カテゴリ:映画/アジア( 157 )

セデック・バレ 第一部 太陽旗

ユーロスペースでもアンコール上映するそうだし、これから上映される地域もあるので、ようやく感想を。おすすめなので未見の方はぜひ。詳しくは公式サイトをどうぞ。

日本統治下の台湾で起きた原住民※による抗日暴動「霧社事件」を描いた作品で、いろいろな点でよくつくったなあと感心しました。日本では、短縮されたインターナショナル版ではなく、第一部と第二部あわせて276分の完全版の公開。長いので腰が引けるかもしれませんが、長さはまったく気にならないです。2本でひとつの作品なのですが、迷ったすえに感想は2回にわけます。まず前編から。

※ 中国語で「先住民」という表記は「すでに滅んでしまった民族」という意味になるため、17世紀の福建人移住前から住んでいる台湾先住民族の正式な呼称は「台湾原住民」となる。これ、ほほう、と思いました。


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セデック・バレ 第一部 太陽旗(賽德克·巴萊)
監督:ウェイ・ダーション/魏徳聖

セデック族は、台湾中部の山岳地帯に住む原住民族で、首狩りの風習もある狩猟民族である。いくつかの集落にわかれており、その一集落を統べる頭目の息子モーナ・ルダオは、勇敢で名高い若者であった。

1895年に日清戦争で清が敗れ、台湾が日本の統治下に入ると、セデック族の暮らす山奥も日本の支配するところとなる。"野蛮な" 原住民族を文明化すべく日本の教育や文化が押し付けられた。

それから35年が経ち、かつてのような狩猟生活を営んではいないセデック族は、日本人から上から目線の扱いを受けるなど、日々抑圧されていた。

そんなある日、日本人警察官とセデック族のひとりが衝突したことをきっかけに、これまでの不満が爆発。モーナを先頭に部族の誇りをかけた武装蜂起を決意する。


この映画がうまくできてるのは、単純な善悪になっておらず、いろいろな立場の人たちを多角的に描いてるところ。どの立場も心情的には理解できるから辛い。

セデックの人たちは日本人に勝つために戦うのではなくて、死んで虹の橋を渡るための戦いだからさ…そこが心苦しいですよ。そして、勝ち目のない戦いに加わったら、文化を受け継ぐべき若者が死んでしまうではないかと反対する頭目もいる。また、日本人と同じように教育を受けて、日本の名前を持ったセデックの若者はどちらを選ぶのか、引き裂かれるような思いをする。

そもそもどうしてこんなことになった…と振り返ると、これまでの"文明"の押しつけだったり、上から目線だったりという、いろんなことの積み重ねが原因ですからね。いまさら取り返しつかない状況なのよね。

日本の理蕃政策(台湾原住民に対する政策)はうまい方法だったとも思えなくて、結果的によい面があったとしても、相手を尊重するやりかたではなかった。だがしかし、いくら文化とはいえ、時代がうつりかわっていくなかで、セデック族もいつまでも出草(首狩り)をしているわけにはいかないし。

先に住んでた人々に対して、後からやってきた人々が自分たちの文化を押し付ける問題というのは、それこそ世界各地で起きた(いまも起きている)問題ですが、日本は明治の近代化の際、欧米に対して激しく劣等感を抱いたことが「次は自分たちが野蛮人を文明化させることで欧米と同じ立場に立つ」感を抱くという方向に向かった気もなきにしもあらず。

それ考えると、話は全然変わりますけど、古代ローマ帝国ってすごい。属州に対し自分たちの文化や考えを押し付けないって簡単そうで実際にやろうとすると難しそうなのに。

さて、第一部は蜂起したセデック族が、霧社(当時の地域名)のあちこちの駐在所を襲い、霧社公学校で行われていた運動会を襲撃して日本人のみを約140人殺害する、というところで終わります。女性も子どもも容赦なく殺される。

阿鼻叫喚となった現場で、セデックの女性が「どうしてこんなことをしたの…」と泣きながら訴える姿に胸がつまる気持ちで第2部に続く。
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by rivarisaia | 2013-07-03 20:20 | 映画/アジア | Trackback | Comments(0)

グランド・マスター

おそらく宣伝の仕方や予告のつくりを間違えてしまったという、不幸な映画がたまにあります(過去にも『マスター・アンド・コマンダー』とかね…)。想像した映画と違う!となると評価が下がりがちだし、観てほしい人に届かない。

