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ヘレディタリー 継承

1か月ほど、ここのブログを放置して何してたかっていうと、家のことと仕事と介護と切手と工作以外にNetflixみたり本読んだりNikeのアプリで運動したりと意外とせわしなくしていて、映画にも行きました。まずは話題のホラーです。

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ヘレディタリー 継承(Hereditary)』監督:アリ・アスター

怖い怖いって聞いてたから、夜遅くの上映に腰引けた状態で向かったんですけども、まったく怖くなかった。たぶん、ひっかかるところ(後述)が邪魔をしたんだとおもう。でも薄気味悪い一家のつくづく厭な話ではありました。

登場人物のしょうかい。

死んだおばあちゃんのエレン:夫と息子は精神を病んでとうに死んでる。
お母さんのアニー:ミニチュア作家。母や兄が精神を病んでいたこと、自分も夢遊病の気があることを心配している。
お父さん:いちばんまっとうな存在っぽいが、影が薄い。
長男ピーター:高校生。こまったときに逃げるタイプ。
長女チャーリー:13歳。ナッツアレルギー。絵を描いたり、工作も作ってる。

おまけ)
ジョーン:アニーが参加したサポートグループの人。

本当にこの家族、どこかおかしい。お母さんが制作しているものも、だいぶ変わってる(個人的には家のミニチュアが何かやらかす話と思ってました)。

婆さんが亡くなり、一家にさらなる悲劇が訪れ、どんどんおかしなことになるのだけど、途中まではうわあやだ〜と思っていた私も、ラスト近く畳み掛けるような展開に「いや、ちょっと待ってw」と笑ってしまった。

冒頭とラストのミニチュアと現実が転換する映像などは面白かったし、突然後ろから「ワッ!」とびっくりさせるような演出がなかったのは好感が持てるんですが、ただどうも納得いかないというか、重箱の隅なのはわかってるけど気になって仕方ない点があり、「コッ!」と舌打ちしながらいろいろ考えてみたり、ググってみたりしても、本筋と関係ないどうでもいいことのせいか、よくわからないまま。

そこで前置きはここまでとして、気になっていることについて、ラストに触れないと説明できないので、この後ネタバレをします。でも注意してください、心底どうでもいい話です。

これから本作を見る人は、ここでおわり。以下ネタバレです。

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冒頭、アニーは母親から遺されたペンダントをもらう。棺の中の母親も同じペンダントをしているし、それと同じマークは事故が起きるあの電柱にも描いてあった。

結局のところ、エレン婆さんは、そのマークが象徴するパイモンという悪魔を崇拝するカルトのリーダーだったことが発覚する。そして親切そうに見えたジョーンはエレンの右腕だ。エレン婆さんは力を手に入れるために、パイモンを蘇らせようとしたようだけど、そもそもパイモンは男性の体を欲していた。

おそらく過去にエレン婆さんは息子の体を提供しようとして失敗、息子の自殺はそのせいだ。そしてたぶんエレン婆さんの血筋を引く者でないとパイモンの容器として使えないのではないか。だからタイトルが継承だし、生きのいい成人の父さんは使えない。本当は最初からピーターがよかったんだろうけど、アニーがピーターを手放さず、エレン婆さんにはチャーリーが手に入った。

チャーリーがいつからそうだったのかはわからないけど、映画が始まった時点では中身がずっとパイモンだった。葬儀でチャーリーに微笑んでた人たちは、きっと「わしらのパイモンさん」という意味での会釈に違いない。ただまあチャーリーは女子であるがゆえに容器としては不具合で、ピーターを虎視眈々と狙っていたのであった。

ここまではいいとして。

本作のメインテーマは「家族」であって、悪魔云々は燻製のニシンみたいなものだとしても、それでもどうしても気になってしまうのはエレン婆さん(の魂)どこ行ったの?ということです。

エレンの首がない死体が出てきたときに、「は???」となったんですけども、女王とか言い出すから、いや、ちょっと待って教義的にどういう位置付けなのかきちんと説明しろ、そこのジョーン!と思っちゃった。

推測するに、容器から出て別の人に移るには、首を切る儀式が必要ってことではないか(だからアニーもあんなことになったんだよね、だってピーターの前にアニーに一瞬憑依したんだよね?)。しかしなぜわざわざエレンを墓から掘り出して首を切る必要があったのかな。エレンの魂を出して女王化する儀式かなんかしたのかな? その魂どこいったの?

