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『ワンダー 君は太陽(Wonder)』

ご無沙汰しているうちに梅雨が明けた。まだ6月なのにびっくり。

さて、2012年の「これを読まずして年は越せないで賞」候補作だった、R・J・パラシオの『Wonder』が映画化されたので、少々不安な気持ちもありながら観てきたら、とってもよかった! 原作は『ワンダー Wonder』というタイトルで、ほるぷ出版から邦訳も出ています。

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ワンダー 君は太陽(Wonder)』 監督:スティーヴン・チョボスキー

遺伝子疾患で顔に障害があるオギー。これまで入退院を繰り返していたため学校に通えず、自宅学習をしていたけれども、10歳にして初めて学校に通うことに……

ざっとあらすじや予告だけみると、障害のある子どもがいじめられたりしながら、最後は試練を乗り越えるという泣ける話でしょ?と多くの人が思うにちがいなく、大筋では間違ってないんですけど、ありがちな感動モノではないんですよね。

主人公のオギー、彼の友人や姉、姉の友人……と語り手が変わる原作の構成が、違和感なく映画にも取り入れられていて、オギーを中心に話は展開するけれど、両親に心配をかけまいとしてきたお姉ちゃん、その場にあわせて心にもないことをやらかしちゃう友だち、表面からは見えないけど、みんなそれぞれ様々なことを内側に抱えていることがわかる。そしてどの子どももどこかのタイミングでちょっとした勇気を発揮する。

愛情深い両親(ジュリア・ロバーツとオーウェン・ウィルソン、特にオーウェン・ウィルソン最高)もよかったけど、イジメに対しても毅然とした態度だった校長先生やホームルームの先生の、子どもたちに対する眼差しもとても優しい。

イジメっ子のジュリアンについての章がないのは、たぶん理由があって、ひとつは、ジュリアンにどんな事情があっても絶対にイジメはダメだということを伝えたいから、もうひとつは、ジュリアンにも物語があるんだけど、それを描くとオギーが主役の話ではなくなるから、だと思う。

実際、ジュリアンの話は『Auggie & Me: Three Wonder Stories(邦訳:もうひとつのワンダー)』という番外編として存在していて、あのお母さんが写真をPhotoshopした背景とか、ジュリアンは間違いを正せるかどうかというのが書かれています。この番外編もぜひ読んでほしい。


by rivarisaia | 2018-06-29 17:05 | 映画/洋画 | Trackback | Comments(0)

mini wonders~チェコのおもちゃ 昔と今

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広尾のチェコ共和国大使館にあるチェコセンター展示室で開催中の「チェコのおもちゃ」展に行ってきました。こじんまりした展示だけど、楽しかった!

「mini wonders~チェコのおもちゃ 昔と今」
会期:2018年5月23日(水)~6月22日(金) 平日10:00~17:00
会場:渋谷区広尾2-16-14 チェコ共和国大使館内 
   チェコセンター東京展示室

開いたトランクにおもちゃが展示されているのが面白いです。上の写真のブリキの電車のおもちゃは、センターの人が動かしてくれました。

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すっごくかわいいな!と思ったのは、このシリーズ。1930年代の木製おもちゃ。オーストリア=ハンガリー帝国から共和国として独立したあとの、そしてドイツに解体されてしまう前の時代。

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象の車輪にマイナスねじが使われてるのが地味にポイント。

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これは最近のアーティスト Michal Strach さんの作ったおもちゃ。車本体はせっけん。

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カタログも買っちゃった。パッケージを開くと、展示作品の写真と説明が印刷された大きなカードが一式入ってます。

by rivarisaia | 2018-06-13 21:51 | 展覧会ほか | Trackback | Comments(2)

The Risen

久しぶりのロン・ラッシュ。ラッシュの小説は長編より短編のほうが好きなんだけど、これは中編に近い。さくっと読めるけど、いつまでも苦いものが後に残る。

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The Risen』Ron Rash著、Ecco

1969年の夏。ノースカロライナの小さな町に暮らす16才のユージーンは、兄のビルと川で魚を釣っていたとき、裸で泳ぐ美しい少女を見かける。彼女はすぐに姿を消してしまい、幻か、それとも人魚かもしれない、などとふたりは言い合うのだけれど、少女は実在していた。

ライジーアと名乗る、フロリダからやってきたその少女は自由奔放で、兄弟を魅了する。

しかし突然、夏の終わりに彼女は旅立ってしまうのだった。

それから46年後。ユージーンはアル中の作家としてうだつの上がらない日々を送り、兄のビルは立派な外科医として成功した人生を歩んでいた。

ある日、川底から発見された古い死体の身元がライジーアだと判明し……


成績優秀で真面目な兄 vs 落ちこぼれ気味の弟、当時のヒッピーカルチャーの影響を受けた美少女、ひと夏のできごと、といった全体のモチーフはよくありがちで、少年時代を回想する構成もトマス・H. クックっぽいなと途中までは思っていたけど、事件の真相が判明してから最後のダメ押しまで、とてもロン・ラッシュだった。

最後のダメ押しというのは、ドンデン返しとか衝撃のラストなどではなくて、トドメを刺されたっていう感じ。ロン・ラッシュの小説は、書かれていないことを読んだり、書いてあることが暗にほのめかしてることから察するところが多いので、読み終わってから、もう1度最初に戻ると、見えてなかったことが見えてきてぞっとする。

誰が犯人かということよりも、過去の呪いを永遠に背負って生きていく話だった。小さな町の、独裁的かつ圧政的な祖父に支配されていた家族の物語。

ちなみに「ライジーア」は、エドガー・アラン・ポーの小説から来ています(本名は「ジェーン」という "つまらない名前" なのだった)。また「ユージーン」はトーマス・ウルフの小説の主人公から。

by rivarisaia | 2018-06-07 14:58 | | Trackback | Comments(0)