気になる探偵、ファイロ・ヴァンスさん

ノーベル文学賞も発表されましたし、読書の秋ですね。年中読書で現実逃避してる私は自重すべきかもしれませんが。

本日は久々にミステリ小説のご紹介....なんですが、本よりも探偵の紹介です。とにかく昔からこの探偵が気になって気になってしょうがないんですよ。実際に身近にいたらむかつくかもしれませんが、友だちになりたいくらい。

それが、ヴァン・ダイン著作のシリーズに登場するファイロ・ヴァンスさん。

ニューヨークの東38番街にある屋上庭園付きマンション在住のヴァンスさんは、叔母さんの莫大な財産を相続したのであくせく働く必要はないらしく、じゃあ何してるかというと、自分の興味のある文献を翻訳したり、興味のある人の伝記を執筆したり、興味がなくなると中断したり......ま、要は趣味の生活を送っています。何だかうらやましい身分です。

「スポーツなんて体力の無駄な消耗にすぎない」とか言っている割には、スイスにスキーに行くし、ゴルフもやる。スポーツ万能、ハンサム、物知り、金持ち、と何拍子も揃っている人物です。ステキ!

そんなヴァンスさんは、気に障る野郎と書いてキザ男。注目すべきはその発言。

「だれがコマドリ殺したの?」というマザーグースの歌にのっとって殺人事件が起きる名作『僧正殺人事件』の出だしをみてもこんな調子。

ヴァンスに事件を教えるべく電話をしてきた検事に向かって

「ぼくはいまオムレツ・オー・フィーヌ・ゼルブを食べているさいちゅうだ。やってこないかね。それとも、ただ、ぼくの声の音楽にご執心だっただけかね」


何ですか、「声の音楽にご執心」って。

ちなみにオムレツ・オー・フィーヌ・ゼルブとはハーブ入りオムレツです。ハーブを入れればいいだけですから、誰でもつくれます。朝っぱらから食卓でヴァンスごっこが可能ですね!

さて、弓術に関係した殺人事件が起きたと知るや、友人に向かって弓術について何か知ってるかと尋ね、よく知らないと返答されると、

「きみに訊いたってしかたがないってところか」


と、さりげなく、イラッとする発言をかましつつ、追い打ちをかけるように、もの憂げに高級トルコ葉巻レジーをスッパーとふかしながら

「ぼくはオクスフォードにいた時分、少しばかり、弓をいじくったことがある。熱をあげるほど、刺激のある遊びじゃないけどね」


などとぬかします。じゃあ人に聞くなよ!と言いたい。さらに友人に、やれ図書室から弓術の本を取ってこい、ドイツ語の辞書を取ってこい、などと命令するヴァンス。自分で取りに行けばいいのに....。辞書なんてわざわざ取りに行かせておきながら、一語調べて傍らに押しやったりしてますよ。どうなのその態度。まあ、後で一応は役に立つ(?)けどさ。

とまあ、周囲の人間がかわいそうになるほど傍若無人のヴァンスですが、いつもこの調子で我が道を突き進む。ヨーロッパかぶれのアメリカ人であるがゆえ、時折フランス語やイタリア語、ラテン語を織り交ぜたりするのはもちろん、蘊蓄やらご自慢の知識をひけらかすことも忘れません。

たとえば『ドラゴン殺人事件』では、ドラゴンに関する蘊蓄を延々と8ページにもわたって披露した挙げ句、「それが今回の事件とどう関係あるのか」と人から突っ込まれると

「それが僕にもとんと見当もつかないんだよ」


と言ってのけました。これには読者の私も腰抜かした。ええ!? じゃあ今までしゃべってたことは何だったのよ、またもや自分の蘊蓄自慢か?

肝心の推理ですが、本人が大げさに興奮する割には何となくこじつけ感が漂ったり、それはアリなのか?と思えるようなトリックだったり、そんなに容疑者が死んじゃったら必然的に犯人も絞られるだろうよ、なんていう傾向もなきにしもあらず。

でも、ヴァンスのセリフを楽しむためにシリーズを読みすすんだ私が、とやかく言えたものではないですね。そのあたりは本格ミステリに詳しい方々がいろいろ書いてると思うので、検索してそちらを参考にしてください。

ちなみにファイロ・ヴァンスの声はホームズの露口茂さんで脳内変換されています。

●S・S・ヴァン・ダイン著のファイロ・ヴァンスシリーズ

ベンスン殺人事件
カナリヤ殺人事件
グリーン家殺人事件
僧正殺人事件
カブト虫殺人事件
ケンネル殺人事件
ドラゴン殺人事件
カジノ殺人事件
誘拐殺人事件
ガーデン殺人事件
グレイシー・アレン殺人事件
ウインター殺人事件

創元推理文庫から井上勇さんの訳で出版されてます。
映画化もされてるんだよね。今度探してみようかなー。
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Commented by hana at 2008-10-13 17:24 x
10年以上前にハマッて読みましたよ!ファイロ・ヴァンス・シリーズ!

普通に説明すりゃ~いいことを、ワザとひとつと言わずふたひねりするくらいに言ってみたり、異常なまでに薀蓄野郎だったりと、身近にいてもらいたくないタイプですよね。

本格推理が大好きなので、とりあえず読みましたが、春巻さんの仰るとおり、ツッコミところはいくつかある話が多かったかな?

ベタですけど、やはりエラリー・クィーンが好きです。
Commented by rivarisaia at 2008-10-14 14:35
私も大昔にハマッたんですけど、内容よりもヴァンスの性格にハマりました(笑)。先日、古本屋で『カナリア殺人事件』を目にして、いろいろ思い出したところです。

『カナリア〜』も、容疑者たちとポーカーゲームをやって犯人の目星をつける、ってスゴイ展開ですよね。私にはよくわかりませんでした…。まあプロファイリングの先駆け、と言えなくもないけど…。

内容からいくとエラリー・クィーンとかクリスティのほうがおもしろいですよね。
by rivarisaia | 2008-10-10 22:44 | | Trackback | Comments(2)

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