2017年 04月 13日 ( 1 )

The Tsar of Love and Techno

私にとって2014年のベスト本が『A Constellation of Vital Phenomena』だったのですが、同じ著者の2冊目も天才的にすばらしくて唸った。もっと早く読めばよかった。Anthony Marra(アンソニー・マラ)は新作が出たら絶対読む作家リストに入れました。

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The Tsar of Love and Techno』Anthony Marra著、Hogarth Press

短編集だけれども、すべてのストーリーが巧妙にリンクしていて、最初の話から順を追って読んでいくと、壮大なひとつの長編小説でもあることがわかる連作短編集。

意外な伏線があちこちにちりばめられていて、それを回収していく構成も見事で、むしろ連作短編集に見せた長編といったほうが的確な気もする。それと気づかないまま大きな絵の細部をひとつひとつ見ていって、読み終わると鮮やかに1枚の絵の全体が俯瞰できる感覚。

内容を知らないままのほうが、驚きが増して読む楽しさが倍増するので、ここでは詳しいあらすじには触れません。

物語の舞台は、スターリンの大粛清真っ最中のレニングラードから戦時下のチェチェン、人工的に造られた森に地雷の埋まった高原、現代のサンクトペテルブルクを経て、いつなのかわからない宇宙のどこか。

話をつなげていくのは、絵画や写真から政府に都合の悪い人物を消去する仕事を手がける修復師、スパイ容疑で捕まったバレリーナ、ミス・シベリアにロシアで十三番目の大富豪、写真花嫁、ロシア兵、チェチェンの小さな美術館の館長といったさまざまな人たちと、その息子や娘、孫。

そして、こうした登場人物だけではなく、1枚の絵や1本の映画、決して聞かれることのなかったミックス・テープといった「モノ」も物語を織り合わせる上で重要な役割を果たしています。

息を呑むような長い長いセンテンス、ハッとするような美しい文章といった、前作でもすごいと思ったアンソニー・マラの語り口にはさらに磨きがかかっていて、あはは!と思わず笑った直後に、胸に突き刺さるような悲しみが待ち受けていたりするので油断なりません。そして本作でも、希望は確かに存在しているのだった。

「ミックス・テープ」がキーワードのひとつなので、目次もミックス・テープにちなんでいて、あらすじを紹介しない代わりに、目次だけ記しておきます。

[SIDE A]
"The Leopard" レニングラード、1937年
"Granddaughters" キロフスク、1937-2013年
"The Grozny Tourist Bureau" グロズヌイ、2003年
"A Prisoner of the Caucasus" チェチェンの高地、2000年

[インターミッション]
"The Tsar of Love and Techno" サンクトペテルブルク、2010年; キロフスク、1990年代

[SIDE B]
"Wolf of White Forest" キロフスク、1999年
"Palace of the People" サンクトペテルブルク、2001年
"A Temporary Exhibition" サンクトペテルブルク、2011-2013年
"The End" 宇宙空間、年代不明

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by rivarisaia | 2017-04-13 22:30 | | Trackback | Comments(0)

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