The Twelve Lives of Samuel Hawley

アクション&バイオレンス+クライム・サスペンス+謎の死にまつわるミステリー+父と娘のロードトリップ+ティーンの少年少女のロマンス+少女の成長物語……という、もりだくさんの1冊です。

「タランティーノのようなひねりの効いたプロット」という紹介文もどこかで読んだ気がする。それも一理あるかも。ページターナーで面白かった。

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The Twelve Lives of Samuel Hawley』Hannah Tinti著、Dial Press

いい意味で予想を裏切る展開だったので、詳細はあまり知らずに読むのをおすすめ。そこで、あらすじはざっくりとだけ書きます。身体に12の銃痕を持つ男 Samuel Hawley と彼の娘で聡明でタフな Looの話。

幼い頃に母親を亡くしたルーは、父親のサミュエルとともに各地を転々として暮らしてきた。やばい裏稼業に手を染めていた父親は、身の安全を守るため、ルーにも幼いうちから銃の扱いやサバイバルの方法を教え、ひとつの場所に長居することもしなかった。しかし、ルーも十代になり、そろそろ腰を落ち着けるべきではないかと、親子はある小さな港町に越してくる。

そこはルーの母親リリーの故郷だった。

ルーは高校に編入し、サミュエルは漁師として生計を立てはじめ、初めはよそ者扱いされていた親子も、いろいろな出来事を経てだんだん町の人々から受け入れられるようになる。長いこと友人ができなかったルーにもついに気になる存在の同級生があらわれたり、疎遠になっていた祖母(リリーの母)とも少しずつ歩みよっていったりする。しかし、サミュエルの過去がじわじわとふたりを追いかけてくるのだった

そもそも母親リリーの死は本当に事故だったのか。

そしてサミュエルの身体の12の銃痕にはどんな真実が隠されているのか。

おもにルーを中心にした現在の章と、第1の銃痕、第2の銃痕……という形で明かされるサミュエルの過去の章が交互に展開する構成になっています。

因果応報とはよく言ったもので、自らの行いにはそれに応じた報いがいつかやってきて、うまく切り抜けたつもりでいても必ず後で代償を払うはめになる。それなりに小さなツケを払いながら生きてきたサミュエルとルーも、前に進むために過去と向き合い、きっちりと清算しなくてはならなくなる時がやってくる。

バイオレンスに満ちているものの、どこかファンタジーのような雰囲気も漂っている。サミュエルが裏稼業で取引しているブツが麻薬などではなくて意外なブツである点も理由のひとつかも。

何度も切ない気持ちになりながらも、最後は何かを成し遂げた清々しい気分で本を閉じました。登場人物たちのその後が気になる〜。どうなったかな……。


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# by rivarisaia | 2017-09-13 22:22 | | Trackback | Comments(0)

Days without End

2016年コスタ賞大賞受賞作で、今年のブッカー賞ロングリスト入り。今年はけっこうブッカー賞リストの本を読んでいる……ような気がする。この本、なかなかよかったです。

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Days without End』Sebastian Barry著、Viking

19世紀半ば大飢饉に襲われたアイルランドから、カナダ経由でアメリカへ渡った17歳の Thomas McNultyが主人公。ゴールドラッシュからインディアン戦争、そして南北戦争のアメリカを生きたトーマスの半生を描いた話。語り手はトーマス。

ちなみに McNulty という姓の人々が、著者の他の本にも登場するんだけど(私は何冊かあるうちの『Secret Scripture』しか読んでない)、本書のトーマスはそんな McNulty家のご先祖のひとりだそうです。

家族も失い、命からがらアメリカへやってきたトーマス。時代はゴールドラッシュで、彼は女装して酒場で坑夫の男たちのダンスの相手をする仕事につく。その時に一緒に職にありついたのが、マサチューセッツから飢饉を逃れてやってきた John Cole だった。ジョンはトーマスにとって、唯一無二の親友、生涯愛する人、強い絆で結ばれた戦友となる。

