タグ:映画 ( 690 ) タグの人気記事

ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書

とりあえず報道に関わる人たちは全員、心の帳面にびっしりメモする勢いで観とけ!という作品ですが、私はこの映画を観ながら今の日本社会における女性は50年前のアメリカと似たような状況なのかな?とうすらぼんやり考えていました。とにかくメリル・ストリープがとても上手い。

b0087556_23411053.jpg

ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書(The Post)』監督: スティーヴン・スピルバーグ

ベトナム戦争が泥沼化していた1971年、国防総省が作成していたベトナム戦争に関する機密文書である調査報告書の一部をニューヨーク・タイムズがスクープ。

政府が国家の安全保証が脅かされるとして記事の差し止めを請求するなか、ワシントン・ポストでは編集主幹ベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)が残りの文書を入手して公表しようと奔走、そして社主のキャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)は社運をかけた重大な決断を迫られる、という話です。

ベン・ブラッドリー率いる編集チームは(かっこいい女性が一人いる)気概があって、政府の圧力?そんなもん知るか!というメンタリティで、任せておけば安心できそうだからいいんです。しかし、キャサリン(ケイ)・グラハムはどうだろうか。

上流階級のお嬢さんで専業主婦だったケイは、夫が自殺したために46歳でワシントン・ポストの経営を継いで社主になる。なるんだけれども、経営陣、投資家など周囲は男性ばかりで、ビジネスの経験もないケイは頼りないと思われて、経営パートナーの一名を除けば、まともに話を聞いてくれる人もいない。そうした状況で、経営が不安定な一地方紙だったポストをなんとか軌道に乗せていかなくてはならず、そんな時に、編集以外が全員が反対する中で、この「重要機密文書を紙面で報道する」という決断を下すことになるのだった。

自信なさげなケイが悩みに悩んで決断するところで胸が熱くなるんですけども、どんなに大変なことだったのかみんなわかってんのかな、と私が内心思っていたところで、ベン・ブラッドリーの妻が「ケイは勇気がある。女性だし、判断力もないと周りから見下されている中で、すべて失うかもしれないのに。あなたとは決断の大変さが全然違う」という意味のことを夫に伝えるところで「わかってる人いた!!」と泣いたよね……。

重要な場に行ったら、まわりが全員男性ばっかりで、女性はなんだか小馬鹿にされたような態度取られるとか、いまだにあるあるすぎて見につまされるわけですよ。

余談ですが、この映画はスクリーンにどどーんと「マイナスねじ」が大写しになります! まあメインはマイナスねじというよりも輪転機だけど。それから気送管もちょこっと活躍する。輪転機(とマイナスねじ)や気送管はやっぱりいいなあ。



[PR]
by rivarisaia | 2018-04-16 21:58 | 映画/洋画 | Trackback | Comments(0)

シェイプ・オブ・ウォーター

デル・トロ監督、よかったね! 作品賞と監督賞などなど、ほんとにほんとにおめでとう! 今回は日本版のポスターもこのイラストを採用してとてもよかったと思います。

b0087556_18155700.jpg
シェイプ・オブ・ウォーター(The Shape of Water)』監督:ギレルモ・デル・トロ

60年代初頭のアメリカ。障害があって言葉を話すことができないイライザは、政府の研究施設で、夜間に清掃員として働いている。ある日、研究施設に南米から謎の生きものが連れてこられた。イライザはその生きものに興味を持って……

という話。ざっくりとした展開はたぶん誰もが想像する通りの流れなんだけれども、「いまの世の中を映し出した寓話」として映画をふりかえってみると、私たちのくらす社会が抱えている問題(移民、貧困層、失業者、人種差別、ジェンダー、性的少数者、強大なシステムと従わざるを得ない人や虐げられる人、使い捨てにされる人など)がいろいろな形で映画の中で描かれていて、しみじみと泣けてきちゃう。

イライザの隣人の絵描きのジャイルズさんが、仕事で命じられて描いている「理想のアメリカの家庭」があるんだけれども、それは本当にイラストの中にしか存在せず、世の中は青でも緑でもなく、なんか曖昧なその中間の色のティールにどんよりと覆われていて、みんなそんなどんよりした色の世界でくらしている。

悪役であるところのストリックランド氏ですら例外ではなく、表向きは絵に描いたようなアメリカ中流家庭の人のようでありながら、実際には失敗したらセカンドチャンスもないまま切り捨てられるような世界で傷口を腐らせながら生きているのだった。つらい。

わたしは『パンズ・ラビリンス』は悲しいハッピーエンドだったと思っているけど、今回はそれよりは悲しさが少し薄らぐ感じのハッピーエンドで、ただしかし、このティールな世界に残されて生きていかないといけない人たちのことを考えると、ひたすらに切ない。みんなにいいことあるように、ゼルダとジャイルズに幸いあれと願うばかりです。




[PR]
by rivarisaia | 2018-03-07 18:59 | 映画/洋画 | Trackback | Comments(2)