本作の宣伝だと、さまざまな流派の武術家がガチンコ対決をして一番強い人を決定する話+恋愛という印象を受けますが、まったくもってそういう話ではないので、むしろ、どうせカンフーアクションだろ…と敬遠している人の中にこそ選ばれし観客がいるのでは、と心配。

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グランド・マスター(一代宗師)』監督:ウォン・カーウァイ/王家衛

まず、これはウォン・カーウァイの映画です。『欲望の翼』とか『天使の涙』とか『ブエノスアイレス』とか『花様年華』とか『楽園の瑕』のウォン・カーウァイ。

そういう意味で、「すっごいよ~!もう大興奮!」とテンション高く飛び跳ねちゃう作品ではなく、しみじみと心の内側で静かに炎が燃える作品です。で、あとからじわじわくるものを反芻するのよ〜。

で、あらすじ。

詠春拳の宗師である葉問/イップマン(トニー・レオン/梁朝偉)や、八卦掌の奥義を受け継ぐ宮若梅/ゴン・ルオメイ(チャン・ツィイー/章子怡)など、激動する時代の流れに翻弄された武術家たちの人生を描く。


通常であれば激しく動的なアクションシーンが、静的でとても美しい。身体の動きの美に興味のある人(舞踊が好きな人やデッサンやってる人)はとにかく観るといいですよ。やばい…クロッキーしたくなる…という映画も久々です。

表の主役が葉問なら、裏の主役は若梅で、チャン・ツィイーが嫌いな私が「ツーイーたんがこんなにすばらしいなんて!」と誉め称えたいくらいの良さ。奥義を受け継いでるのにさ、女ってだけで早く結婚しろだの、結婚したら宮家の人間ではなくなるだの、うるさく言われて、あげく結婚しないと技を継承させる子孫ができないというね…泣ける…。しかし、彼女はまわりに流されることなく自分の人生を生きたような気がする。

で、そんな若梅と人生が交差する人物として、八極拳の宗師、一線天/カミソリ(チャン・チェン/張震)が登場します。彼も激動の時代に人生いろいろあったらしいことがサラッと描かれるのですが、張震のムダ使いと言いたくなるくらい本筋に絡まないので、初見時には一緒に観た友人と

「張震は何のために出てきたのか。もはや要らないキャラだったのでは」

などと、餃子食べながら話したんですけども、後になってから彼の存在が私の中でぶくぶくふくらんできまして、いまは香港で一線天が開いたという「白薔薇理髪店」のことで頭がいっぱいです。だって集合写真がこんなの。
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あんなちょっとしか登場シーンないのに、なんなの張震のこの存在感。もう白薔薇理髪店だけで1本映画撮ってほしい…。

それにしても本当に美しい映画でした。誰が強くて偉いとか、見た目(型)がどうとか、そういう上辺ではなくて、武術の根底に流れる精神を描いている作品といえばいいのかもしれません。30年代の娼館も出てきて、衣装も綺麗。美術が好きな人も観るべきだな。
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by rivarisaia | 2013-06-05 21:14 | 映画/アジア | Trackback | Comments(2)

タイガー ~伝説のスパイ~

最近さっさと感想書かないのでこれまた観てから少々時間が経っちゃったんですけど、私が観たときはけっこうなご老人から若者まで、お客さんがいっぱいいてよかった、よかった。何度もみんなで爆笑したし。

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タイガー ~伝説のスパイ~(Ek Tha Tiger)』監督:カビール・カーン

インド諜報局RAWの凄腕エージェント「タイガー」(サルマーン・カーン)は、新たなミッションでダブリンへ向かう。敵国パキスタンとの接触の疑いがある、ミサイル開発者の博士を監視するためである。しかしタイガーは、博士の家で働く学生ゾヤ(カトリーナ・カイフ)と恋に落ちてしまい…


手に汗にぎるちょうアクションあり(すごく楽しい。大好き)、許されざる恋のロマンスあり、笑いあり、もちろん歌あり、踊りあり、イラクにダブリンにイスタンブールにキューバとあちこち旅して、このふたりはどうなっちゃうのかしらとハラハラしますが、最後はお約束のハッピーエンド。すばらしいですね!

