中世の健康全書:Tacuinum Sanitatis

以前図書館で借りた『イタリア食文化の起源と流れ(西村暢夫、文流刊)』で言及されていた書籍で興味の湧くものが2冊ほどありまして、そのうちの1冊は図版がおもしろそうな中世の写本『健康全書』こと『Tacuinum Sanitatis』でした。さっそく海外古書サイトで探してみたらビジュアル書が出てたので購入。

The Medieval Health Handbook Tacuinum Sanitatis
Luisa Cogliati Arano著 George Braziller刊

写本自体はイブン・ブトラーンがアラビア語で書いた本がラテン語に翻訳されたもの。食物を中心に健康に役立つ情報をとりまとめた内容です。アラビア医学を取り入れた中世の医食同源の健康本といえば『サレルノ養生訓』もありますね(日本語の訳解書が出ていて、個人的には「冩血の方法」がおもしろかったです)。

中世の医学に関しては、アラブの方が発達していて、ヨーロッパは遅れに遅れていた印象ですが、当時最先端のイスラム医学もシチリアあたりからヨーロッパにちゃんと伝達していたのね。
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さて、今回の書籍も写本のビジュアル書。図版が印刷されたハードケースに入っていますが、本体の表紙は草色の布張りに箔押し。

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見返しに以前の持ち主の蔵書票(Ex Libris)がついてました。猫だ、猫! 得した気分。
中ページはこんな感じです。
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「キャベツ」(左)と「酸っぱいサクランボ」(右)
キャベツは丸い形じゃないのね。別ページには「レタス」もありましたが、こちらも扇のような葉っぱでした。ちなみに、キャベツは「閉塞を取り除くが、腸によくない」、酸っぱいサクランボは「粘液過多のおなかによいが、消化が遅く、空腹時に食べてはだめ」だそうです。

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「ホウレンソウ」(左)と「テリアカ」(右)
やっぱり、毒消し万能薬ことテリアカは必ず出現する。奥の方で女性が杯に詰めている黒い物体がテリアカ。こういう杯のような壷(?)に入れて売ってたのか?
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カラー図版以外に巻末にはモノクロ図版が多数アリ。

肉は種類と部位に細かく分かれています。そのほか身近な食物以外の項目でおもしろいのは、マンドラゴラとか、夏の部屋、冬の部屋、東風、西風、北風、南風とか......。「楽器を演奏し踊りを踊る」というのもあった。

写本自体はいくつかのバージョン違いがあり、ウィーン、ローマ、パリ、リエージュ、ルーアンに現存する5種類の写本の項目対照表も付いています。項目対照表については、奈良女子大学の山辺規子さんによる日本語版対照表がオンラインで見ることが可能(コチラから)。

また図版を見たい方は、Casanatense図書館のサイトのこのページで見ることができます。
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by rivarisaia | 2008-07-20 21:30 | | Trackback | Comments(0)

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