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2019年 08月 07日 ( 1 )

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Miracle Creek』Angie Kim著、Sarah Crichton Books

ヴァージニア州の小さな町。韓国人の移民の夫婦パクとヨンが、高気圧酸素治療(HBOT)を提供しているクリニックを運営していた。

HBOTは自閉症から不妊症までさまざまな症状に効果があるとされており、定期的に通って治療を受けている患者もいたが、同時にクリニック周辺ではHBOTに対する激しい反対運動も起きていた。

そんなある時、クリニックで爆発が起こり、2名が死亡、複数名が重傷を負う。しかしそれは事故ではなく、容疑者が逮捕されて裁判が起こるのだが……

主に裁判を中心に話が進み、さまざまな登場人物と彼・彼女らの背景が次第に明らかになっていく。裁判と事故の真相を探るミステリーなんだけど、それだけではなくて、母国から希望を持って(子供の将来のために)アメリカに渡ってきた移民と、そのアメリカにうまく馴染めないでいる子供が抱える苦悩、アジア系のアメリカ人(特に女性)がしばしば経験する不愉快な思い、そして障害をもつ子供を育てている親が日々直面する困難といった事柄が丹念に描かれていて、それぞれ事情はまったく異なるものの、どれも痛いほど気持ちが伝わってくる。とてもつらい。

容疑者として逮捕されたのは、シングルマザーのエリザベス。いつもなら彼女は自閉症の息子と一緒にHBOTのチャンバーに入るのに、その日に限って、息子を友人に託し、自分は外でワインを飲んでくつろいでいたのだった。

ところが裁判が進むにつれて、経営者であるパクが多額の保険金をかけていたことが発覚。娘を大学にやるための資金のために自ら施設に放火したのでは?という疑惑が生まれる。同時に、HBOTによる自閉症の子供の治療に反対しているデモ隊が脅迫をほのめかしていたことも明らかになる。

エリザベスは本当に犯人なのか。

数々の小さな嘘、よかれと思って言ったこと、言わなかったこと、積み重なる誤解が大きな悲劇が起きてしまう。そしてその悲劇が関係者全員の人生を大きく変えることになる。言葉ひとつにしたって、それが発せられた状況をよく知れば、意味が全然違ってくるのだ。

裁判もののミステリーかな?と思って読み始めたら、ページターナーな上にかなり複雑で感情を揺さぶる重層的な物語だった。Celeste Ngの小説が好きな人にもおすすめ。




by rivarisaia | 2019-08-07 20:56 | | Trackback | Comments(0)

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