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見たもの読んだものについての電子雑記帳


by 春巻まやや
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悶絶アリア(男性篇):Di quella pira

世間は映画祭ですが、私はここしばらく死ぬ気で楽器を練習せねばならない事態に陥っています。グリーンカーペットなんて見てないよ(泣)。そこで自分への景気づけに超ひさびさにオペラの話。前にパルジファル鑑賞談パヴァロッティとわたくしなどという、どうしようもない話を書きましたが、先に断っておくと今回もそんな内容です。

オペラのアリアに関しては、みなさん好みはいろいろでしょうが、私には聞くたびに悶絶するアリアがいくつかあり、それらを「悶絶アリア」と呼んでいます。ガツンと行きたい日やヤル気を出したい日に聞けば、心拍数が上がり、たちどころに力がみなぎるのが悶絶アリア。

今日はその男性篇。マイ・悶絶アリア・ランキングで長年にわたる不動の1位はコレ。

「Di quella pira(見よ、恐ろしい炎を)」
〜ジュゼッペ・ヴェルディの『イル・トロヴァトーレ(Il Trovatore)』より


初めて聞いたのは、高校生のときに買ったオペラアリア集のレコードに収録されていた、フランコ・コレッリのバージョン。「この歌すごい!」と血湧き肉踊りました。

『イル・トロヴァトーレ』は物語だけをみると、火あぶり!白骨死体!ロマンス!決闘!勘違い!殺人!人違い!戦い!自殺!処刑!衝撃の真実!復讐!絶命!と、張徹あたりが映画化しててもおかしくないほどの激情ドラマ。私は大好きだよ!

だいぶはしょったあらすじですが、吟遊詩人のマンリーコと恋人のレオノーラ、そしてレオノーラに横恋慕したルーナ伯爵という三つ巴の恋愛話…と思いきや、第2幕でマンリーコのお母さんが衝撃的な発言をかます。

「私の母親は、先代の伯爵によって火あぶりの刑に処せられたんだよ。
そこで母の復讐のため、伯爵家の子どもを誘拐して火に投げ込んだのさ…というつもりが、間違えて自分の子どもを焼き殺しちゃったんだよね」(←恐ろしい間違いっぷりである)


それを聞いて「自分の子どもを殺したって言うけど…じゃあここにいる俺は誰よ? 」と当然不安になるマンリーコ。そのときはうまくはぐらかされてしまうが、そう、マンリーコこそ先代の伯爵の子ども、つまり恋敵ルーナ伯爵の実の弟なのであった。

さて、いろいろあったすえ、恋人と無事に結婚式を挙げることにしたマンリーコ。しかしそこに、母が伯爵に捕われたというしらせが。このときマンリーコが歌うのが、今回注目の「Di quella pira」です。

曲調も熱いが、歌詞も熱いよ!

「火刑台の炎をさっさと消さないと、
俺がてめえらの血で消してやるぜ!
母さん、今から俺が助けに行くぜ!
助けられなかったら一緒に死のう!」
(超意訳)


そういえば、ヴィスコンティの映画『夏の嵐』も、劇場でこの歌が歌われる場面から始まりますよね。さすがヴィスコンティ。この歌で血液が沸点に達した人々が「イタリア万歳!」と叫ぶのであった。なんかわかる気がしますよ。

そんな熱き血潮の男マンリーコは、軍勢を引き連れて伯爵と戦うが負けてしまい、母親とともに捕われの身に。彼を助けようとした恋人レオノーラも服毒自殺。ついにマンリーコまでも母親の目の前で伯爵に処刑されてしまう。
その瞬間、母親が伯爵に向かって

「なんてことを!あれはお前の実の弟だったのに!
おお、お母さん、私、ついに復讐をはたしました!!」


と狂乱&絶叫。いきなり衝撃の真実が明かされ、呆然と立ち尽くす伯爵
—完—

…なんだろ、この唐突なエンディング。殺されたマンリーコの立場は!? と突っ込みたくなるほど、よく考えると突拍子もなくわかりにくい話ですが、劇的でおもしろいし、なによりヴェルディの曲が全体的にすばらしいので無問題です。

では、悶絶アリア「Di quella pira(見よ、恐ろしい炎を)」をお聞きください。

YouTubeにはフランコ・コレッリ(Franco Corelli )版もあったのですが(検索してみてね)、今回はフランコ・ボニソッリ版の、文字通り燃えさかる炎のバージョンに大笑いしたので、そちらをはりつけておきます。日本語字幕つき。



熱いね!BRAVO!
しかし、この曲で調子づいた私は、本日の練習で激しく音を出してしまい、「そこ、音大きい!ピアニッシモですよ」と先生に二度も注意されました。ううう。
by rivarisaia | 2008-10-19 20:56 | 音楽の話 | Trackback | Comments(0)