敵も味方も入り乱れてお互い騙し合い。相手の裏をかくのが諜報員のお仕事ですけど、途中、私もすっかり騙された。インド諜報局の永遠のライバルはパキスタン諜報局なんですけども、タイガーのせいで(というかタイガーのおかげで?)犬猿の仲の両国がお互いに協力するハメになってるのが笑える。クライマックスの、飛行機の扉のところにタイガーがにゅーっと顔出す場面では劇場中大盛りあがりでしたよ。サイコー。

ああそして、タイガーの同僚のヒゲ君がいい奴だったなあ。アドバイスもつねに的確で。

オマケとして、エンドクレジットのすばらしい曲をどうぞ。



カトリーナちゃんといえばやたらセクシーな「Sheila Ki Jawani」が印象的だったんですが、本作でも相変わらず、腰くねくねして胸をクイックイッと突き出してました(私、インド女優の胸クイックイッの振り付けがかなり好き)。インドの女優さんは美人ばっかりで眼福ですわよ。ということでオマケその2「Sheila Ki Jawani」もどうぞ。


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by rivarisaia | 2013-05-11 21:14 | 映画/アジア | Trackback | Comments(2)

如来神拳 カンフーウォーズ

ちょっと前にニコニコ動画で放映してて、ちょうど未見でみたかった作品なのですが、ものすごいエネルギッシュな映画だった…。忘れないうちにメモしておこうと思ったのですが、もともとTVドラマに向いているような長い話を94分に凝縮しているので、理解する間もなく、どんどん話が展開するうえに、いろいろもりだくさんすぎて、あらすじがまったく書けません!

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如来神拳 カンフーウォーズ(如来神掌)』監督:テイラー・ウォン/黄泰來

それでも、どんな話なのかざっくり書くと、

その昔、5人の達人の間で大きな戦いがあった→前提
その数十年後、主人公の青年が昔の戦いで死んだとされる火雲邪神に弟子入りし、武林で繰り広げられる戦いに身を投じ、その合間に恋愛があったり、生き別れの親子の再会があったり、いろいろな誤解が解けたり…


と、てんこもり。まったくあらすじになってないですが、これが私の限界です。詳しくはみてください。理解を超越して目が画面にクギづけ。

戦い方は、カンフーや剣術というよりは、手からビームを出したり、足がにゅーーんとのびたり、太鼓をドンドコドンドコ叩いたり(そういう攻撃なのである)…という、技の競い合いのような感じです。武林っていうより、仙界の戦いみたい。ネバー・エンディング・ストーリーのファルコンのような生き物も登場するよ(しかも、かなり活躍する)。

キャストも豪華で、ベティ・ウェイもかわいかったのですが、久々のロー・リエこと羅烈さんが美味しい役回りを持っていきました! よくわからないんだけど、羅烈さんは毎度「東~島~長~離~」と名乗りながら登場する。しつこいくらいに、毎度毎度「東~島~長~離~」と言いながら、のんびり歩いてやってくる。のんびりしてるので、いつも出遅れてるらしい(→ここポイント。そして、ちょう親近感)。

あらすじつかめてないけど、羅烈さんを満喫したので大満足ですよ。
これドラマでもおもしろいかも。

YouTubeで昔のドラマ版の映像がありました。白黒だけど、すごい手からいろいろ出てる! やだ、楽しい!



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by rivarisaia | 2013-04-30 22:43 | 映画/アジア | Trackback | Comments(0)

恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム

かつて「インドの映画というとどうしてもこの歌が」というエントリを書いたのが2009年の4月末(記事中の映像リンクはすでに切れてます)。2007年の映画なのだが、ついに一般公開となりました。

日本語字幕付きで、劇場の大きなスクリーンで観られる日がくるなんて! なんて幸せ!

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恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム(Om Shanti Om)
監督:ファラー・カーン

70年代のボンベイ。脇役俳優のオームは、女優シャンティに恋をしていた。オームにとって高嶺の花だったシャンティなのだが、あることをきっかけにふたりは知り合い、仲良くなる。ところが、恐ろしく不幸な出来事がふたりを襲い…

そして30年後…


これ以上は詳しく書きませんので観てください。タイトル通り「輪廻」の話で、途中びっくりする展開になってます。オーム役はぜんぜん年取らないシャー・ルク・カーン、シャンティ役はカワイコちゃんディーピカー、そして悪役イケメンにアルジュン・ラームパールです。私が好きなのは、オームの親友パップー(シュレーヤス・タラプデー)。本当にいい友だちなのよねえ。30年後の「再会シーン」はちょっと泣ける。

