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2008年 09月 23日 ( 1 )

サラゴサ手稿』という小説があります。18世紀後半から19世紀初頭にポーランドの貴族ヤン・ポトツキが書いたという寄書で、ポーランド版千夜一夜物語、とかデカメロンと評されている本です。

日本語版は、国書刊行会から出ていた『世界幻想文学大系19巻 サラゴサ手稿』(工藤幸雄訳/絶版)の抄訳版しかありません。
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上の絵が作者のポトツキさん。本書のあらすじはこんな感じです。

ナポレオン戦争の際、あるフランス人将校がサラゴサにて奇妙な手稿を発見した。それはスペイン人の騎士アルフォンスが記したものだった。

マドリッドに向けてシエラ・モレナ山を越えようとしていたアルフォンス。しかし、そこは絞首刑になった山賊・ゾト兄弟の幽霊が出るという噂の土地だった。廃れた宿屋で夜を明かそうとしたアルフォンスは、美しく妖しいムスリムの姉妹に出会う。姉妹とめくるめく甘美な一夜を過ごしたアルフォンスだったが、目が覚めるとそこはなぜか絞首台の下であり、かたわらにはゾト兄弟の死体が横たわっていたのだった。

さらに道を進むアルフォンスはある隠者に出会う。そこで聞いた不思議な物語は、アルフォンスの体験と似ているのだった…。

はたして謎の姉妹の正体は?これは夢なのか、現実なのか?

1章が1日、全部で66日間の物語。話の中に話が挿入されて、語り手が次々に変わる入れ子構造になっており、どういうわけだかどいつもこいつも「目が覚めると必ずそこは絞首台の下」という状況に…。

ナゾがナゾを呼ぶ展開なんですが、「世界幻想文学大系」には66日のうち14日目までしか収録されていないため、続きが気になるところでブツリと終了。
この読者生殺し状態のまま、20年以上が経過してます。

昨年読んだ、翻訳家の工藤先生の『ぼくの翻訳人生』(中公新書)にて、工藤先生が『サラゴサ手稿』を全部訳し終わってることを知る。いつ、どこから出るのだろうかと思っていたところ、今年の春先、東京創元社のメルマガで、完訳版が6月に出るというアナウンスがあった。

キターーー!きた、きた、きた、きた、ついにきたー!

と小躍りした人は私以外にもたくさんいたはず。

しかし!

6月になっても、新刊リストに入ってない。創元に問い合わせてみたところ、秋に延期予定という返事をいただきましたが、7月5日に翻訳家の工藤先生が亡くなってしまった。ううむ。その後、どうなったのでしょうか。そろそろ秋ですが、いかがでございましょうか。
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英語なら完訳版がペンギン・クラシックから出てるんだけど、656ページも英語で読むのはちょっとなあ。日本語で読みたい。工藤先生の訳で。がんばれ、創元!

本作はポーランドで映画化もされていて、リンチもブニュエルも大絶賛。ちょっと観たい。でもまずは日本語版の本を先に〜!
by rivarisaia | 2008-09-23 21:40 | | Trackback | Comments(8)

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