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プライドと偏見

先日いまさら感想書いた『英国王のスピーチ』のキャストがBBC版『高慢と偏見』カップルだったことに気づいたので、せっかくだから私の大好きな困り顔ステキ俳優が出てる映画版の話でもしてみよう。ついこの間、ヒマだったのでDVDを見返したばかりだし。

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プライドと偏見(Pride & Prejudice)』監督:ジョー・ライト

ジェーン・オースティンの小説はどれも好きなんですけど、おもしろいのはロマンス部分より、金の話と階級差の話です。

年収がいくらだ、遺産がいくらだ、このままだと相続は誰それだ、家を追い出されちゃうよ、ギャーー!というお金の話が具体的な数字で出てきて、同じアッパーミドル内の微妙な階級差で大騒ぎになるところが愉快。何をやっているのだこの人たちは…。貴族と庶民という歴然とした差ならまだしも、同じ中流クラスで天と地ほどの差が存在するのであった。げに恐ろしき階級社会かな。

さて、『高慢と偏見』ですが、原作に忠実なのは断然BBCドラマ版です。「コリン・ファースのダーシー」はピッタリですが、ジェニファー・イーリーのエリザベスがいまひとつ。エリザベスにしては落ち着きがありすぎて、大人びてるのよね。

いっぽう映画版は、映像が非常に美しいのですが、ロマンス演出にやや力が入りすぎて、原作読んでないとわかりにくい点があるので、そこは脳内で補完してください。

困り顔ステキ俳優マシュー・マクファディンのダーシーは高慢というより陰気ですが、私はかなり好きです。ドナルド・サザーランドのお父さんも最高。しかし、ここでもエリザベスが…。キーラ・ナイトレイって何をやってもキーラ・ナイトレイなんだよね。どっちかっていうとリディアのほうが合ってるんじゃないかしらね。

さらに、この手の映画は字幕が厳しい。字数制限があるから仕方ないんですけど、回りくどくておもしろい言い回しが直球になっちゃうんですよね。したがって、字幕は無視するのがおすすめ。

さらに重要なのは、Twitterでも書きましたけど、『プライドと偏見』には心底ウザいアメリカ版エンディングというのがあってですね、なんでこういう余計なことをするかなーという最悪の激甘な付け足しがなされており、うっかり見てしまうと鼻血出そうになります。DVDだと特典に入っていますので、一度くらいなら、胸焼けしてみるのも酔狂かもしれません。

一部の女子は「まあ、なんてロマンチック(はあと)」となるのかもしれませんが、エリザベスもダーシーもそーゆーことを絶対に言ったりしない性格のはずですよ、もう何なんだろうね、あれは。
by rivarisaia | 2012-03-09 23:49 | 映画/洋画 | Trackback | Comments(0)

英国王のスピーチ

実在の人物の映画といえば、昨年のこの映画もそうでした。英国王にFワードを連呼させる場面でお腹よじれるほど大笑い。ソクーロフの『太陽』の上映ですらタブー云々といわれた日本としては、こういう映画がつくれるイギリスちょっとうらやましいわ。

また、本作は壁紙映画としても優れていて、なかなかシックですてきな壁が見られることにも注目です。

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英国王のスピーチ(The King's Speech)』監督:トム・フーパー

ジョージ6世のコリン・ファースは、何をやっても常にコリン・ファースなのがすでに一芸ですから、今回も「コリン・ファースのジョージ6世」が板についており、問題ありません。言語療法士ライオネル・ローグ役のジェフリー・ラッシュと、ジョージ6世の妻エリザベス役のヘレナ・ボナム=カーターもすばらしかったのですが、エドワード8世のガイ・ピアースのダメそうな感じは輪をかけて絶好調。シンプソン夫人のいかにもアメリカ女な雰囲気も笑えたけど。

いまでもいちばん印象に残ってるのは、言語療法士の家に国王夫妻がやってきたところへ、外出してたはずの療法士の奥さん(ジェニファー・イーリー)が帰ってくる場面。なんてことはない場面なんですけどねえ。よく考えてみると、ジェニファー・イーリーはTVドラマ版『高慢と偏見』のエリザベス役だったね…。

さて。

言語療法士のローグが実は…という点も物語上大きな要素であり、これが王室御用達の言語療法士だったら話はこんなにおもしろい方向に進まない。国王の前途の茨の道だったけど、ローグの前途だって暗雲立ちこめてますよね。出会うべくして出会ったふたりともいえます。