大体、ツリーハウスにふわああんとアニーの身体が入っていったのは、あれは誰の力なのか。女王エレンか、それとももっと大いなる存在がいるのか。だってあのときのパイモンは寝起きのピーター状態で、そんな力発揮できたと思えないんですけど。

だったら余計なお世話だけど、パイモンよりも大いなる存在を崇めたほうがよくないですか。たとえばカトリックだとマリア様や聖人のことは「崇敬」はするけど、あくまでも崇拝の対象は神なんですよ。

まあ、曖昧な文句は唱えてたけど、最終的にどんな信条で何を目指しているのかいまひとつよくわからない教団だったしね……。肝心の復活だっていうのに、チャーリーの頭で作った像もすごい雑なデザインだったし(上からカトリック目線)。

中身がパイモンでも、外側は未成年のピーターなわけで、家族全員があんなことになったら、現実社会での対応だってけっこう面倒くさそう。カルトの人たち、ピーターが成人するまで待ったほうがよかったのでは。それとも交通事故の処理もすんなり終わったようだから、そこは大丈夫なのかしら。

ラストのピーターはボンヤリしてるし、チャーリーもダミアンのような邪悪さを発揮する気配がなかったせいか、大体からしてパイモンはやる気あるのか、そもそも本当にパイモンなのかと思ったのも事実。怖さでいえば、怒ったお母さんのほうがよっぽど悪魔的に恐ろしかったです。

ちなみにこの映画を一緒に観た夫が、見終わった直後に「珍作……」とつぶやいて「継承っていうか "パイモン準備" だね……」などと言うから、中盤の事故シーンとかすっかり印象が薄れちゃった。けっこう衝撃だったはずなのに。


# by rivarisaia | 2018-12-13 21:13 | 映画/洋画 | Trackback | Comments(0)

これを読まずして年を越せないで賞、今年もお楽しみに!

ハタと気づけばもう12月半ば。東京はついこの間までやたら暖かい日が続いていたので、そろそろ年末という気分にならないんですけど、年末です。

先週は「これを読まずして年を越せないで賞」公開トークが行われ、今年の候補作とメンションしておきたい作品についてあれこれ話せて楽しかったです(予定時間を大幅にオーバーしてしまって、すみません)。参加者のみなさま本当におつかれさまでした!

現時点での候補作の表紙写真をまとめて貼っておきます。

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(児童書で肝心の本が1冊抜けてた!!追記)
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最終審査はいつも通り年末に行う予定。今年は何が受賞するのか楽しみ!

おまけとして、イベントでメンションした作品。
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# by rivarisaia | 2018-12-12 12:54 | 映画や本の雑記 | Trackback | Comments(0)

The Truth as Told by Mason Buttle

全米図書賞ファイナリストに残っていて、評判いいので読んでみたら、なかなかよい本だった。話の展開はおおかた予想つくような内容かもしれないけど、主人とその家族、友人といった登場人物がよい。というか、読み終わってみると、みんな自分の知り合いみたいな感じになっちゃう。

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The Truth as Told by Mason Buttle』Leslie Connor著、HarperCollins

主人公のメイソン・バトルは大柄で汗っかきな少年。読み書きがほとんどできない。

15ヶ月前、メイソンの親友だったベニーが、メイソンの家の果樹園で亡くなっているのが発見され、そのことがメイソンの心に大きな影を落としている。メイソンの元へはしょっちゅう警部補がやってきて、ベニーが亡くなった日のことを何度も聞こうとする。メイソンは本当のことを話しているのに、警部補にはぜんぜん信じてもらえないのだ。

