『ハワイの伝承と神話 附・クムリポ』
2025年 09月 01日
『ハワイの伝承と神話 附・クムリポ』
デイヴィッド・カラカウア、リリウオカラニ著
和爾桃子、山口やすみ訳 作品社
口承の歴史や神話をハワイ王国第7代国王が自ら記録した書の完訳。ちょうど今、観ている最中のハワイの歴史ドラマ『チーフ・オブ・ウォー』の主人公カイアナに関する物語もこの本に登場する。クムリポは、8代国王リリウオカラニが訳した、王家に伝わる創生神話。
『チーフ・オブ・ウォー』のある回で、カイアナとハワイ人の女性が異国人の船の上で「(これがハワイだったら)首長と平民、男と女がこうやって一緒に食事したら罰せられた」というセリフがあるんだけど、当時は男女がともに食事をするのが相当なタブーだったということも本書に出てくる。
その昔のハワイ、男女が同席して食事をするのが禁じられていた以外にも、たとえば豚肉やバナナなどなど、女性が食べてはいけない食べ物があったり、そのほかにもかなりたくさんの種類のタブー(カプ)が存在した。タブーを破ると刑罰が下されるか、神の逆鱗に触れる(いずれにしても、その代償は死)。昔のハワイ社会のタブー、暮らしていくのにかなり厳しい……。
カメハメハ大王が亡くなった後にこれらのタブーを廃止するようリホリホ(カメハメハ2世)に働きかけたのが、カメハメハ大王の妃カアフマヌと、別の妃でリホリホの母ケオプオラニだった。外国人と接するなかで、女性がそうしたタブーにますます納得がいかなくなったというのはもっともな流れだと思う。
しかしこのとき、タブーとともに神殿や神像を焼き払うなど、伝統宗教も破壊されていて、本書の著者はハワイ国王なので、伝統宗教を消滅させたのは流石にやりすぎと思っているような記述が見受けられる。「カアフマヌは裏表のある大胆不敵な野心家」で「男性同席でも好きなものを心おきなく飲み食いするために、かわりの新しい宗教をろくに知りもせずに、父祖伝来の地位と権力をもたらした在来宗教を根こそぎにする肚を決めた」と手厳しい調子で書いている。
そのほか、本書で興味深かったのは、聖書の創世記に似た話(アダムとイブ、カインとアベル、ノアの洪水など)がハワイの伝承に残っていること。大昔に聖書の話がなんらかの形でハワイまで伝わっていったのだろうけど、ちょっと気になる。また、1260年頃に日本の船が難破して5人ほど(うち2人は女性らしい)マウイに辿り着いたという話もおもしろい。日本は鎌倉時代で元寇の14年前。その頃ハワイに流れ着いた人たちは、どんな生活を送ったんだろう。
by rivarisaia
| 2025-09-01 21:22
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