昨年のオスカー候補の2作品が、ネット上で表面上つながってても実際の友だちは少なくて孤独といった匂いを漂わせてた作品と、住む世界が違っていても身分を超えた真の友情が育まれるという作品だったのは興味深いものです。

オスカーはこういう手堅い作品というか伝記映画好きですよね。最近、伝記映画の線引きについても最いろいろ考えてしまったので、「The Economist」のこんな記事もおまけでどうぞ。英語です。

"How to make a good biopic" The Economist, Nov 29th 2011
by rivarisaia | 2012-03-08 23:26 | 映画/洋画 | Trackback | Comments(0)

フロスト×ニクソン

実在の人物をとりあげた映画は、その人がまだバリバリ現役か存命中、あるいは亡くなって間もない場合には観ていて居心地が悪くなることがあるのですが、この映画はなかなかおもしろかった。2009年のオスカーにノミネートされてましたが、オスカーって伝記映画好きですよねえ。

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フロスト×ニクソン(Frost/Nixon)』監督:ロン・ハワード

アメリカきっての悪役大統領のひとり、ニクソン。ウォーターゲートで辞任に追い込まれたけど、罪を認めることはなかったニクソンに対し、辞任から3年後、英国人司会者フロストが単独TVインタビューを行うことになるが…という話。インタビュー自体は実話ですが、本作の原作は舞台劇です。

話としては非常に地味なのに、これがなかなかハラハラさせられます。というのも、どうも軽薄そうで女好きな司会者フロストさんがインタビューを行いたいのは、ジャーナリストとしての正義感からというよりも、むしろアメリカで成功したいという野心からであり、のっけから交渉もうまくいかないから。番組のスポンサーも見つからず、どうするのかと思ったら、自腹を切るフロストさんなのだ。え、自腹? ここで彼には侠気を感じたものの、さぞかし先行き不安だったろうなと胃が痛くなっちゃった私である。

ちなみにそんなフロストさんを、信頼しつつ、でも内心は相当不安げなまなざしでサポートしているプロデューサー、ジョン・バート役でマシュー・マクファディンが出演してます。さらにニクソンを大統領時代から全力でサポートしているジャック・ブレナン役がケヴィン・ベーコン。フロスト役はマイケル・シーン(この人うまいよね)、ニクソン役はフランク・ランジェラ(ぜんぜん似てないけど存在感があった)。

実際のインタビューは、まるで格闘技の試合のようでもあります。みなぎる緊張感、水面下で繰り広げられる頭脳戦の末、どっちが勝つのか知っていても、最後の「彼」の表情にため息をつかずにはいられないのでした。

途中の深夜の電話のエピソードは余計な気もしたんですけど(あれは実話じゃないはず)、イタリア製の靴のエピソードにはじんわりくるものがありまして、ニクソンの弱さや敗北感を描くことで、これまで映画ではとかく悪役にされがちだったニクソンに対する優しい視線が感じられました。
by rivarisaia | 2012-03-07 23:00 | 映画/洋画 | Trackback(1) | Comments(0)

Jamrach's Menagerie

昨年のブッカー賞候補作で表紙が気になってた作品を読みました。いやはや…これは…。表紙と前半の物語から連想した話とはまったく異なる展開が後半に待ち受けてたのが衝撃。

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Jamrach's Menagerie』Carol Birch著、Canongate Books

1857年。Jaffy Brownという少年がロンドンのイースト・エンドの路上で逃げ出してきたトラに出会う。ガブリとトラに噛まれる Jaffy だが、かすり傷程度で助かる。そのトラは、異国の動物を取り扱う商売をしている Jamarach さんのトラだった。


子どものようなお母さんとふたり暮らしの Jaffy は、この事件をきっかけに、Jamarach氏の「menagerie=メナジェリー」で働くことになります。「menagerie」って言葉が私は大好きですが、これは小さい動物園のような場所といえばいいのでしょうか。その昔、世界中から珍奇な動物を収集して展示していた場所のことで、動物園の起源みたいなものですね。

さて、主人公の Jaffy は、同じメナジェリーで働く少年 Tim と仲良くなり、Tim の双子の妹 Ishbel に淡い恋心を抱いたりします。

本書の英語は別に難しくないんですけど、Jaffy の一人称で書かれている文章が私には独特なリズムのように感じられて、馴れるまで読みにくかったんですよ(しかし、この文体が後で効果を発揮する)。この調子で、メナジェリーでの摩訶不思議な話な展開すんのかなーと思ったら違いました。

