西洋の書物工房:モノとしての書物

久々に写本の話をしようと思ったのですが、その前に、モノという視点で書物を語る良書があるので紹介します。

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西洋の書物工房 ロゼッタ・ストーンからモロッコ革の本まで
貴田庄著 芳賀書店

パリ装飾美術書物中央校で製本や装丁を学び、ブリュッセルで高名な製本家ウラジミール・チェケルール氏に師事した貴田さんが15年かけて記した、「物」としての本の本。

羊皮紙、小口装飾、花切れ、製本....と、本を構成する各部分をひとつひとつ取り上げて、その歴史から細かく、わかりやすく解説してくれます。私が内容を語るよりも目次を見ていただければ、興味も湧くと思われるので、下のほうに目次を抜き出しておきます。

特におもしろいなと思ったのは、「羊皮紙とヴェラムにはどんな違いがあるのか」を貴田さんが探るところ。私も疑問に思っていましたが、貴田さんは『羊皮紙の性質と製法』(ロナルド・リード著、1975年)から、リードの結論を次のようにまとめています。

「羊皮紙とヴェラムには違いがあるが違いがないこと、いいかえれば、羊皮紙のなかにヴェラムが存在していることになる。」


羊皮紙に仔牛が使われるようになり、仔牛の羊皮紙を写字生が好んで使用したので、仔牛の羊皮紙をヴェラムやヴェランと呼ぶようになったのではないか、日本語の「羊皮紙」という言葉に「羊」という文字が入っているから混乱するけど、基本的には用いられた動物の種類を問わず「羊皮紙」と言っていいのではないか、と書いてあり、納得しました。

ぜひ読んでね!とおすすめしたいのですが、絶版なのかな。定価が5000円と高めなのは部数をたくさん刷ってないからでしょうが、Amazonのマーケットプレイスでは、またもや妙に高い値段になってますね。増刷されたらいいのにねえ。

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●目次一覧●

第1章 書物の考古学 
CDとロゼッタストーン/パピルスから羊皮紙へ/紙の登場/『四十二行聖書』/ウィリアム・モリスの試み

第2章 西洋の紙「羊皮紙」
羊皮紙の誕生/蝋板から冊子本へ/羊皮紙作り/羊皮紙とヴェラム

第3章 本の誕生と製本術
コデックスの誕生/製本術の変遷/画家の描いた書物

第4章 ケルムスコット・プレス
理想の書物/ケルムスコット・プレスの製本装丁/羊皮紙とヴェラムの製本術/中世の花切れとケルムスコット・プレスの花切れ/ケルムスコット・プレスと日本の書物

第5章 モロッコ革を求めて
『パンタグリュエル物語』のモロッコ革/フランスの山羊革/イギリスのモロッコ革/さまざまなモロッコ革/フレンチ・モロッコ革

第6章 フランスの革装本
仮綴本の誕生/愛書家ジャン・グロリエ/謎の製本家ル・ガスコン/革装本の製本工房/ロマン主義の革装本/ブラデル式製本とマリユス=ミシェル

第7章 天金と小口装飾
天金とテンペラ画/金箔打ち/天金術/天金の歴史

第8章 花切れ
花切れとヘッドバンド/花切れの誕生と変遷/手編み花切れ

第9章 マーブル紙と見返し
マーブル紙の誕生(マーブル紙と細密画・日本のマーブル紙「墨流し」・中国のマーブル紙「流砂牋」)/半革装本とマーブル模様/見返し考
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参考文献リストも充実しています。
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Commented by makrele at 2008-07-23 02:45 x
こんにちは。
面白そうな本ですね。ドイツも製本については歴史があるのでちょっと気になります。
それでも、随分廃れてきてしまっているみたいですけれど。
もしも機会があるのなら習ってみたいなぁとぼんやり考えていた所だったので、反応しました。
そういえばHALさんのお加減は??
Commented by rivarisaia at 2008-07-23 21:07
こんにちはー。そうですよ、ドイツといえば製本は歴史がありますよね。でも廃れてきちゃっているんですね。もったいない!

じつは私も製本を日本で習おうと思っていた時期がありましたが、
教えている場所が少ないので、スケジュールが合わなかったり、
クラスがすぐにいっぱいになってしまって入れないという状況で
そのまま保留になっています。。。(池袋の西武コミュニティカレッジに有名な製本クラスがあるんですけどねー)

HALはおかげさまで元気になりました!
by rivarisaia | 2008-07-17 23:33 | | Trackback | Comments(2)

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