成長して見た目が女として通用しなくなると、トーマスとジョンは軍隊に入り、インディアンとの戦いに赴く。血みどろの虐殺が行われ、インディアン側も騎兵隊側も容赦なく殺戮され、大自然は猛威をふるい、過酷な日々の連続。これはほんとうにつらい。

そんななか、彼らはわけあってスー族の少女ウィノナと暮らすことになる。軍隊を退き、新しい生活をスタートさせ、ウィノナはやがて娘のような存在になっていく。

しかし楽しき日々は南北戦争が勃発して終わりをつげた。トーマスとジョンは北軍に入隊、再び血なまぐさい戦いに巻き込まれていくのだった。

その後も彼らの人生は山あり谷ありで、そんなにページ数の多い本ではないのに、振り返れば最後まであまりに波乱万丈で、でも最後は希望の光が射している。

『Secret Scripture』では、アイルランドの歴史に翻弄された女性の人生を描いていたけれども、本書も主人公とともに、アイルランド移民、インディアン戦争、南北戦争という激動のアメリカ史をたどっていく。ただ、トーマスには歴史に翻弄されたという感じがあまりしない。

女性の格好でいるほうがしっくりくると感じているトーマスは、暴力にみちたマチズモ的な世の中に身を置きながらも、愛するジョンとともに平穏に暮らそうとする。ごく自然の成り行きなので読んでる最中はまるで気に留めてなかったけど、よく考えてみれば、今よりも自由が制限されていたとされる時代に同性カップルが家庭を築く話でもあった。

著者はこの本をゲイであることをカミングアウトした息子に捧げている。そのあたりはガーディアンの記事に詳しいので、参照までにどうぞ。そして今更気づいたけど、だから虹がかかってる表紙デザインだったりしたのかな。




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# by rivarisaia | 2017-09-05 18:53 | | Trackback | Comments(0)

News of the World

ちょうどテキサスが舞台の本の感想書こうとしていたら、ハリケーン・ハービーのせいでテキサスが大変なことに。今日、ヒューストン近郊の友人が「ようやく太陽が出た!」と喜んでいるので、このまま天気のよい日が続きますように。

テキサスが舞台の本は、これです。

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News of the World』Paulette Jiles著、William Morrow

南北戦争後のテキサス。退役軍人の老人Captain Kiddは、テキサス北部の町をまわって人々にニュースを読み聞かせる仕事をしていた。

ウィチタ・フォールズの町で、彼は10歳の白人少女を親戚の元へ送り届けるよう依頼をうける。少女の家族は4年前にインディアンのカイオワ族の襲撃にあって殺害されており、その後カイオワに育てられた彼女は英語も忘れてすっかりインディアンになりきっていた。

Captain Kiddは、何度も逃げ出そうとする上に言葉も通じない少女を連れて、彼女の親戚がくらすサンアントニオ近郊の町を目指すが……

道中さまざまな人たちに出会い、何度か危険な目にあいながらも老人と少女は旅を続けるのですが、目的地に到着した時、老人はさらなる決断をせまられることになるのでした。

そんなに長い話ではないし、結末もなんとなく想像できる展開ではあるんだけども、しみじみと心に残る話。実在の人物も登場するし、地図を見たり、時代背景を調べたりしながら読むと、開拓時代のテキサスについてなお理解が深まると思う。

たとえば、Kiddに仕事を依頼する Britt Johnsonは、テキサスで活躍していた実在の黒人のカウボーイ(詳しくはコチラをどうぞ。英語だけど写真もあります)。私は後で知ったんだけど、ジョンソンはコマンチとカイオワに誘拐された自分の家族を取り返したりしている(参照)。著者のPaulette Jilesは、ジョンソンを主人公にした小説『The Color of Lightning』も書いてます。

ランパサスのHorrell brothersも実在の人たち(詳しくはコチラ)。無法者といわれてるけど、「実際にはそうではなかったのではないか説」の研究書もあるみたい。

インディアンに誘拐されて育てられた子どもの話として著者が進めていた本は『Captured: A True Story of Abduction by Indians on the Texas Frontier』。これも興味ある。

