Crocodile Tears Didn’t Cause the Flood:シュールで摩訶不思議な現代の寓話
2024年 05月 16日
『Crocodile Tears Didn’t Cause the Flood』Bradley Sides著、Montag Press
2月に「Electric Literature」で著者インタビュー(LINK)を読んで、Kindleだけどジャケ買いした本。読み終わった直後はピンと来なかった部分もあったんだけど、そのあと時々ふとした隙間時間に1篇、2篇と読み直したりしていたら、じわじわとくるものがあった。
マジックリアリスムのようなファンタジーのような、現代の寓話のような17篇の短編……というか、それよりも短いフラッシュフィクション集と言った方がいいかもしれない。一番最初の話「Raising Again」も1ページとちょっとしかない。屋根の上に逃れておそらく世界を飲み込んだと思われる大洪水を生き延びた少女と飼い犬(名前はGirl)が、空から落ちてくる星を拾い集めるという話で、詩的で少し淋しく、でも最後は希望の光がかすかにさしているようなそんな情景が描かれていて、子供の頃に読んだ別役実の短編集を連想したりもしました。
全体的にどの話も風変わり。たとえば少年が書いた池に棲むペットの怪物(イグアナとウシガエルのハイブリッド的な何か)を紹介する手引き書風の話(The Guide to King George)、迫り来るアポカリプスに対する選択肢形式の話(To Take, To Leave)や警察の調書風(The Browne Transcript)、モンスターにまつわるエッセイとそれに関する試験問題(Nancy R. Melson's State ELA Exam, Setion 1: The Dead-Dead Monster)といった構成の話もある。
どの話もそれぞれ独特な味わいがあって、ニンニク農場を経営している吸血鬼の一族(Dying at Allium Farm)や、サメの子供(Do You Remember?)、プテラノドンの妹(Claire & Hank)、子供の幽霊(There Goes Them Ghost Children)など、人間ではない存在も登場する。そして喪失や悲しみ、黙示録的なエッセンスも漂っている。
一篇は本当に短いので、さらっと読めてしまうけど、一気に読まずにじっくりと反芻することをおすすめします。
by rivarisaia
| 2024-05-16 22:14
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