくいちばんしっかりしている。生き残るとしたらRoseだと思います。
by rivarisaia
| 2021-11-06 20:51
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