にせもの美術史

「美術史」が必修だった私です。今となってはかなり笑える思い出ですが、授業は厳しく、試験は超がつくほど難しく、本当に泣かされました。

美術に関して、いつもフと思うのは、本物に価値があるのは当然としても、本物そっくりの偽物に感動することがあった場合、その贋作にはどの程度の価値があるのか、という点です。そんな意味でも、かなりおもしろく、何度もくりかえし読んでいる本がこれ。

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  『にせもの美術史—メトロポリタン美術館長と贋作者たちの頭脳戦
   トマス・ホーヴィング著、 雨沢 泰訳、朝日新聞社

プライスコレクションのエントリで、いずれ改めて紹介すると言っておきながら、忘れてました。元メトロポリタン美術館長が書いた贋作の本。

本物だ!と思ったら偽物で、贋作だ!と思ったら本物の可能性が出てきて......美術の世界は大変だ。この本を読んでからというもの、変に疑り深くなってしまった。専門家ではない一鑑賞者としては、誰それが描いた(あるいはつくった)からすばらしい芸術品!ではなく、結局は自分が好きか嫌いかだよなあ、と思う。それが贋作だったとしても.......。

さて、そんなホーヴィング氏もいろいろな経験をしていて、中でも私が好きなのはドイツのゴシック彫刻の聖母子像に一目惚れするエピソード。

さっそくその彫刻を購入してうきうきしているホーヴィング氏のオフィスに、たまたまニューヨークに来ていたフランス人キュレーターがやってきて、くだんの彫刻をホメ讃えるわけですが、そのときのホーヴィング氏の反応を、以下、本から引用。

それを聞いた途端、わたしは夢からさめた。このような蠱惑的な彫刻が本物であるはずがないのだ。徹底した愛国主義者のジャン・フェレイが本物のドイツ・ゴシックを好きになるわけがない。


ひょんなことから疑惑が生まれ、ええ、そして残念なことに、聖母子像は偽物だったのでした。

もっとも驚愕したのは、3500もの土偶を贋作したメキシコのブリジッド・ララ(Brigido Lara)。自分の古典文化様式をつくりあげてしまったのでした。ひょえええ。

難点を言えば、もっと図版が欲しいところ。後学のために贋作の展覧会も観てみたいなあ。
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by rivarisaia | 2007-05-21 22:23 | | Trackback | Comments(0)

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