本書に登場するカイオワに育てられた少女はドイツ系の移民で、実際テキサスにはドイツ系の移民が多い。旅の途中に出てくる Fredericksburg(フレデリックスバーグ、通称フリッツタウン)には私も何度か行ったことがある。何もないけど古い町並みが残る小さな町で、メインストリートにはドイツ系の名前の店が多く、レストランのおすすめはドイツ料理でメニューもドイツ語併記だったので、なるほどドイツ移民の町なんだな、と思った記憶があります。

フレデリックスバーグ、ハリケーン大丈夫だったかな。サンアントニオやオースティンあたりの内陸部は比較的大丈夫みたいだけど、東南部の海岸沿いがひどいことになっていて、ヒューストンのダウンタウンは広大な沼のようになってるんですけど、これはどうやったら水が引くの……。

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# by rivarisaia | 2017-08-30 23:02 | | Trackback | Comments(0)

They Were Like Family to Me

第二次世界大戦中のドイツ占領下のポーランドが舞台の、ホロコーストをテーマにしたマジックリアリズムな連作短編集。これがすごく、すごくよかった。じつは去年から気になってたのになんとなく読むのを躊躇してたけど、早く読めばよかった。

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They Were Like Family to Me』Helen Maryles Shankman著、Scribner

最初は『In the Land of Armadillos』というタイトル(右の表紙)で出版された本。全部で8つの話を収録。

ユダヤ人の絵本作家に子供部屋の壁画を描かせるSSの将校、パルチェフの森に潜むパルティザン、森林地帯に身を隠す人々、ふらっとやってきて「人を救うのもうやーめた」と宣言する救世主、ある日突然現れたゴーレムらしき謎の男……

ウォダバという小さな町の、ポーランド人、ユダヤ人、ドイツ人たちのおはなし。すべてに共通して登場するカギとなる人物がドイツ人将校 Reinhartと、鞍作り名人のユダヤ人 Haskel Sorokaのふたり。

世界はこんなにもカラフルで美しいのに、人間はどこまでも非道なのだった。気持ちが和んだのも束の間、はっと息が止まるほど絶望的な瞬間がふいにおとずれる。読んでいて「あっ!」と思わず口にしてしまうほど。

どの話も、善と悪、真実と嘘がはっきりと区別できない曖昧な境界の上にあって、それぞれ心に刻まれるんだけれども、特に印象深いのが、ユダヤ人をドイツ兵に密告しまくっていた男が仕方なくユダヤ人の少女を匿うはめになる「The Jew Hater」と、シンドラーのようなドイツ人将校 Reinhartを主人公にした「A Decent Man」のふたつ。

Reinhart は「彼のもとで働くユダヤ人は命を守ってもらえる」と評判の、みんなから愛される男。「情け深い」彼は、自分の地位と権力をおおいに利用してユダヤ人たちの命を救うと心に誓う。一見、好ましい人物に見えるけれども「ユダヤの救い主」たらんとしている彼には傲慢さはなかったか。

「A Decent Man」の中で、Reinhart が警察隊をもてなす場面が出てくる。「ハンブルクから来た」という警察隊の男性がユゼフフでの任務の話をすることからも、彼らはまさしく先日の『普通の人びと』の第101警察予備大隊なのだった。

また「The Jew Hater」と「A Decent Man」に共通して出てくる「話す馬ファラダ」は、グリム童話の「ガチョウ番の少女」に登場する馬がモチーフ。

巻末の著者のエッセイによれば、どれも両親や家族の経験談がもとになっており、Reinhart にもモデルがいた。おとぎ話のようなマジックリアリズムを取り入れたのは、恐ろしい現実から距離をおいて、私たちがもうすでに知っている事柄を新しい視点でとらえるため。おとぎ話というのは、人々に警告を伝える役割があって、またいつまでも忘れないために語り継がれていくものだから。

●収録話
In the Land of Armadillos
The Partizans
The Messiah
They Were Like Family to Me
The Jew Hunter
The Golem of Żuków
A Decent Man
New York 1989




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# by rivarisaia | 2017-08-24 23:54 | | Trackback | Comments(2)

