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見たもの読んだものについての電子雑記帳


by 春巻まやや
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Small Mercies

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Small Mercies
Dennis Lehane著、Harper


1974年夏、サウス・ボストン。公立学校での差別撤廃に向けて、白人と黒人の生徒数の比率を平均化して振り分けるためのバス通学が行われようとしており、それに反発するアイルランド系白人の住民たちの声が日増しに高まり、街には緊迫した空気が張り詰めていた。

ある晩、地下鉄の駅で黒人の若者の死体が発見される。そしてその同じ日に、Mary Pat Fennessayの17歳の娘Julesが姿を消す。この二つの出来事には関係があるのか。Mary Patはひとりで必死に娘の行方を探そうとするのだが……


デニス・ルヘインの新作。Mary Patはサウス・ボストンの貧しい労働者階級出身のアイルランド系白人で、42歳で2度の離婚歴があり、めっぽうケンカに強い。差別的なところもあるし、暴力的で決して好感がもてる人物ではないんだけど、真っ直ぐ芯が一本通っているようなところがあってなんだか憎めない。怒りを原動力に猪突猛進する彼女にグイグイ引っ張られて、一気に読んでしまった。女性の主人公としては滅多に出会わないような複雑なキャラクター。もし映像化するとしたら配役はだれがいいかな?

背景には人種差別や貧困、ドラッグやマフィアの問題が蜘蛛の巣のように絡んでいて、殺された若者も行方知れずのJulesも、その蜘蛛の巣に囚われてしまった犠牲者のように思える。タイトルの意味が判明した場面で、なんともやるせない気持ちになってしまった。

by rivarisaia | 2023-10-18 15:47 | 書籍 | Trackback | Comments(0)