そんなある日、Jamarach氏のもとに「ドラゴン」を仕入れてほしいという依頼がやってくる。捕鯨船に乗り込み、ドラゴン捕獲の旅に出る Jaffy と Tim だったが…


このあたりから一転して、海の荒くれ男たちとともに大海原で繰り広げられる帆船冒険小説の様相になってきます。船上のくらしの描写はリアルに迫ってくるものがあり、ドラゴン探しもどうなることやらと気を揉むのですが…。

ここから先、読みながらなんとなく予感した通りに事が進むも、それが Jaffy の口調で語られると逆に過酷さが増し、本当に言葉もないほどつらい。前半のメナジェリーでの日々が懐かしくなるほどですよ。

道徳的ジレンマと赦しといったテーマを含みつつ、少年が大人へと成長する物語です。

著者のあとがきに、Jamarach氏だけは実在の人物とあってびっくり。また2つのエピソードは実話を元にしているそうです。ひとつは、Jamarach氏のトラが逃げて少年を噛んだ(けど少年は無事だった)という事件。もうひとつは、後半で Jaffy の身に起きるカギとなる事件なのでした。
by rivarisaia | 2012-03-06 18:36 | | Trackback | Comments(0)

彼女が消えた浜辺

ソツなく淡々と進行して終了した今年のアカデミー賞でしたが、いくつかオスカー絡みで観たい映画があるんですけど、個人的にいちばん気になってるのはイラン映画の『別離』。監督のアスガー・ファルハディですが、前作も傑作でした。傑作すぎて前は感想書けなかったんだけど。

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彼女が消えた浜辺(Darbareye Elly/About Elly)』監督:アスガー・ファルハディ

家族連れでカスピ海沿岸のリゾート地に遊びにきた友人たち。主人公のセピデーは、子どもの保育園の先生エリをこの旅行に誘っていた。離婚したばかりの友人アーマドに紹介しようと考えたのだ。

ところが翌日、浜辺にいたエリが突然姿を消してしまう…


登場するのはイランの中流階級の人々。はじめのうちは、特に舞台がイランではなくても、たとえば欧米や日本でも成り立つような共通点も感じられるんですが、次第にイランの社会的な背景が重く重くのしかかってくるような展開になり、見終わってみると、イランでなければ成立しえないような張りつめた空気が充満していることに気づくのでした。

おそらく、自分たちは保守的ではなく、文化的にも精神的にも開けた価値観を持っていると考えていたであろう人々は、エリの失踪によって、根本的にはまったくそうではなかったことが露見する。

そもそもエリという女性は誰なのか、どこに消えてしまったのか、謎がひとつ判明するたびに、窮地に陥った人々は、保身に走ったり、嘘を上塗りするはめになり、楽しかったはずのバカンスは一転して身動きのとれない悪夢へと変わるのでした。

ミステリーというほどミステリーではないのに非常にサスペンスフルで、他の国でも通用しそうなのにイランらしいという絶妙なバランスの上に成り立ってる映画。凧揚げをしている時のエリの笑顔がとても心に残ります。『別離』楽しみだな〜。
by rivarisaia | 2012-03-04 19:36 | 映画/洋画 | Trackback | Comments(2)
先日、インゼル文庫の話をしましたが、これ集めるつもりは毛頭ないんですけど(これ、強く主張しておく)、1冊だけじゃ淋しいのでもう1冊買っちゃったんですよね。あれ?

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Das kleine Buch der Vögel und Nester』Insel-Bücherei Nr. 100 

こちらは「鳥と巣」の本です。うちには卵と巣の写真集『Egg & Nest』があるんだから、鳥と巣の画集も1冊くらいあってもいいじゃない、と自分に言い訳してみました。

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私が持ってるのは新しい版のもので、図版は、Fritz Kredel です。同じタイトルのNr.100は、もうひとつ古い版が存在していて、表紙の文字の書体は古いほうがかっこいい。また、中の挿絵も違うんですよね。謎だ。

海外の古本サイトを見ていると、インゼル文庫には蝶や植物、昔の楽譜や詩集、イラスト集…となんだか楽しそうな本がいっぱいそろってるんですよね。目の保養であると同時に毒である。

さらにインゼル文庫に似たシリーズに、ペンギン・ブックスから出ていた「King Penguin」シリーズというのがあって、ドレスの本がよさげだった…けど、これも見ないように心がけております。
by rivarisaia | 2012-03-02 18:25 | | Trackback | Comments(0)

見たもの読んだものについての電子雑記帳


by 春巻まやや