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見たもの読んだものについての電子雑記帳


by 春巻まやや
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Strange Sally Diamond

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Strange Sally Diamond
Liz Nugent著、Gallery/Scout Press


「普通」ではないSally Diamondは42歳。小さな村で社会から隔絶した状態で父親と二人で暮らしていた。だが、父親が病気で死ぬ前に残した言葉「死んだらゴミと一緒に捨ててくれ」という言葉を文字通りに受け取ってしまったことで、メディアや世間の注目を集めてしまう。

それをきっかけに、Sallyの生活は大きく変わる。記憶にない幼少期の出来事と向き合い、社会に出て自立した生活をしようとするのだが……


Sallyは社会に馴染めず、他者ともうまく交流ができないので会話を避けるために耳が聞こえないふりをしていて、村の人たちからも聴覚障害者で言葉が話せないと思われていたような人物。Sallyを大学に行かせて世間に適応させようとしていた母親は早くに亡くなってしまい、それ以降は精神科医の父とひっそり暮らしていました。

ところがその父親が死に、何事も言葉通りに受け取るSallyは生前の父が話していたとおりに死体をゴミに出すべく、家の焼却炉で燃やしてしまう。当然ちゃんと燃えるわけもなく、事態が発覚して大問題になるというのが物語の始まりです。

風変わりな主人公が、辛い過去を乗り越えて社会とうまくやっていくほのぼのした話かなと思っていたら、半分くらいはまあその通りかもしれないけど、予想とは全然違った。

以前読んだ2冊の本(これ読までも取り上げて2冊とも邦訳がある)を連想させる内容であり、最初は二番煎じっぽいと思ったのだが、第二の主人公的な人物が登場してから、だんだんと不穏な感じになる。

Sallyは心が純粋で応援したくなるんだけど、この第二のキャラクターはSallyとは対照的な存在であり、表面的には社会性があるように見えて内面に重大な問題を抱えている。正直言ってかなり不快な人物なのだが、本人が問題に気づいてないし、これはもうどうしたらいいのか。Sallyよりもこの人物について考え込んじゃった。救われる機会があるといいけど、今さら無理かなあ。

時々ユーモアを交えつつも、ダークで不穏な話でもあり、そこで終わるの?という唐突でオープンなエンディングのため、読了直後は納得いかない気持ちになった。でも、いつまでも話が頭から離れないから、あの終わり方はアリなのかもしれない。Sallyにはどうしても幸せになってほしいのだけど、とてもモヤモヤとする。読み終わった後に誰かと話し合うのに向いてる本だと思う。

Trigger Warningとして児童虐待やレイプなどの描写があります。

Commented by Sparky at 2023-10-23 18:46 x
Liz Nugent の小説は『Unravelling Oliver』と『Lying in Wait』の2作を読んだことがあります。『Lying in Wait』は超・嫌ミスで、主人公(?)の Lydia について「この女、怖すぎる!」と思ったのが印象に残っています。

春巻さんのこの書評を読んで、『Strange Sally Diamond』も気になってきました。
Commented by rivarisaia at 2023-10-23 22:35
Liz Nugent、私はこれが初でした。嫌ミスの作家なの、わかる気がする。予想以上にダークだったんですけど、ぜひいつかSparkyさんがこの本を読む機会があったら感想教えてくださいー。
Commented by Sparky at 2023-12-24 18:57 x
読みました! 私も第二の人物のほうが気になって「実はこの人が主人公では?」と思っています。

極端に異常な環境で育った人間の情緒や精神状態は、私には想像すらできないので、安易に「この人、おかしい。歪んでる」みたいなコメントはできませんが、う~ん、モヤモヤしますね~。彼が父親について言った「『100% 邪悪な人間』はいない」という言葉についても、考えがグルグルと頭の中を巡っています。ラストも希望がないし、むしろ(テディベアの行方とも絡んで)次の世代にも暗い影がつきまといそうな感じです。

本当に嫌~な話ですね(笑)。嫌ミスが好きな人には堪らないかもしれませんが、私は苦手なので、星は三つにしておきます(笑)。

メリークリスマス&よいお年を!
Commented by rivarisaia at 2023-12-26 20:24
さっそく読んだのですね! ほんとにこれ、ほのぼのした感じに展開するのかなと期待したんですけど、なんとも嫌な話ですよね。

第二の人物、ものすごく可哀想ではあるんだけど、また同じことが繰り返されることになるのか…という鬱々とする展開なのが救いがなさすぎてどんよりします。次の世代はせっかく明るい感じなのに、テディベアが不穏な予感をそれとなく匂わせてるし、Sallyもせっかく他人との関係を築くことができたのに、この話、このあといったいどうなっちゃうんでしょう。

最初は主人公の感じから『Eleanor Oliphant is Completely Fine』のような話を連想したので、途中で「え……」と気持ちが硬直しました。

新年早々にはパァッと明るい本が読みたいな(笑)

では、Sparkyさんもよいお年をお迎えください!
by rivarisaia | 2023-10-22 21:20 | 書籍 | Trackback | Comments(4)