Stone Yard Devotional:3つの啓示と記憶の断片
2025年 03月 25日
『Stone Yard Devotional』Charlotte Wood著、Allen & Unwin
2024年ブッカー賞ショートリストの作品。
シドニーを離れ、30年ぶりに故郷に戻ってきた中年の女性が語り手。彼女は子供時代を過ごした町にほど近い、荒涼とした平原に佇む小さな修道院のゲストハウスに5日ほど滞在する。彼女はカトリックの家庭に育ったものの信者ではないのだが、なぜかその数年後、Covidの時期に修道院で暮らしている。修道院のゲストハウスは予算がなくなって閉鎖され、語り手は数名の修道女たちとともに掃除や買い物、菜園の作業といった日々の作業に従事している。
何も求められないし、何も期待されない、淡々とした営みの中で語り手は熟思黙想し、これまでの人生で遭遇したさまざまな出来事を振り返る。彼女が離婚したこと、野生動物の保護の仕事をしていたが燃え尽きてしまったことなどがわかる。
外部の世界の煩わしさから隔絶している修道院だが、静かな生活にさざ波を立てる3つの啓示的な訪れがある。
ひとつは、かつてその修道院から奉仕活動のためにタイに渡り、その地で殺害された修道女の遺体が埋葬のために返還されることになったこと。埋葬許可を得るための手続きは遅々として進まない。
そしてその遺体の移送に伴い、有名な活動家の修道女がやってくること。アグレッシブなその人物は、かつて語り手が高校時代にいじめたことのある同級生なのだった。
さらに、北部の干ばつが原因でネズミが大量に南下していること。修道院に棲みつくネズミの数は、退治しても退治してもどんどん増えていく。最初はいいんだけど、だんだんとネズミの描写がホラーめいてくる。
結局のところ、俗世との縁を切ろうとしても、そこが世界の一部である以上、避けたかった問題からは完全には逃れられない。環境問題とか考えるのもウンザリ!と多分語り手は感じていたはずなのだが、ネズミや活動家の修道女は、そうした問題が世の中に存在することを忘れさせてはくれない。
両親の墓を訪れるところから始まった物語は、語り手の日記のような回想録を読んでいるようで、最後は飼っていた犬と亡くなった母親のエピソードで終わる。シーグリッド・ヌーネスと少し近いものを感じるが、ヌーネスが意識の流れなのに対して、本書は記憶の断片的な記録という印象がある。3つの啓示的な出来事以外に、劇的な事件が起こるわけではないけれど、惹きつけられるようにして読んだ。ブッカー賞、この本でもよかったんじゃないかと思う。
ご存じのとおり図書館利用なので、ブッカー賞候補作を読むのはたいてい1年以上遅れてしまいます。
この作品は少し捉えどころがなかったのですが、「罪悪感とか赦しとかがテーマになっているのかな」と感じました。色々なエピソードを読みながら、私自身の過去にも重ね合わせて考えを巡らせるおもしろい読書体験ができました。
今は『James』を読んでいます。まだ最初の40ページしか読んでいないのですが、「これ、良さそう」と期待が膨らんでいます。去年のショートリスト(話題が古くてすみません!)の中では、『The Safekeep』と受賞作の『Orbital』が、まだしばらく借りられそうにありません。
この作品は少し捉えどころがなかったのですが、「罪悪感とか赦しとかがテーマになっているのかな」と感じました。色々なエピソードを読みながら、私自身の過去にも重ね合わせて考えを巡らせるおもしろい読書体験ができました。
今は『James』を読んでいます。まだ最初の40ページしか読んでいないのですが、「これ、良さそう」と期待が膨らんでいます。去年のショートリスト(話題が古くてすみません!)の中では、『The Safekeep』と受賞作の『Orbital』が、まだしばらく借りられそうにありません。
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これは、なんだか不思議な印象を残す小説でした。捉えどころがないというのもわかります! しかし、読みながら、主人公と一緒に熟考してしまうところもあって、いつかまた折をみて再読したい本です。
『James』よかったですよ〜(日本では邦訳も出て評判がいいみたいなので嬉しい)。私は『Orbital』は全然ピンとこなくて、『The Safekeep』の方が面白かったんですけど、またお読みになったら感想を聞かせてください!
『James』よかったですよ〜(日本では邦訳も出て評判がいいみたいなので嬉しい)。私は『Orbital』は全然ピンとこなくて、『The Safekeep』の方が面白かったんですけど、またお読みになったら感想を聞かせてください!
by rivarisaia
| 2025-03-25 23:25
| 書籍
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Comments(2)