そんな彼にカルヴィンという名前の新しい親友ができる。ところがある日、カルヴィンまでもが姿を消してしまい……


という話。ベニーの死の謎やカルヴィンの行方など、ミステリー要素もあるものの、そこは奇をてらうような狙いはさほどなくて、おまけに中盤で少しのんびりした展開になるにもかかわらず、それでもメイソンとカルヴィンの姿があまりに生き生きと丁寧に描かれているので、ふたりがどうなるのか気になって一気に読んじゃった。

メイソンのおじさんにおばあちゃん、いじめっ子のお母さん、と出てくる大人に魅力がある(いやな警部補ですら、最後にはいい人な気がしちゃう)。その中でも特に学習障害があるメイソンを支える学校の先生が、脇役ながらもすばらしいキャラクターで、すべての学校に彼女のような先生がいたらいいのにと思っちゃう。余談としては、メイソンに共感覚があるのも面白い設定でした。


# by rivarisaia | 2018-11-14 10:57 | | Trackback | Comments(0)

プロジェクト・グーテンベルク(無雙)

今年の東京国際映画祭はこれで最後。


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プロジェクト・グーテンベルク(無雙)』監督:フェリックス・チョン/莊文強

タイで刑務所に入っていた偽造画家のレイ(アーロン・クォック/郭富城)が香港に護送されてくる。彼はかつて「画家」と名乗る男とともに米ドルの偽札を作る組織で働いており、「画家」に命を狙われていると怯えていた……

ということで、「画家」とは誰なのか、レイは一体何をしたのか、偽札の組織とは何なのか、というのを過去にさかのぼって見ていきましょう、というような流れですが、これ以上は言わないでおきます(公開されるかもしれないし!)。

とはいえ、途中でおよその展開は読めてしまったんですが、ですが! それでも最後、ひえええお前それはひどいよ……ってなりましたよね。考えれば考えるほど、あの人、ひどくない? あんまりだ。

ただ画家を演じるチョウ・ユンファ/周潤發が、二丁拳銃ぶっぱなして横に飛んだり、何から何までチョウ・ユンファ全開で、かっこよくて楽しめます。ユンファによるユンファ・オマージュのような場面の数々。あとね偽札の制作過程がものづくり的に面白いです。

# by rivarisaia | 2018-11-07 23:51 | 映画/アジア | Trackback | Comments(0)

氷の季節

19世紀デンマークの寒村で生きることに必死な人々を描いた映画なんですけど、けっこうあとからじわじわくる。
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氷の季節(Før frosten)』監督:マイケル・ノアー

19世紀半ば、デンマークの貧しい農村。これから冬を迎えるというのに、農民イェンスの家では食べるものもなく、厳しい冬を越すためには娘を嫁にやり、甥っ子たちを奉公に出すしかない。しかしそこに裕福な農家が取引を申し出てきた。家族のためにイェンスはある決断をするのだが、それは大きな代償を伴うことに……

上映後のQ&Aで、本作を制作するにあたり非常に綿密なリサーチを行ったと監督が言っていたのですが、そのリサーチに裏打ちされているためなのか、もう過酷すぎる19世紀半ばの寒村の生活が苦しいほど伝わってきて、途中でお腹痛くなりそうなほど。

イェンスは食べるものこそないけど、ある程度の土地は持ってるという自負があるので、そうそう自分を安売りしない(というかできない)。家族全員が生きのびるには娘を利用するしかないんだけれども、結婚相手を親の一存で変えられてしまう娘は、モノ扱いで気の毒な限り。唯一よかったなと思うのは、結果論ですけど、結婚相手の裕福な男性が、娘に対しては親切でやさしい紳士であるという点です。そこだけが救い。

ただし、イェンスは予期せぬ大きな十字架を背負うはめになり、教会に行くたびに良心の呵責に苛まれることになるのだろう。「この家にはネズミがいます」と言える奥方様くらいに、イェンスもしたたかな割り切った気持ちになれるなら別だけど。


# by rivarisaia | 2018-11-06 19:03 | 映画/洋画 | Trackback | Comments(0)

彼ら(Loro)

