サーカス象に水を、よりも冬のサーカス『The Circus in Winter』

BookSenseやAmazonで長いことベストセラーリストに君臨していた『Water for Elephants』の邦訳が出ましたね。この本の原書の表紙(下の写真の左)がいいので、過剰な期待をした私がいけなかった…。

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サーカス象に水を
サラ・グルーエン著 川副智子訳 ランダムハウス講談社

老人施設に暮らす93歳のジェイコブ・ヤンコフスキが回想する、移動サーカスで過ごした日々と、サーカス史上に残る大惨事のなかで起きたひとつの「殺人」事件、というのが大まかなあらすじ。現代のジェイコブと若き日のジェイコブの物語が交差して進んでいく構成。

つまらないわけではないですが、原書の表紙の怪しげな雰囲気から想像した物語ではなかったかな…というのが正直な感想。あんまりな人減らし方法「レッドライト」(走行中の汽車から不要な人を突き落とす)をはじめ、心が痛む場面はあるものの、なぜか読後感があっさりしている。

なんでだろう、と考えた結果、登場人物がみんなステレオタイプだということと、エピソードがつぎはぎな感じでトントン進んでいくからではないかと思いました。アメリカのAmazonの読者コメントで、「当時のサーカスをリサーチしてまとめたレポートを小説にした感じ」というのがあったけど、私の感想もそれに近い。まるで映画のノベライズみたいだ(ちなみに本作は映画化決定してます)。

気分がサーカスに向かってしまったのに、どうにも消化不良になってしまったので、積ん読状態だった別のサーカス小説に手をつけたら、こっちのほうが断然おもしろかった。

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The Circus in Winter』Cathy Day著 Harcourt刊

かつてNew York Timesの書評でみて、ペーパーバック版を「表紙買い」した1冊。短編集なので読みやすいです。

インディアナのLima(ライマ)と呼ばれる小さな町で冬を過ごすことにした「Great Porter Circus」。オーナーやパフォーマー、調教師、フリークス、ピエロなど、さまざまな人々にまつわる11のお話が織りなすひとつのサーカスの物語。

11の短編はどれもどこか淋しいノスタルジックな雰囲気で、表紙のイメージと中の物語がしっくり合ってる気がする。

著者の出身地であるインディアナ州ペルーは、ハーゲンベック・ウォレス・サーカスが冬を過ごしていた場所だそうで、著者の大叔父さん(great-great uncleなので正確にはひいおじいちゃんの兄弟)もサーカスの関係者だったらしい。そしてその叔父さんは象に殺されてしまったのだった。この短編集に登場するサーカスの人々の話はフィクションだけど、その叔父さんをモデルにしたエピソードもあります。

物語の舞台裏というような、「Back Lot」という章が巻末についていて、登場人物一覧だけでなく、各章トビラに入っている写真に関するエピソードや著者がその写真からどんなインスピレーションを受けたかなどが書いてある。これがまた興味深いです。

いい本だけど、たぶん翻訳版は出ないだろうな。
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by rivarisaia | 2008-09-01 23:09 | | Trackback | Comments(0)

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