2017年 07月 17日 ( 1 )

大航海時代の日本人奴隷

最近読んだなかでとても面白くて、おすすめの本がこちら。

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大航海時代の日本人奴隷』ルシオ・デ・ソウザ、岡 美穂子著、中央公論新社

わくわくするので、出版社の紹介文をまず読んでみて。

戦国時代の日本には奴隷とされた人々が多数存在し、ポルトガル人が海外に連れ出していた。メキシコに渡った3人の日本人奴隷を語る異端審問記録。もう一つの大航海時代史が立ち現れる。

16世紀から17世紀にかけて、奴隷として海外に連れ出された日本人がいた、という話は宣教師の記録にも出てくるし、しばしば目にしていました。しかし実際、どのくらいの人数が、どのあたりの国に行って、およそどんな生涯を送ったのか、具体的なイメージが今ひとつ湧かなかった。この本を読むまでは。

史料に残っている日本人はごくわずかとはいえ、著者が丹念にそうした史料を追い、日本人奴隷の実態について詳しく調査研究したのが本書です。

わたしの想像以上に多くの人が、マカオ、フィリピン、南米、スペイン、ポルトガル……と、世界のあちこちに渡っていたのがまず驚き。ポルトガルには少年遣欧使節以前から日本人がいたらしい。

彼・彼女らの境遇もさまざまで、「期限付きの使用人」として契約したのであって自分は奴隷ではない、という人々も存在したようす。現代の私たちからすれば、人身売買で奴隷なんだけれども、本人は「年季奉公」のつもりでいる、というのも、言われてみればなるほど……。海外でのちに自由人となって、現地の人と結婚した人もいれば、不遇のまま生涯を終えた人も少なくなかったようです。

詳しくその生涯がわかっている「ガスパール(日本名は不明)」の場合、8歳頃に九州でさらわれて、表向きはカトリック教徒を装うユダヤ人のポルトガル商人に買い取られ(使用人としてそこの家の子供と同じように教育も受けている)、異端審問所に追われる主人一家とともにアジア各地を転々とした後、メキシコにわたり、そこで奴隷身分からの解放を求める訴訟を起こし、主人の息子と再会を果たし、はれて自由人になった。なんだか激動の人生である。メキシコでどんな生涯を終えたのだろうか。ガスパール。

マカオにも、17世紀初頭にはたくさんの日本人が住んでいたようだけど、明朝が日本人の入国を制限している手前、本当は日本人が住んでいてはいけないので史料としてはあまり残っていないとのこと。

海外で日本人がコミュニティを作ることもあり、それが各地の当局からマークされていたこともあったそうで、江戸幕府の鎖国のプロセスにも「海外在住日本人の問題が少なからず影響を与えたのではないか」と著者は仮説を立てている。

日本人奴隷は中国人やインド人、そのほかの東南アジアの奴隷とも共存していたようなので、そのあたりの歴史もあわせて詳しく知りたいなと思った。ちょうどアメリカの西部開拓時代におけるアジア系移民(日本人含む)についての資料をちまちまと探して読んだりしていることもあって、アジアの他の国の状況も気になるのだった。

しかし、前述のガスパールの件といい、こうした過去の実情が判明したのは、スペインやポルトガルがきちんと文書に記録し、それをちゃんと保管していたからで、すばらしいとしか言いようがありません。捨てちゃダメだよ、文書。後世の人にとって何が重要になるかわからないからね。

ちなみにこの本の原書は3倍のボリュームがあるそうで、イエズス会と奴隷貿易、ポルトガルによる現状認識などについては未訳なので、ぜひ続きも出してほしいです。刊行を楽しみに待っています。


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by rivarisaia | 2017-07-17 19:16 | | Trackback | Comments(4)

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