Yellowface:文化の盗用や人種差別がテーマのアイロニーに満ちたサスペンス
2023年 07月 12日
『Yellowface』
Rebecca F. Kuang著、The Borough Press
感想書いてなかった『Babel』(←面白い)のR. F. Kuangの新作で、これは今読むべき、まさに「旬の本」だという点で、これ読まの由佳里さんやモナさんと意見が一致したのだった。ページターナーのサスペンスで(殺人が起こるわけではないけど、主人公がどうなるのかハラハラする)、夏の読書にぴったり。秋のミステリー読書でもいいけど。
June HaywardとAthena Liuは大学の友人同士で、同じ年に作家としてデビューした。Athenaは瞬く間にベストセラー作家になったが、主人公のJuneのほうは鳴かず飛ばずの状態だった。
ある日、Juneの目の前でAtenaが思いもよらない事故で突然死んでしまった。Juneは完成したばかりで未発表のAtenaの原稿を盗み、それに手を入れて自分の作品としてエージェントに送ってしまう……
白人の作家のJuneがアジア系作家の作品を盗用するというあらすじからわかるように、文化の盗用や出版界における人種差別や多様性がテーマ。
語り手がJuneなので「信用ならない語り手の小説」であり、自己弁護に走るJuneに対してイラッとすることが多いものの、ときおり彼女の言い分に納得しそうになったり、同情してしまったりするのも、著者の狙い通りなんだと思う。Juneが書き直した作品は出版されてベストセラーになる。この出版までの過程もすごい。作家や編集者が「売れる本」にするために原稿や著者のプロフィールにまで手を加えていき、予想される批判を避けるために本質的に重要な点が無視される。
Juneの本は、海外のさまざまな国に版権が売れる。でもフランスにはまだ売れてなくて、「フランスで売れる人なんていない。もしフランス人が気に入ってるっていうなら、何かすごく間違ったことをしてる」とエージェントが著者に言うくだりは、ちょっと笑ってしまった。フランスの立場よ……。
出版の経緯からして問題のあるJuneの本は、話題になれば絶対にボロが出るに決まっていて、そこがスリラー並みにハラハラする展開なのですが、当然ながらソーシャルメディアで炎上する経緯をたどることになります。おもしろいのはアジア系の作家であるAtenaも「他人の経験を盗む」という意味では決して善人ではないというところ。アジア系の作家だからといって、アジア人の代表みたいな顔していいのかという批判もされる。でも、他人の声を作品に使うというのは、作家には性質上そういう面があるので程度の問題かもしれないし、「アジア人の代表みたいな顔」というのも、読者の側が勝手に思っていることだったりするんだよね。
春巻さんと渡辺さんの書評を拝読して、「絶対読むぞ!」と思っています。でも、いつになるかな~(笑)。
というのも、最近ようやく『Where the Crawdads Sing』を読んだからでした。読みたいと思ったのは2020年だったのに、映画化されたりもしたからか、図書館では借り出し予約者がたくさんいる人気ぶりで、ずっと待っていたのでした。先日やっと図書館の棚に戻っているのを目にしたので借りてきたというわけです。3年かかりました(笑)。
『Yellowface』は、もっと早く読めますように!
というのも、最近ようやく『Where the Crawdads Sing』を読んだからでした。読みたいと思ったのは2020年だったのに、映画化されたりもしたからか、図書館では借り出し予約者がたくさんいる人気ぶりで、ずっと待っていたのでした。先日やっと図書館の棚に戻っているのを目にしたので借りてきたというわけです。3年かかりました(笑)。
『Yellowface』は、もっと早く読めますように!
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上のコメントを投稿した後、「これ読ま」の動画を拝見したら、お三方が声を揃えて「今読め!すぐ読め!」とおっしゃっていましたね。焦ってきました(笑)。
Commented
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rivarisaia at 2023-07-13 20:24
『Yellowface』はテーマ的に旬なので、今すぐ読んで!という圧をかけていますが(笑)、でも大丈夫。人それぞれタイミングというものがありますものね。まだ映画化されてないから、『Where the Crawdads Sing』よりは早く回ってくるかもしれませんよ。Sparkyさんがなるべく早く読めますように!
by rivarisaia
| 2023-07-12 11:16
| 書籍
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Comments(3)