スリー・ビルボード

脚本がお見事で、すっごく面白かった。かなり酷いことや悲惨なことが起きるし、怒りと悲しみに満ち満ちているんだけれども、すべてをひっくるめて笑いを交えてさらっと描きつつ、物語も登場人物の造形も予想外のほうにひっくり返っていく。オセロみたい。あるいはチェスかも。

b0087556_22374921.jpeg
スリー・ビルボード(Three Billboards Outside Ebbing, Missouri)
監督:マーティン・マクドナー

ミズーリ州のエビングという小さな田舎町。7カ月前、娘をレイプされて殺されたミルドレッド・ヘイズは、いまだに犯人をつかまえられない警察に腹を立て、道路脇の3枚の立て看板に広告を出した。

「レイプされながら死んだ」「逮捕はまだ?」「どうして、ウィロビー署長?」

看板を見たディクソン巡査から報告を受けたウィロビー署長は、ミルドレッドのもとを訪れ、捜査の状況を説明するものの、彼女の怒りはまったくおさまらない。

人情味にあふれ誠実な性格のウィロビー署長は、署内のほかの警官からも、町の人々からも信頼され、愛されているということもあり、多くの人々の怒りはミルドレッドにむかう。そしてある日、衝撃的な事件が起き……

3枚の立て看板が象徴するのは、ミルドレッドとウィロビー署長とディクソン巡査。看板にはハッキリと大きな文字でメッセージが書いてあるけど、裏側からはそのメッセージはまったく見えない。看板の表と裏がまったく違うように、3人の人物も、外側からみえる部分と内面は全然違う。

特にびっくりさせられたのはディクソン巡査で、この人は南部にいる典型的な差別主義者のアホのカリカチュアなんだけれども、こいつがいろいろやらかすたびに私はむかついていた。ところが後半、気づいたらミルドレッドよりもむしろディクソンの話になっていくにつれ、許せないことをしたディクソンだけど、これからやりなおせるかも、がんばれ、という手に汗握るような気持ちになってしまったのだった。

人間は怒りに目がくらむと、ますます物事の本質が見えなくなり、勝手な思い込みで、とりかえしのつかないことをしでかしたり、どんどん悪いことを引き寄せてしまったりする。ディクソンだけでなく、ミルドレッドもそうで、怒りを身にまとっているために、自分には味方がいることも全然みえていない。

そう思う通りに進まないのが人生なので、なかなか報われることなく、絶妙なところで話は終わる。あのあとどうなったかな、とときどき考えるんだけど、マクドナーがそのまま続きを撮ったらすごくブラックな展開にしそうだけど、それだと切ないので、明るい展開も想像したりした。

例のふたりはヤツをボコボコにするかもしれないけど、きっと殺さない。で、もしかするとアイツは真犯人の手がかりを知ってるかもしれない(自分も似たようなことをやったんだろうけど、真犯人から詳細を聞いたのかもしれないじゃん?)。それから、ミルドレッドにはデートのやり直しをしてほしい。いやなら無理にとはいわないけどさ。



[PR]
by rivarisaia | 2018-02-07 22:44 | 映画/洋画 | Trackback | Comments(0)

バーフバリ 王の凱旋

もうみんな、王を称えた!? 昨年末、王を称えて一年を締めくくり、新年は王を称えて迎えた人たちもたくさんいらしたと思いますが、私もようやく先週2回ほど王を称え、燃えたぎる神聖な炎で魂を浄化しました!! おかげで心身ともにエネルギーに満ちてきた。 バーフバリ! バーフバリ!


神話の映像化とはこういうものなのか……!と心がうち震えたよね。


b0087556_11374645.png

バーフバリ 王の凱旋(Baahubali 2: The Conclusion)』監督:S・S・ラージャマウリ


古代インドのマヒシュマティ王国で名を轟かせた伝説の王バーフバリの物語。


国民から愛され絶大なる支持を得ていたのにもかかわらず、暴君バラーラデーヴァにその地位を奪われたアマレンドラ・バーフバリ。彼の生い立ち前半と、その息子マヘンドラ・バーフバリの生い立ちを中心にした話が、日本で昨年公開された『バーフバリ 伝説誕生』でした。


続きものなので、前作を観てないと話がわからないと思うのは当然なのですが、今回、上映前に5分でわかる前作ダイジェストがあるので(流れない映画館もあると聞いたので、下にはっとく)、それさえ観ておけばまったく問題なく話についていけるから大丈夫。いずれにしても観終わってから『伝説誕生』も観よう!ってなるだろうし、そうすると『王の凱旋』もまた観たくなるというループになるとおもう。


私は前作を観て数時間後に『王の凱旋』を観たんですけど、前作はまさかの壮大な前フリだった……というか『王の凱旋』があまりにすごすぎて度肝を抜かれ続け、前作の記憶が消し飛んだ。だって、開始早々クライマックスで、そのあとも休みなくずーっとクライマックスに次ぐクライマックスで、映画が終わってハッと我に返ったら2時間半近く経ってた。びっくりするくらい時間の長さが気にならなかったんですけど、これが恐るべし偉大なる神話の力か……。


王者バーフバリ(父&息子)はもちろん、王家に仕える奴隷剣士カッタッパはじめキャラクター全員がすばらしく、中でも国母シヴァガミの眼力とバーフバリ父のお妃デーヴァセーナの最強の戦士っぷりがさいこう。


デーヴァセーナは相手が国母だろうが、王だろうが、権力に怖気づくことなく言いたいことはハッキリ言う。積年の屈辱にも耐えに耐え、生首を放り投げで不敵な笑みを浮かべ、炎を頭上に頂き満願成就する、デーヴァセーナ妃! 万歳!!!


