『Wild Dark Shore』:南極に近い小さな島を舞台にした「喪失」と「選択」の物語
2025年 08月 25日
南極大陸に近い小さな島Shearwater、そこには世界最大の種子銀行があった。Dominic Saltは管理人として3人の子供たちと共にこの島に暮らしている。かつて島には多くの研究者たちがいたが、温暖化による海面上昇で種子銀行は閉鎖を余儀なくされ、Salt一家が島に残った最後の住民だった。その一家も数週間後には島を去る。
島が激しい嵐に見舞われたある日、一家は、転覆した船から海に投げ出されて溺れていた謎の女性Rowanを救う。Rowanはある目的があって島に向かっていた……
私の中ではエコロジー小説といえばこの人となっているCharlotte McConaghyの新刊。『Migrations』も『Once There Were Wolves』も、そして本作でも「喪失」や「壊れた家族」を描いている。
またどれも背景に環境問題が織り込まれていて、何らかの滅びゆく動物が象徴的に登場する。『Migrations』はキョクアジサシ、『Once There Were Wolves』はオオカミだった。本作ではペンギンやアザラシ、海鳥が生き生きと描写されているけれど、野生動物がのびのび暮らす美しい大自然というよりも、やがては海に沈む運命にある島は、人間の手によって夥しい数の動物たちが殺されてきたという過去をもつ。永久凍土の地下金庫に眠る植物の種子も、何を残して何を破棄するのか、人間の手によって選択される運命にある。
Dominicと子供たちは、怪我をしたRowanの世話をするなかで互いに心を通わせていくが、そもそもRowanが島に来たのは何故なのか。そして、Salt一家もRowanには言えない秘密を抱えているようだ。それは一体何なのか。
静かでスローペースな展開だけれど、島に流れる不穏な空気のせいか、最後までピンと張り詰めた緊張感が漂う。それぞれが抱えている小さな謎が少しずつ明かされていくので、ページターナーだった。嵐や山火事、外界から切り離された孤島といった過酷な環境下で生き抜くこと、そして「選択を下す」ということも、この物語の大きなテーマだったのだと思う。
by rivarisaia
| 2025-08-25 20:35
| 書籍
|
Trackback
|
Comments(0)


