巨匠とマルガリータ

どうしたことかロシア文学とはいまひとつ相性が合わない私。罪と罰も、カラマーゾフも、何度トライしても途中で挫折してしまう、ロシア文学は鬼門中の鬼門のわたくしが、あっという間に読了した。

ということは、相当変です、この本。

「ローリング・ストーンズ「悪魔を憐れむ歌」にインスピレーションを与え、20世紀最高のロシア語文学と評される究極の奇想小説」だそうです。

巨匠とマルガリータ』ミハイル・アファナーシエヴィチ・ブルガーコフ著
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翻訳が中田恭(郁朋社)、法木綾子(群像社)、水野忠夫(河出書房新社)、と3種類も出てます。私は郁朋社の中田恭訳版を読みましたが、河出書房新社もよさそう。

あらすじ
モスクワに突然現れた謎の男。彼の予言通り首を切断される作家協会の議長。そう、謎の男の正体は悪魔ヴォランドだったのだ。一部始終を目撃した詩人は、精神病院に送られてしまう。

悪魔ヴォランドは二本足で歩く大きな黒猫や裸の魔女といった仲間と一緒にモスクワのアパートの一室に居を構え、劇場にて黒魔術ショーを開催、モスクワ市民をパニックに陥れる。いっぽうで、精神病院の詩人の前には「巨匠」と呼ばれる男があらわれ、自分の小説や人生について語りはじめる。

そんな巨匠を助けるべく、巨匠の愛人マルガリータは、ヴォランドの力を借りて悪魔の大舞踏会へ飛び立つのであった。


書いてて、わけわかんないですが、かようにシュールで奇想天外な話です。私は、言葉を話すこともできる巨大な黒猫ベゲモートがお気に入り。茶目っ気があって、なんとも最高のキャラクターである。

作者のブルガーコフはスターリン政権下では反体制と見なされて長い間作品が発禁とされてきたけれど、じつはスターリンはブルガーコフの作品をけっこう気に入っていたらしい。そうとすれば、『巨匠とマルガリータ』のなかで、巨匠が書いたという小説が「イエスを磔刑にしてしまい、苦悩する総督ピラト」であることが興味深い。社会的にやむを得ず、自分の意に反する決定を下さねばならない「官僚の苦悩」の象徴なのかも。最後、ピラトが救われるのは、ブルガーコフなりのスターリンへの気もちだったりして(勝手な憶測ですので、実際には全然違うかもしれないけど)。

本作で、もっとも感動的なのは、燃えてしまったはずの巨匠の原稿が、悪魔ヴォランドが「原稿は燃えないのです!」と言うやいなや、灰の中からよみがえるシーン。物語は決して失われることはない! ここにブルガーコフの作家としての想いがドドーンと注入されているような気がしました。
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Commented by misza at 2008-10-27 21:33 x
ベゲモート、私も大好きです。と言いたくなりおじゃまします。
マッシュルームのピクルス片手にウォッカをあおり、ひねくれたつぶやきの洒落て可愛いことといったら。たまにでっぷりした黒猫が歩いていると、おやお仲間かなー、とつい声をかけています。

『巨匠とマルガリータ』、欧米では愛読されていますが、日本では割合にマイナーなようですね。今、ロシアご近所に住んでいますが、数年前、ふと手に取ったペンギンクラシックスで読み、ファンタジーっぷりにショックを受けました。新訳も出ているし、これからファンが増えますように。
Commented by rivarisaia at 2008-10-28 21:04
miszaさん、いらっしゃいませ!
わーい、ベゲモートのファンがここにも!
ベゲモートと悪魔のお仲間コロヴィエフの漫才みたいなコンビは最高でした。黒猫を飼うことになったら、名前はベゲモートにしたい、と夢想する今日このごろ。

日本ではたぶんまだマイナーな本書ですが、この出版不況のご時世に新訳もあわせて3つもバージョンがあるなんてある意味すごいです。そしてこんなブッ飛んだロシア文学の存在は私にとって衝撃的でした。ロシアではドラマ化もされているらしく、YouTubeでちらりと映像を見ましたが、ベゲモートらしきデカイ黒猫が立って歩いてました(笑)。

本書が皆に読み継がれていきますように。

by rivarisaia | 2008-10-27 19:15 | | Trackback | Comments(2)

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