大好きな映画監督と大好きな俳優が大嫌いな実在の人物を描くというので、観たいような観たくないようなさんざん迷って観てみたら、すごいよかった。やっぱりソレンティーノは今回もソレンティーノ。

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彼ら(Loro)』監督:パオロ・ソレンティーノ

娼婦斡旋をしている野心家のセルジョは、ベルルスコーニ元首相に取り入ろうと画策する。そして4度目の首相の座を狙うベルルスコーニは、妻の愛情を取り戻そうとする。金と女と汚職にまみれてドロドロしたローマの政界と、やたらゴージャス極まりないけど空虚なサルデーニャの別荘。

若者セルジョのほとばしるエネルギーは、一枚も二枚も上手でしたたかな老獪ベルルスカにすべて吸い尽くされる。セルジョだけでなく、若さだけを武器に張り合おうとしてると、いろいろ奪い取られて気づいたら抜け殻みたいになっているのだった。虚飾にまみれた、魔物の棲家の政界怖い。

さて以下、内容(最初と最後の場面)に触れます。

本作の出だしは羊で始まる。ベルルスコーニの別荘の中に入ってきた羊が、エアコンの温度がどんどん下がって凍えて死ぬ。あれは一体何だったんだろうなと考えてて、途中で羊と同じようにベルルスコーニが家に入る場面があるので、ベルルスコーニ自身の運命を暗示しているのかなとも思ったのですが、でも。

映画のラストでは、ラクイラの地震で救助活動に励む名もなき人たちの姿が映し出され、崩れ落ちた教会からイエス様の像を掘り出す様子が描かれる。イエス様の像を見たときに、羊はきっとイタリアの国民を象徴しているんだなという気がした。知らず知らず状況が悪化しても動けずに死ぬかもしれない迷える羊。

タイトルの「彼ら」も、映画中盤で「彼らだって皆同じことやってるさ」と言われる政治家や、乱痴気騒ぎに明け暮れて政治家に取り入ろうとする彼らを指しているのかと考えたけれど、ラストでわかるけれども、権力争いに夢中になっている政治家たちからきれいさっぱり無視されている「国民」のことなのだ。

ずっと見てきたキラキラしたゴージャスなあれやこれやを一瞬で吹き飛ばす、まさに言葉を失うほど力強いラストシーンだった。

# by rivarisaia | 2018-11-05 20:59 | 映画/洋画 | Trackback | Comments(0)

トレイシー(翠絲)

今年の東京国際映画祭で鑑賞した映画のざっくりした感想を忘れないうちにアップしておきます。まず1本目。

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トレイシー(翠絲)』監督:ジュン・リー/李駿碩

眼鏡屋さんを営む51歳のダイホン(フィリップ・キョン/姜皓文)。娘は結婚してすでに家を出ているが、30年近く寄り添った妻(カラ・ワイ/惠英紅)と息子と飼い犬と平穏に暮らしていた。そこへ、学生時代の親友チンが亡くなったという知らせが入る。チンの遺灰を持って香港にやってきたのは、イギリスで彼と結婚したという青年ボンドだった。

十代の頃の思い出がよみがえり、動揺する主人公。そこには深いわけがあった。ダイホンは心の奥底では自分のことを女性だと感じていて、学生時代はチンのことが好きだった。しかし彼は自分が本当は女性だということをずっと隠したまま、結婚し、家族をなして、ここまで生きてきたのだった。

ところが若くて真っ直ぐなボンドに出会ったことによって、ダイホンは自分を偽ったままでよいのかと葛藤することになる。

もう50歳だしね……このまま自分が我慢すればいいのでは、と考えるダイホンなんだけども、ボンドが「人生80年として、残り30年もあるんだよ!?」というようなことを言うのである。で、私もこの時、そうね、Never too Lateですよね、と深く頷いたりいたしました。

フィリップ・キョンのふとした仕草が美しく、外側は中年男性だけど内面は女性という主人公を繊細に演じていました。

# by rivarisaia | 2018-11-04 19:16 | 映画/アジア | Trackback | Comments(0)