ダンテ・クラブ

『ダ・ヴィンチ・コード』が流行ったころ、類似本がわんさか出たり、便乗売りみたいなことが起きてましたが、そのせいで何となく避けてしまって、今ごろ読みましたよ、この本。なかなかおもしろかった。もっと早く読むんだった。

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ダンテ・クラブ』マシュー・パール著 鈴木 恵訳 新潮社

アマゾンの書評を見ると『ダ・ヴィンチ〜』に便乗して撃沈した人もいるようす。
そう、スピード感あふれる軽いノリの小説ではありません。むしろ読みにくいほうだと思う。

ダン・ブラウンは、読んでる最中は先が気になるんだけど、読後虚しくなるのは、2分冊のくせに内容が薄いから? おまけに、十二使徒の中でもいちばんのイケメン・使徒ヨハネを女だと言い放ったダン・ブラウンに対する私の恨みは大きいのである。

さて、『ダンテ・クラブ』の話でした。確かにまどろっこしい部分もあるけど、作者マシュー・パールが、ダンテや19世紀のアメリカ文学を愛していることが伝わってくるのが、好感度高し。

1865年、南北戦争直後のボストン。アメリカで初めて『神曲』を翻訳出版しようとする文学者たちの集まりが「ダンテ・クラブ」。しかし、彼らは『神曲:地獄篇』のあまりにカトリック的な内容を危惧するハーヴァード大学の妨害にあう。

そんな中、『地獄篇』を模したとしか思えない殺人事件が発生した。このままでは、自分たちが容疑者にされるばかりか、ダンテの地位まで危うくなる! かくしてダンテ・クラブは犯人捜しに奔走する.......。


ダンテ・クラブは実在の団体です。登場人物も実在の文壇の重鎮たち。『神曲』を知らなくても大丈夫。ダンテ好きのおじさんたちが、皆いい味出しつつ解説してくれます。イタリア人教師や、黒人の巡査、ハーヴァードのお堅い理事会メンバーなど、脇役もバッチリ。さらに南北戦争直後という時代設定が、私には新鮮でした。

おそらく、作者が本当に描きたかったのは19世紀半ばのアメリカなのだと思う。それを伝えるのにミステリーという形式がちょうどよかったのかも。

ピューリタンが移住した新大陸アメリカは、やっぱりプロテスタントのほうが上だったし、イタリアなど異国の文化も下に見ていた。本書では『神曲』の翻訳を妨害しようとするハーヴァード理事会には、こんな発言をさせています。

「あらゆる外国人の持ちこんでくる浮薄で不道徳な考えや、アメリカの建国理念にまるでそぐわない新しい思想といった、外部からの侵入物によって窒息し、崩壊している」


うむむ。なんか現代のアメリカでも通用しそうですね。さらに、亡命イタリア人のこの発言はもっと現代に通じるかも。

「アメリカの自由とはなんなんだ? あんたらはわれわれを体よくあんたらの工場や戦争に送りこみ、さっさと忘れ去る。われわれの文化が踏みにじられ、言葉が押しつぶされ、われわれの服があんたらのものになるのを見守っている。それから、にこやかにわれわれの書棚からわれわれの文学を盗むんだ」


文学を映画に置き換えて昨今のリメイク・ブームを嘆くことも可能ですが、それよりも米国の南米政策にも非常に通用するものが......。19世紀半ばのアメリカを通して現代アメリカを描いているのかもしれない。深読みしすぎですかね。

著者の次回作はエドガー・アラン・ポー。ポーは本書でもチラリと言及されていたので、楽しみ。翻訳版はいつ出るのでしょうか。

『神曲』もちゃんと読んでみようかな。
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Tracked from 作家 at 2008-06-29 22:45
タイトル : ダン・ブラウン
扱い方がうまいと思いました。何か新しいことを教えてもらえるのかと思って読んだのですが..... more
by rivarisaia | 2007-07-09 19:02 | | Trackback(1) | Comments(0)

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