そりゃそうと、名前、覚えられないですよね。いいです、無理に覚えなくて。そんな私もじつはインドの俳優・女優は勝手につけたあだ名で呼んでるし…。

主役がナイスバディ! ヒロインがめっちゃカワイイ! 悪役がイケメン! で大丈夫です。

さらに本作はインド映画を観たことない人にもオススメ。涙あり笑いあり、歌あり踊りありのハッピーエンド娯楽大作。おまけに制作チーム総出演のエンドクレジットがこれまた大変ステキな出来映えです。

歌と踊りもとても楽しくて、映画を観たらきっとサントラがほしくなるはず。凹んだときに、この映画の曲の数々を聞くとテンションあがるので、みんなもサントラ買ったほうがいいかもよ~。

インド映画は長い…と躊躇してるなら、本作は3時間ナイし、マサラ上映なら途中で15分の休憩が入ります。

そう。東京は毎週金曜19:10からの最終回がマサラ上映という、映画と一緒に歌ってもよし、踊ってもよし、きゃあきゃあヒューヒュー言ってもよし、という回になっていて、私はそれに行きましたが、すんごく楽しかったです。劇場から鳴らす用のクラッカーと投げる用の紙吹雪もらった…。立ち上がって踊ってきたわ!

本当に待ちに待った劇場公開なので、劇場に行ける人はぜひこの機会に大きいスクリーンでどうぞ。詳細は公式サイトでご確認ください。
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by rivarisaia | 2013-03-26 18:43 | 映画/アジア | Trackback(1) | Comments(6)

桃(タオ)さんのしあわせ

よく「子どもと動物は反則」といわれますが、私の場合は「老人と動物は反則」。老人物に弱いので憂鬱になったらどうしようと心配しましたが、時折ユーモアを交えつつも淡々と進み、静かに心に沁みていく映画。映像から伝わってくる空気の色がよかった。

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桃(タオ)さんのしあわせ(桃姐/A Simple Life)』監督:アン・ホイ/許鞍華

13歳の頃から60年間、ある家の使用人として働いてきた桃さん(ディニー・イップ/葉德嫻)。いまではその家の人々はほとんど海外に移住してしまっていて、桃さんは、ひとり香港に残っている映画プロデューサーのロジャー(アンディ・ラウ/劉德華)の世話をしているのだった。

そんなある日、桃さんが脳卒中で倒れてしまう。


他人に迷惑をかけまいとする桃さんは、仕事を辞めて老人ホームに入ることにします。そんな桃さんのために、ロジャーは老人ホームを探し、その後も仕事の合間をぬってホームに入居した桃さんをしばしば訪ねたり、一緒に外出したりします。残り少ない桃さんの時間を、大切に過ごすふたりなのでありました。

このふたりは、実の親子じゃないけど、まるきり他人でもないという関係のせいか、必要以上にベタベタ甘えないし、よそよそしくもないという、ちょうどよい距離感を保っています。お節介は焼かずに相手の意志を尊重して肝心な時に側にいるみたいな感じ(まあ、実の親子でわーわー言い合いになったりするのも、それはそれでいいのかもしれないけどさ)。

正直、最初は「え、こんな老人ホームは気分が滅入るよね…」と桃さん以上にどんよりした私でしたが、最終的には、すごくいい場所じゃないけどそれほど悪くなかったのかも…と思うにいたりました(最後のほうである人がお葬式に花束を持ってやってくる場面でふとそんな気がした)。

お涙頂戴の話ではまったくナイけれど、さりげないのにしんみりといつまでも心に残るような場面がたくさんあって、いろいろと考えさせられる話でしたが、桃さんの人生はとてもしあわせでしたよ。
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by rivarisaia | 2012-12-13 22:01 | 映画/アジア | Trackback | Comments(0)

怪奇ヘビ男

私の東京国際映画祭は、これだけは絶対に外せない!と思っていたカンボジア映画で多幸感に包まれ終了。

カンボジアでは誰もが知っている作品らしいのだが、想像以上に大傑作。ホラーあり、コメディあり、お色気あり、ロマンスあり、冒険あり、歌もあり、さらには本物のインコ大活躍!という大変にエンターテインメントな作品で、すばらしかった。

