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見たもの読んだものについての電子雑記帳


by 春巻まやや
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What the Living Do:人生辛いことばかり、それでも前を向いて生きていこうとする女性の物語

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What the Living Do』Susan E. Wadds著、Regal House Publishing

主人公は37歳のBrett Catlin。彼女は道路メンテナンスの仕事に就いていて、自動車にはねられて道路に転がっている動物の死骸の収集などをしている。バンドをやりながらスーパーマーケットで働くColeという10歳年下の彼氏がいて、結婚しようと言われているが、Brettはどうしても踏み切れないでいて、いつもはぐらかしてしまう。

Brettは昔、父親と妹を亡くしていて、その一件がトラウマになっているようなのだ。母親との関係がうまくいっていないのも、父親と妹の死が関係している。どうも「自分には幸せになる資格がない」と思っているようで、Coleのプロポーズに応えられないのもそのせいだし、人生から逃げているところがあり、真面目に考えることができない代わりにセックスに走っているかのようにみえる。

そんなBrettが子宮頸がんだと診断される。ああ、やっぱり過去のツケが回ってきた、バチが当たったんだ、と確信した彼女は、病気の治療についても真剣に考えられない。怪しげな代替治療に走ろうとする……

あらすじだけを追うと、どんよりと暗い話で、実際にテーマはかなり重く(闘病、中絶、死別、児童虐待、グルーミングなど)、人づきあいがまるでうまくいかないBrettにもどかしい気持ちにもなるんだけれど、そんな彼女を応援しながら読んだ。

最終的にBrettは過去と向き合って、将来はどうなるのかはわからないけど、彼女ならきっと大丈夫だと思えるまでに成長する。そんなBrettを支えるColeもとてもよい。あまりに出来た彼氏なので、BrettがColeを邪険に扱うたびに、「ちょっとこんなにいい人、めったに存在しないよ?」と言いたくなるくらい。そのColeだって彼なりの不安を抱えていたことが最後の方で判明した。ほかにも親友のNorahや同僚のMelなど、Brettはいい人たちに囲まれていると思う。人は自分だけが不幸だと思いがちだけど、誰もがみんなそれぞれの悩みを抱えて生きているのだ。

当初Brettが本当に心を許していたのは動物、特に飼い犬に対してだけだったんだけど、それは単に動物が相手なら会話をしなくて済むからじゃないかなあ。人とコミュニケーションを取るのが苦手な彼女は、他人のことを勝手に決めつけるところがある。路上で見つけた犬の本当の飼い主を探し出した時もそうだったし、先住民である同僚のMelに対する思い込みもそう。ちゃんと話さないと相手の事情も気持ちもわからないんだよね。同じように、自分のことも黙っていては伝わらない。また、先住民を過度にミステリアスな存在としてとらえてしまうのは、Brettだけでなく、私たちマジョリティもやりがちかもしれないと思った。気をつけよう。

by rivarisaia | 2024-06-12 21:18 | 書籍 | Trackback | Comments(0)