阿片王 満州の夜と霧

積ん読状態だった『阿片王 満州の夜と霧』(佐野眞一 著 新潮社)を読み終わりました。
昔から時々、30年代〜40年代の魔都上海のマイブームがやってくるのですが、この本のおかげで久々に密かなブームの再来が〜。
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戦争時、阿片ビジネスから生まれる莫大な資金に支えられていた日本。そんな日本の阿片工作を仕切っていた阿片王・里見甫(はじめ)の生涯に迫るノンフィクション。上海の東和同文書院に通った里見氏は中国で新聞記者として活躍後、満州国通信社のトップに君臨、そして阿片取引に関わっていく。

満州"帝国"なんて巨額の資金がなきゃつくれませんよね、税金だって取れないのにじゃあそのお金はどこから来たかといえば、阿片取引です(また、利益は日本だけでなく中国側にも流れていた)。日本政府としては堂々と取引するわけに行かないので、里見さんがその役割を引き受けたのですが、これがもう尋常じゃないやり手。売上金で私腹を肥やすことがなく、金ばなれがいいというか、キップがいいというか、女性関係についてはどうかと思うが、人としては変な魅力がある。だからこそドンの座に君臨できたのね...。ちなみに彼が東京裁判で起訴されることはありませんでした。理由は大人事情です(裁かれることになったら、「戦勝国」側も困ることになるので...)。

彼を取り巻く女性の話も興味深い。彼の「片腕」としてビジネスにかかわっていた男装の麗人・梅村淳という人がいるのですが、男装の麗人と言えば川島芳子くらいしか知らなかったしなー。

そんなわけで、里見甫の謎めいた生涯に迫ってはいるのですが、いかんせん当時の上海や満州、そして里見さん自身も混沌とした闇の迷宮のような存在ので、当時のすべてを白黒ハッキリできるわけもなく、読み終わった後にも謎が残ってスッキリしない本ではあります。かえって謎が広がるのですが、出てくる人物が大物ばっかりだし、話のスケールも大きいので読み応えは十分。

また、事実は事実、謎は謎、憶測はあまり入らず、という姿勢はある意味いさぎよいのかも。たとえば、元首相の近衛文麿の息子、近衛文隆の生涯を書いた『夢顔さんによろしく』(西木正明 著、文藝春秋、上下巻で文庫もアリ)は小説の形式だったので、それはそれで面白いものの「どこまでがフィクションでどこまで事実なのか〜?」と読んでる最中にモヤモヤしたという記憶があります。

さて、『阿片王』の中では、ほんの2ページくらいしか出てきませんが、個人的に懐かしい名前に遭遇。それは上海の女スパイ鄭蘋如(テイ・ピンルー)。そのおかげで、近衛文隆を思い出したのでした。ピンルー嬢の話は長くなるので次回8月5日のエントリで書きます。
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Commented by 江戸川 豊 at 2006-08-05 18:10 x
こんにちわ。

私の父親は、満州中央銀行で働いてました。
旧制中学を卒業した1937年から、戦争が始まり出兵する1941年くらいまで。
戦時の話は、いくらか聞き出せたのだけど、大陸時代の話は聞かずじまいでした。

なんか、日本の夏って戦争の残像だよね。
Commented by rivarisaia at 2006-08-05 23:17
江戸川さん、こんにちは。
大陸の話は今となっては貴重なんだとつくづく実感。
私も死んだ親戚のジイちゃんにもっと聞いとくべきでした。

「日本の夏は戦争の残像」につくづく同感。
終戦も遠くなりにけり...ですが。

by rivarisaia | 2006-08-04 16:07 | | Trackback | Comments(2)

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