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見たもの読んだものについての電子雑記帳


by 春巻まやや
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ノベンバー:ダークで幻想的で奇妙なエストニア映画

11月なので11月の映画を観よう!ということで、エストニア映画。これ大好き。

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ノベンバー(November)』監督:ライナル・サルネ


11月の万聖節(死者の日)を迎えるエストニアの貧しい寒村。貧困にあえぐ村人たちは、古い農具や廃品で作った「クラット」なる使い魔を操り、互いに物を盗みあって暮らしている。


万聖節の日には、死者が蘇り、家に戻ってきてご馳走を食べ、サウナに入る。村娘リーナは青年ハンスに恋しているが、ハンスはドイツ人の男爵の娘に夢中になっている。ハンスの心を自分に振り向かせようと、リーナは魔女に相談するが……



全編モノクロームの、ダークで幻想的で奇妙なファンタジーロマンス。


そもそも最初に登場する使い魔「クラット」もなんじゃこりゃ、という存在である(シュバンクマイエルの映画に出てきそうなキャラクターだ)。クラットはエストニアの神話に登場する魔法の生き物で、主人に宝を運んでくる存在らしい。クラットを操るには悪魔と契約して魂を吹き込まなくてはならない。それには3滴の血液が必要なのだが、映画の村人たちは血液の代わりにスグリの果汁を使って悪魔すらも騙す。


蘇った死者は生きている人間と同じような姿をしているのに、サウナに入ると巨大なニワトリに変化する。疫病が村にやってくると、村人たちはパンツを頭からかぶって横たわり、尻がふたつあるフリをして疫病を騙そうとする。理屈がよくわからないが、そういうことなのだ。


エストニアは12世紀くらいまでキリスト教が入ってこなかった異教徒の地で、13世紀以降からはドイツ騎士団が支配するようになったという歴史がある。支配層ではない庶民の暮らしは過酷で、キリスト教(カトリック)がやってきて表面的には日常生活に浸透していっても、内面的には民間信仰が根強く残っていたというのは感覚的にとても理解できる。私がエストニアを旅行した時、ドイツ時代のカトリック教会の廃墟をあちこちで目にしたことも思い出した。


魅惑的で毒のあるイメージを織り重ねるようにしてリーナとハンスのそれぞれの恋の行方を描くこの物語は、アンドルス・キヴィラフクの小説が原作だと聞いて大いに納得。キヴィラフクの『蛇の言葉を話した男』も次々と強烈なイメージを読者の脳内に放っていくかなりぶっ飛んだ物語なので、この調子で映画化してほしいとちょっと思った(たぶん無理)。



by rivarisaia | 2024-11-09 20:52 | 映画/洋画 | Trackback | Comments(0)