普通の人びと―ホロコーストと第101警察予備大隊

『コール・オブ・ヒーローズ』の感想でふれた本で、今のところ絶版みたいだけど、読み継がれるべき1冊。文庫化するか電子版を出すかしてほしい。

「普通のドイツ人が、いかにして史上稀な大量殺戮者に変身したのか」を膨大な史料に丹念にあたって浮き彫りにした本。ちなみにここでの「普通の人びと」は男性ですが、「普通の女性」のケースについては『ヒトラーの娘たち――ホロコーストに加担したドイツ女性』(ウェンディ・ロワー著、明石書店)をどうぞ。

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普通の人びと―ホロコーストと第101警察予備大隊』クリストファー・ブラウニング著、谷喬夫訳、筑摩書房

警察予備大隊の構成員というのは、あくまで警察の予備として急遽収集された一般市民であり、軍人ではなかった。

およそ500人の隊員からなる第101警察予備大隊も、上に立つ少数名のナチ党員やSS隊員をのぞけば、ほとんどが運送業や材木屋、教師、事務員、船員、セールスマンといった、「普通の人びと」である。年齢層は高め、ナチス・ドイツ以前の教育を受けており、格別にナチスの思想に傾倒していたわけでもない、主にハンブルク出身の一般労働者。

1942年、第101警察予備大隊はポーランドに派遣される。そしてそこで2年間にわたりこの「普通の人びと」は虐殺に加わっていくことになるのだった。

一番最初の「任務」では、隊長であるトラップ少佐が、涙を浮かべながら内容を説明した上で参加したくない者は申し出れば処罰なしで任務から外すと言うのだけれども、ここで辞退した者は10名ほどしかいない。

そしていざ銃殺が始まるとトラップ少佐は現場には来ず、小屋の中で泣きながら神に祈っていた。「現場」では、殺すのが嫌でこっそり隠れた者、耐えきれず途中で任務を外してもらった者もいたけど、残りは命令に従ってひたすら殺し続けた。とはいえ、初めての任務はかなり凄惨なことになり、隊員のほとんどは精神的に参ってしまう。

ところが、彼らはその後も虐殺任務を手がけていくうちに、だんだん手際もよくなり、精神的にもすっかり順応してしまう。

馴れって怖い、というレベルを超えて人は物事に馴れる。おびただしい人数をトレブリンカ絶滅収容所へ送り込むという移送作業も、隊員たちはじつに心穏やかに取り組むことができた。だって、自分たちが手を下すわけじゃないからね。1943年の「収穫祭作戦」と呼ばれる大虐殺が彼らにとって最後の任務となった。

著者ブラウニングは、最後にこう書いている。

「殺戮した者は、同じ状況に置かれれば誰でも自分たちと同じことをしただろうとして、免罪されることはありえない。なぜなら、同じ大隊員のなかにさえ、幾人かは殺戮を拒否し、他の者は後から殺戮をやめたのであった。人間の責任は、究極的には個人の問題である」

それはその通りだけれども、

「大量殺戮と日常生活は一体となっていたのである。正常な生活それ自体が、きわめて異常なものになっていたのである」

という状況で、「絶対に嫌です、やりません」とはたして私たちは言えるかどうか。これは自分本位な性格というか他人の目をまったく気にしない性格かどうかが大きい気もしてきた。最初あんな泣いてたトラップ少佐だって、しまいには順応してるわけで、心が優しいかどうかはきっとあまり関係ない。

自分が任務を拒否することは、汚れ仕事を仲間にやらせることであり、「それは結果的に、仲間に対して自己中心的な行動をとることを意味」していた。ときに正義を貫くには、周りから独善的だ、弱虫だなどと侮辱されても無頓着でいられる強さが必要かもしれない。

第101警察予備大隊が射殺したユダヤ人の数は、1942年7月から1943年11月の間に総計38,000人、トレブリンカへ強制輸送したユダヤ人の数は、1942年8月から1943年5月までで、総計45,200人だった。



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# by rivarisaia | 2017-08-21 22:19 | | Trackback | Comments(0)

Himself

なんだかどう評価していいのかよくわからなかった本だけど、時間が経ってから、いくつかの場面や登場人物たちのことを懐かしく思い出すので、思ったよりも良い本だったのかも。

