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見たもの読んだものについての電子雑記帳


by 春巻まやや
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Interior Chinatown:小説と脚本と社会学がひとつになったようなアジア系移民のアイデンティティの物語

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Interior Chinatown
Charles Yu著、Pantheon Books

主人公のWillis Wuはごくごく平凡な一般的なアジア人。彼は毎日チャイナタウンのワンルームから階下にあるGolden Palaceというレストランに行く。そこでは『Black and White』という警察ドラマが行われていて、Willisも出演しているのだ。

ドラマの主役は白人と黒人の刑事であり、Willisの役はいつも「一般的なアジア人その1、その2」だったり「配達人」みたいな端役ばかり。そしてドラマの中で殺されてしまうと45日間は仕事ができなくなるので、収入も途絶える。

ステレオタイプな一般的アジア人からステップアップして、いつかカンフー・ガイになることを夢見るWillisなのだが、結婚して子供が生まれてからドラマの世界と現実が入り混じってしまい……

というのがざっくりしたあらすじですが、この本は一風変わっている構成になっていて説明するのが難しい。本が丸ごと(巻末の謝辞までも)映画やドラマの脚本のようなつくりになっていて、紙の本に使われている書体も脚本を意識したフォントになっています。全部で6幕(6章)あり、各章では『Black and White』の脚本と、合間にWillisの両親の話、Willis自身の話などが挿入されるので、最初のほうは一体何なんだという感じですが、怒涛の第6幕はすばらしかったです。

人種や移民について、そしてそれぞれが社会で演じることを期待される役割から脱却することが本書のテーマです。

台湾からの移民の息子であるWillisは、平凡なアジア人という役割を期待されているので、アメリカ生まれで完璧な英語を話すのに、わざと中国語訛りで話さないといけなかったりします。人種が不明に見えるアジア系のKarenと出会ったWillisは、ステレオタイプから脱したかったはずの自分が、また新たなステレオタイプにハマってしまっていることに気づき始めます。

しかし型にはまっているのは、じつはWillisだけではなく、『Black and White』に登場する白人や黒人の刑事もそう。そして理想のマイノリティ像のようなチャイナタウンの伝説の存在「Older Brother」とははたしていったい何者なのか。

第6幕には、アメリカにおける中華系移民の歴史年表もついていて、移民大国のアメリカでアジア系はどういった立場に置かれてきたのか理解が深まるはず。

シュールな物語のようでいながら、家族に中華系米国人がいる身としてはああ、わかる、わかる…と何度も思うようなリアルな話だったな……。


by rivarisaia | 2021-11-10 23:01 | 書籍 | Trackback | Comments(0)