Root Magic:60年代の南部に暮らす黒人の女の子の呪術と幽霊の物語
2021年 11月 28日
Eden Royce著、Walden Pond Press
1963年のサウスカロライナの島が舞台。11歳のJezebel(Jez)は双子の弟のJay、母親、叔父のDocと一緒に暮らしています。父親はずいぶん前に家を出て戻ってこないまま。そしてこれまで一家の中心だったおばあちゃんが亡くなり、物語はそのお葬式から始まります。
Jezの家族はガラ人(ギーチー)で独自の文化を持ち、英語のほかにガラ語を話します。
Jezの大好きだったおばあちゃんはガラの人々に伝わる「root magic」または「rootwork」といういわゆる民間呪術の担い手で、そんなのは胡散臭いと思う人たちもいるものの、島の人々は具合が悪かったり、悩みごとがあったりすると、おばあちゃんや叔父さんのつくる薬やお守りを買いに来ていました。島には病院に行けない黒人たちもいて、おばあちゃんや叔父さんはそうした人たちの助けにもなっていたのです。
そのおばあちゃん亡き今、叔父さんのDocは、先祖代々の呪術をJezとJayに引き継ごうと考えます。
いっぽうでJezのお母さんはそうした呪術とは距離を置いていました。子どもたちはちゃんとした学校教育を受けて、よい仕事についてほしいと願っているので、呪術を習うことに難色を示しますが、「呪術によって身を守る術を知るべきだし、家族に伝わる文化を継承するべきだ」というDocの説得に折れて、子どもたちが放課後に呪術を習うことを許すのでした。
呪術を教わるのは楽しいけれど、学校ではクラスの女の子たちからいじめられ、また家には白人の警官がたびたび嫌がらせにくるなど、Jezは不安な毎日を過ごしています。悪い精霊から身を守る呪術を習ったとしても、悪い警官から家族を守るにはどうしたらいいんだろう。
そんなある日、Jezは湿地で謎の「声」を耳にします。やがて次々と奇妙なことが起こり始め……
という話。これはすごく面白くてわくわくする児童書。
JezとJayのふたりは対照的なキャラクターですが、ふたりとも私は大好き。邪悪な存在に立ち向かったり、困ってる霊を助けたり、ときには大ゲンカもするけれど、基本的にはとても仲良しです。
また登場する呪術や悪い霊から身を守る方法が、いわゆる西洋のファンタジーに出てくる魔法とはちょっと異なっていて、むしろ日本のおまじないやお守りなどに通じるものがあり、身近な感じがして楽しい。
著者のあとがきによると、著者の大叔母が呪術を使う人で、いっぽう祖母はそうした呪術を好まない人だったそう。呪術に対して異なる考えを持っている家族の話を描きたかったとのこと。また、アフリカにルーツのある伝統的なガラの呪術は多くの本や映画に登場するものの、邪悪で破壊すべきものとして描かれることが多く、でも実際にはそうした呪術師はごく普通の人々だということも指摘していました。
そして、この本には美味しそうな食べ物がたくさん登場します。オクラとトマトのスープ、豆のスープ、タマネギとローストした肉の入ったクリーミーなスープ、ポークリブ、カリカリに焼いた塩漬け豚、カニやエビの煮込み、ビスケットにケーキなどなど、南部の食べ物が大好きな私としては、読んでるだけでお腹が空いちゃう本でもありました。
by rivarisaia
| 2021-11-28 23:28
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