60年代はカンボジア映画の黄金期で、東南アジアで大人気だったらしいのだが、クメール・ルージュがフィルムのほとんどを没収し、焼却してしまい、また映画人は粛正された(こちらの記事をどうぞ)。本作は、監督自身が亡命先であるカナダに持ち出すことができた6本の作品のうちのひとつ。

怪奇ヘビ男(The Snake Man/Puos Keng Kang)』監督:ティ・リム・クゥン

夫の暴力に耐えて幼い娘とくらしている女性が、大蛇(ケンコン蛇、という名称である)と一晩過ごす約束をするハメに。ところが、暴力夫よりも大蛇のほうが好きになってしまい、その後何度も大蛇と密会。やがて妊娠してしまう。

怒った暴力夫は大蛇を殺害。スープにして妻に食べさせた挙げ句、妻の腹を切り裂き、あふれ出る大量のヘビも叩き殺すが、1匹だけ難を逃れたヘビがいた…


ここまでは、有名な伝説がもとになっているそうです。
(参照:カンボジア民話「大蛇ケーンコーン」

そうそう、しゃべるカラス、映画にも登場したよね!

以降の展開は監督の創作とのこと。

話かわって、あるところにソリーヤー(ディ・サヴェット)という気だてのよい娘がいた。ソリーヤーの父は意地悪な女を後妻に迎える。そしてこの継母は、ソリーヤーを家から追い出してしまう。

そんなソリーヤーのもとに、前述の「難を逃れたヘビ」が、イケメンの青年(チア・ユットゥン)に成長して登場。ふたりは恋に落ちるが、継母はソリーヤーと青年の仲を裂こうとするのだった…


お色気ムンムンな継母が、アハーンウフーンと男性陣を翻弄する場面はなかなか可笑しい。いっぽうでソリーヤーとヘビ青年の恋のゆくえも、お付きの人々を巻き込んでてんやわんやの喜劇で愉快。

しかしこのあと、継母の協力者としてちょう怪しいホラーな魔女が登場。ヘビ青年の命である「赤い宝石の指輪」が奪われ、ヘビ青年はヘビの姿に戻り、さらに石になってしまうのだが、ソリーヤーのお腹には子どもが宿っていた…。

そして8年後。

えっっ!? 8年!?

ええと、ソリーヤーは娘と洞窟でひっそりとくらしてました。ところで、この娘は髪の毛がヘビなのである。子役の少女が生きたヘビを頭にのっけて演じているのである。うねうねと髪の毛であるヘビが動いているのである。

子役スゴイ!

そんなヘビ髪少女は、くだんの「赤い宝石の指輪」のありかを発見。母であるソリーヤーは指輪を取り戻しに行くが、逆に魔女につかまって気がふれてしまう。綺麗なヒロインなのに、もんのすごい狂いっぷりの熱演である。

そこでインコの助言を得たヘビ髪少女が、母の代わりにがんばるのである。

え、インコ?

ええ、ブルーのセキセイインコ(本物)の一家が登場し、少女が親切を施したら、代わりにいろいろアドバイスしてくれるのだ。インコがアップでベラベラしゃべるシーンかわいい。

ここから最後の大盛り上がり、手に汗にぎるヘビ髪少女の大活躍が!

頭だけでズルズル這い戻ってくる魔女! ガンガンとたらいを叩く気がふれたお母さん! ヘビ髪少女は無事に指輪をゲットできるのか! マッドなお母さんと石になったお父さんの運命は? あと意地悪な継母はどうなるの!?


怒濤の展開でございました。
やはり、人間、善行を積まないとダメですよねーというハッピーエンドで本当によかったです。

本作品、上映前に監督のご挨拶がありました。温和そうな笑顔のすてきなおじいちゃんでした。先日崩御されたカンボジアのシハヌーク国王は映画産業を後援していたそうで、監督から感謝の意が捧げられました。

ポル・ポト派の粛正を逃れて国外にフィルムを持ち出し、何十年の時を経てこうやって東京の映画祭でも上映され、監督のご家族も一緒に多くの人と作品を観賞することができたことが、感無量でございます。本当にありがとうございました。

以下もあわせてご覧ください。

本物のヘビも多数出演 “クメール映画の父”ティ・リム・クゥン監督が語る黄金期のカンボジアホラー

「今回上映される作品にかかわった人で、今も生きているのは私と女優のディ・サベットだけです」の言葉が悲しいです。
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by rivarisaia | 2012-10-29 00:48 | 映画/アジア | Trackback | Comments(3)

