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見たもの読んだものについての電子雑記帳


by 春巻まやや
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The Buffalo Hunter Hunter:史実を織り交ぜた吸血鬼のインディアンによる復讐の物語

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『The Buffalo Hunter Hunter』
Stephen Graham Jones著、S&S/Saga Press

2012年、大学でジャーナリズムを教えている42歳のEtsy Beaucarneは、ある図書館から「あなたの遠い祖先の日記が建設現場で発見された」という連絡を受ける。大学での終身雇用資格を手に入れたいEtsyは、この日記がその助けになるかもしれないと考えて、内容を読み解くことにする。

Arthur Beaucarneという名の牧師によるその日記には、恐るべき内容が記されていた。

ここから物語は、牧師の日記という体裁になる。

1912年3月、モンタナ州。牧師Arthurの元に色付きメガネをかけた奇妙なインディアンの男が現れ、告解をしたいと言う。ここはルーテル派の教会でカトリックではないが、心の重荷を解き放ちたいのであれば、もちろん話を聞くことはできると牧師が答えると、ブラックフット族に属する部族の出身で、Good Stabと名乗るそのインディンアンは、自身の物語を語り始める。

Good Stabの告白を伴う訪問は数日に渡り、その間、牧師の暮らす土地では殺人事件が発生、死体は皮を剥がされ、顔には装飾が施されていた……



Good Stabの話口調は独特な言い回しもあって、慣れるまではけっこう読みにくいのだけれど、早々から、明らかに牧師よりも若い彼が、73歳の牧師よりも6歳くらい年上らしいことが判明する。しかもPossitapi(Cat Man)なる人間だか化け物だかわからない生き物に自分は殺された、などと言い出すのだ。

本書は、スプラッターホラー小説であり、歴史小説であり、壮大な復讐譚でもあって、トリガー警告として、かなり血まみれで残虐な描写が多い。映像化されたら直視できない場面が多いので、文章を読む際はあまり状況を想像しないように、脳内で再生するイメージと文章の間に曇りガラスを挟むようなつもりで読んだ。

でもね、これでもかと続く、ひとりのNachzehrer(不死の吸血鬼のような存在)の手によるゴアな描写(フィクション)よりも、比較的淡々と語られる殺戮(史実)の方が何十倍も非道で残酷に感じた。本書で語られる史実は、1870年1月に173人のブラックフット族が第二騎兵隊らに殺されたマリアス虐殺や、バッファローの乱獲だ。

Good Stabがなぜ牧師の元に現れて、これまでの経緯を語るのか、また牧師の身の回りで起こる殺人事件との関連性は何か。それらもやがて明らかになる。

牧師の日記は1912年6月2日で終わっており、そこから先は2013年のEtsyの語りのパートになるのだが、ここでもホラーでスプラッターな出来事が起こるものの、薄気味悪いのと同時にちょっと笑える。本書のレビューでは「horrific、terrifying、sad、tragic、grotesque」といった形容詞と並んで「funny」というのもけっこう見かけていて、どこが?と不思議に思いながら読んでいたけど、最後の方、想像して思わず吹き出してしまったところがあった。いや、怖いしひどいんだけど、一歩引いてみると可笑しい。

それにしてもEtsy、大奮闘である。負の遺産を自らの手で責任を持って精算するということの象徴だと思った。よく頑張ったと言いたい。

by rivarisaia | 2025-10-10 10:25 | 書籍 | Trackback | Comments(0)