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Himself』Jess Kidd著、Canongate Books

表紙はUK版とUS版の2種類。私はUK版が好き。

アイルランド。1950年、赤ん坊を連れた少女が森で殺される。
そして1976年、Mohonyという26歳の青年がMulderrigの小さな村にやってきた。彼は赤ん坊の頃に自分を捨てた母親を探しにやってきたのだ。

という話で、そうか、主人公の過去と昔の殺人事件にまつわるミステリーなのね、と読者である私は思うわけですが、この本がちょっと、というか、かなり変わってるのは、

村には幽霊が満ち満ちていて、主人公には霊が見える。

というところ。あちこちに幽霊だらけ。猫が死ねば、猫の霊が体から抜けて生きてるときのように路地を歩いていくし、書斎にいる老婦人のそばをかつての恋人がふわふわうろついてたりする。パブに行けばそこにも幽霊がいるし、道歩いててもそこに霊がいる。

なんだこの話……。

かつてこの村に住んでいた主人公の母親は、一応は行方不明ということになっているのだが、どうやら村にとって厄介な存在だったらしい(あとでどのように厄介だったのか判明するけど、そりゃ困るね……)。主人公は、かつて舞台女優だった老婦人、Mrs. Cauleyの協力を得て、失踪した母親の謎を探っていくんだけれど、Mrs. Cauleyの立てた作戦はともかくとして、彼女自身はとても印象深いキャラクターで、本書の中で一番好きかも。私はMrs. Cauleyと茶飲み友だちになりたいです!

さて読み終わってみると、いくつかの謎が謎のまま終わった気もするし(Mohonyの父親が誰だったのか、もわからないままじゃないですか?)、ミステリーというよりマジックリアリズム小説といったほうがしっくりくるかも。幽霊はたくさん出てくるし、過去の事件は暗い話だけれど、陰鬱とはしてなくて、ちょっと陽気なところもある話です。




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# by rivarisaia | 2017-08-12 18:46 | | Trackback | Comments(0)

Man V. Nature:シュールでダークで居心地が悪くなる短編集

シュールでダークで居心地が悪くなる話が12編詰まった短編集。夏のビーチでの読書にはあんまり向かない。夜に読むのはおすすめ。

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Man V. Nature』Diane Cook著、Harper

表題作は、魚釣りに行ったはずがなぜかゴムボートで漂流するはめになった三人の男性の話。幼い頃から仲良しの三人組と思いきや実際は……という事実が漂流中に徐々に明らかになっていって、なんともいたたまれない心持ちに。

配偶者を亡くした者は新しいパートナーをあてがわれるまで強制的に施設に収容されるという、ちょっとアトウッドっぽい「Moving On」、洪水で2軒だけ家が残された世界の話「The Way the End of Day Should Be」、産んだばかりの子どもを謎の男に奪われる恐怖を描く「Somebody's Baby」、一歩でも外に出ると襲撃される世の中で、主人公は強い男と結婚し巨大な赤子を生むんだけれども……という「Marrying Up」など、全般的にディストピアな話が多いのですが、どの話も私たちの不条理な社会や日常に潜む不安や無力感、欲望や葛藤を暗喩していると考えると、いくらでも深読みできて、それぞれの話が意味するところをじっくり反芻するととても楽しいのでおすすめです。

コミカルで異色だったのは、人を食い殺すモンスターが襲来し右往左往するエグゼクティブたちを描いた「It's Coming」(これたぶんタイトルはシャレになってるのでは?)。

そしてゴールディングの『蝿の王』を思わせる「The Not-Needed Forest」のラストには戦慄しました。10歳になって社会的に不要とされた少年たちが、装置に入れられてどこかの森に送られるんだけど……という話。途中まではありがちと思っていたけど、最後の最後で、え、そういうことかとわかった時に「うわー」と背筋凍った。地味に怖い。



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# by rivarisaia | 2017-08-03 19:01 | | Trackback | Comments(0)

見たもの読んだものについての電子雑記帳


by 春巻まやや
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