恋の紫煙2

映画祭2本目は映画祭常連になっているパン・ホーチョン監督の作品。パン・ホーチョンの映画は本当にどれもこれも面白いので、あまり一般公開されないのが残念でならない。ホラーからサスペンス、コメディにいたるまで、さまざまな作品を撮るんだけど、どれもヒネリが効いていて楽しい。

今回はラブコメディです。『恋の紫煙』の続編。

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恋の紫煙2(春嬌與志明)』監督:パン・ホーチョン/彭浩翔

前作で恋人同士になった広告会社につとめる青年ジーミン(余文樂/ショーン・ユー)と化粧品店につとめる女性チョンギウ(ミリアム・ヨン/楊千嬅)は同棲していた。ところが、すれ違いからふたりは同棲を解消。ジーミンは北京へ転勤になり、スチュワーデスの女性と恋仲に。いっぽうチョンギウも北京で仕事をすることになり、新たな出会いがあるのだが…


最初に言っておくと、ラブコメがあまり好きじゃない私がすごく面白い、と思うのだから本当におもしろいのです。

ホーチョンの凄いところは、イラッとくる女性なり男性なりが出てきても、最終的には彼女/彼らが許せちゃうところ。そして、ふつうの恋愛物にありがちな「勝手にふたりの世界にひたってろ!ぞわぞわ〜」という鳥肌ポイントがナイところ。これ以上何かやったら鳥肌立つよ…という寸前で、「は?」という台詞なり行為なりが入り、またそのタイミングが絶妙である。今回の作品でも、私の隣の女性はあるシーンで感極まって泣いていたが、途中泣きながら「ブッッ!!」と吹き出していた。わかるわー。

女性の心理を描くのも上手。ヒロインのチョンギウの行動ひとつひとつに対して、多くの女性が「そうだ、そうだ、そうだ!」と深く頷いていたに違いない。

青年ジーミンは若い上に子どもっぽくて、優柔不断で、本当にダメなところはダメで、年上の女性チョンギウにしてみれば、そんな男はいいかげん忘れたほうがいいとわかってるんだけど、だがしかし。

最後のアレにはやられた。そりゃもう、どっち選ぶかっていったら、もう決まってるよね。いやはや。

「恋の紫煙」は1と2あわせて公開したらいいのにな。
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by rivarisaia | 2012-10-24 21:06 | 映画/アジア | Trackback | Comments(2)

独身の行方(単身男女)

今年も映画祭の季節です。例年以上にスケジュールがうまく組めなくて(観たい作品の時間が重なってたり、自分の予定とバッティングしてたり…)、今年はちょっとしか観ません。残念!

昨日は、中国映画週間でこれ。

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独身の行方(単身男女)』監督:杜琪峰(ジョニー・トー)

中国から香港にやってきて仕事をしている女性(高圓圓/カオ・ユァンユァン)が主人公。

彼氏に捨てられくさくさしているヒロインだが、ある日ホームレスのような元・建築家(呉彦祖/ダニエル・ウー)と知り合う。彼に励まされ、心機一転したヒロインは、向かいの建物の会社に勤めるエリート(古天楽/ルイス・クー) とデートの約束をするのだが…


アル中気味だった元・建築家は、ヒロインと出会ったのをきっかけに見事立ち直り、立派な建築家となってヒロインの前に現れる。そしてセクシー女性を見ると鼻血を出してしまうエリート男性は、ヒロインとの最初のデートをすっぽかしてしまうも彼女のことが忘れられず、おまけに彼女の会社の社長となって舞い戻ってくる。

かくして、ヒロインをめぐる、建築家vsエリート社長のバトルがはじまった!


というラブコメですが、私としてはヒロインがとても苦手なタイプの女だったうえに、建築家がありがち王子様タイプで気持ち悪かったため(彦祖のせいではなく役柄が)、全体としては正直あんまり好きじゃない。

大体からして、ヒロインは何かにつけて涙をこぼしているうえに、優柔不断で純情ぶってるので

いつまで泣いてんだよ、このバカ女!
さっさとどっちかと付き合ったらいいじゃんか! それでダメだったら別の人にすりゃいいだろ、このドアホ!


と言いたくなってしまうのだった。重要な脇役として登場する「カエル」があんな目にあったのも、もとを正せばヒロインのせいである。本気でデートもしてないくせにいきなり結婚とかナイから! そんな性格だから、前の彼氏に捨てられたんじゃないのか、あーやっぱり選ぶのはそっちの無難なほうかよ、と私の中ではさんざんなのである。

やはりラブコメのヒロインは、もっとすっとんきょうでさっぱりした性格じゃないとイヤー。エリート社長は大変笑えるのでナイスキャラだったのに。

と、文句を言いつつも、愉快な場面もたくさんあったので、その点は楽しみました。

そんなことよりも。

2年前の伝説と化した恐ろしい字幕『孫文の義士団(十月圍城)』の悪夢ふたたび。。。

しかも今回はあれを超える凄まじさなのである。映画自体が広東語版でなかったのもショックだったけど(だってイタリア映画やフランス映画に行ったら英語吹替えだったというのと同じよ)、男性がオネエ言葉でしゃべったり、女性が男言葉でしゃべったりするのはもちろん、ですますとだであるも混在し、誤字もいっぱい、意味不明な文章も出現。

上映前に「字幕に間違いがあるのでご了承ください」というアナウンスが流れたけど、あれは「字幕がほとんど変なので」の間違いではなかろうか。

「どう、これイイかな?」というニュアンスはすべて「これ行きますか?」となってた…。ウイスキーもビールだしね…。ラブシーンで入市だしね…(想像ついたけど入市ってナニ?)

ヘンテコ字幕はチラ見にとどめて、脳内で変換して観賞するハメになったので疲れた。日本人のネイティブがチェックするだけでも全然違うと思うんだけど。せめて事務局内で確認作業できる人いないのかな。

これの前の上映作品は比較的マトモだったらしいので、トンチキ字幕かどうかは作品次第かもしれません。私は今年の中国映画週間はこの1本しか観ないんですけど。
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by rivarisaia | 2012-10-21 22:48 | 映画/アジア | Trackback(1) | Comments(0)

カエル少年失踪殺人事件

未解決事件をもとにした話と聞き、しかもそれが韓国映画、長くて重いに違いあるまい…と避けてたんですけど、先日観た。前半はおもしろかったのに後半が微妙、だが最後のまとめが大変によろしくて帳消し、という映画でございました。

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カエル少年失踪殺人事件(Children…)』監督:イ・ギュマン

実際の事件のあらまし。

1991年、カエルをとりに行くと言った5人の小学生が失踪。子どもたちの行方はわからないまま、11年後、5人の白骨死体が発見され、他殺であることが判明したが犯人は謎のままである。

映画前半のあらすじ。

やらせが発覚して地方に飛ばされたTVプロデューサーは、スクープをモノにして返り咲くべく、数年前に起きた小学生失踪事件を追うことに。協力を仰いだのは、「顔見知りの犯行」説を唱える大学教授であった。


主人公のプロデューサーにも、説得力があるようでじつはナイ大学教授にも、まるで共感できるところはなく、非常にイラッとすることうけあい。それが狙いとみた。教授ときたら、登場シーンで「いかに人は自分の正しいと思う説を盲信するか」という講義をしてるんですけど、それをお前に言いたいよ、と小1時間ほど説教したいところです。

教授の説は無理があるのだが、盲信する教授と、それに乗っかった主人公には、すべてがある人物を指しているかのように思えてしまい、おかげで、

お前らは本当に人間かー!?

という事態を引き起こす。しかし、彼らの読みは外れ、子どもたちは発見されないのだった。ここまでが前半。

やがて月日が流れ、偶然5人の遺体が見つかるのが後半。謎の容疑者が現れたりするんですが、あの展開は蛇足な気がするんだよな(何となく意図はわかるんだけど)。それよりも、過去にやらかしたことを悔いているらしい主人公の、反省の軌跡をもっと描いたらよかったのにー。

しかしですよ、教授の疑惑の大元となった「ある遺族の小さな嘘」が明らかになるラストには、胸が詰まったですよ。そうか…そういうことなのか…。犯人がつかまっても、つかまらなくても、事件は風化していくけれど、遺族の哀しみは一生消えないんだよね。
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by rivarisaia | 2012-09-06 19:07 | 映画/アジア | Trackback | Comments(0)

見たもの読んだものについての電子雑記帳


by 春巻まやや
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