ポスターにもなっている、バーフバリとデーヴァセーナが共に弓を射るシーン、大好き。思い出すだけで、幸せだ。


映画のこと何も書いてないに等しいけど、とりあえず今回はこの辺で。王を称えたという報告でした。


前作のあらすじダイジェストをはっておきますね。まだ称えてない人はさっそく王を称えに行ってー。





そして今回の予告はこちらです。映画を観たらわかるけど、本編すごすぎてこんなものではなかった……









[PR]
by rivarisaia | 2018-01-15 12:07 | 映画/アジア | Trackback | Comments(4)

スター・ウォーズ/最後のジェダイ

観てから1か月くらい経ってる気がしてるし、それどころかすでに10回以上鑑賞した気にもなってるけど、ぜんぜんそんなことはなくて、2週間前に劇場で観た、というだけなんですが、何度も何度も反芻しちゃう。
b0087556_18460937.jpg
スター・ウォーズ/最後のジェダイ(Star Wars: The Last Jedi)』監督:ライアン・ジョンソン

本当はもう1回観に行きたいけど、これは難点として、やっぱね、尺が長いです。

今回、文句があるとしたら、私の場合は2つなんですけど、そのうちの1つが上映時間の長さ。スター・ウォーズのシリーズは、自分がそうだったように、ちびっこにもみてほしいから、できれば今後は2時間以内におさめてほしいです。

あと、基本的に私にとってスター・ウォーズは歴史的事実と同等であり、描かれている内容が気にいるとか気に入らないとかナイ。だって、遠いギャラクシーで起きた現実なんだから。ジャー・ジャー・ビンクスだって、好き嫌い抜きにして全面的に受け入れる構えです。

さて。

冬休みに鑑賞する人も多いと思うので、以下、あいまいにぼやかした感想です。

本作は賛否両論だの、衝撃だのと言われているけれども、激しく文句言っている人の意見をみにいくと、ほとんどがズレている感じで同意できない。上映時間の長さ以外で、内容的に私がもやもやする箇所は、

「ハイパードライブのあの使い方はアリ?」

の1点です。全体的にタイムラインがいまひとつよくわからない構成になってたり、レイア姫メアリー・ポピンズ状態の件も「うーん?」と首かしげたけど、後者は火事場の馬鹿力ならぬ火事場の馬鹿理力かな?と思います。

でも、あのハイパードライブがアリだと、デス・スターであんな苦労することなかったじゃんね……。ドロイドを無情に酷使できそうな帝国もファースト・オーダーも無敵になっちゃいそうだしな…………。

しかし、現実に起きてしまっている事実を受け入れないといけないので、一生懸命に海外のディスカッションとか見てるんですけど、納得いく意見が少ない。みんながんばって理屈を探しているので、私も考えてみるね。

ちなみに「今まで誰も思いつかなかっただけ!」という意見が優勢だけど、いや、でもそれはちょっとなー。ということで、この件については、引き続き検討していきたい。

しかし、今回は見事にルークの物語で、私はルークの最後のあれやこれやには鳥肌たちました。すごい。あんなの想像もしなかった。そして、文句を言う人も多いローズとフィンのパートですが、ここもう少しうまく編集できた気がするのは確かだけど、エピソードとしては、いっちばん最後の重要な場面につながるからね。そして私は、今回の最後の場面はとてもよかったと思ってる。

唯一、ローズのロマンス的要素だけは、すっごい余計でした(もっと仲間的な結びつきを期待しました。まだまだSWは『パシフィック・リム』や『マッドマックス 怒りのデス・ロード』に追いつけていません! がんばって!)。しかし、ローズ自体は愛嬌があってとてもよいキャラクターでしたよ。私は好き。




[PR]
by rivarisaia | 2017-12-27 19:14 | 映画/洋画 | Trackback | Comments(0)

否定と肯定

アーヴィング対ペンギンブックス・リップシュタット事件の映画化。
b0087556_18402034.png
否定と肯定(Denial)』監督:ミック・ジャクソン

ユダヤ人歴史学者デボラ・E・リップシュタットが、ホロコースト否定論者のデイヴィッド・アーヴィングに名誉毀損で訴えられた裁判を描いた映画。

この裁判は、ホロコーストがあったことを証明するのが争点なのではなくて、ホロコーストがあったことは明らかであるからゆえに、歴史家のアーヴィングが、ホロコーストがあったことを知りつつも、自分の都合のいいように嘘を述べていることを証明すること。

わかりにくいかもしれませんが、重要なことです。

裁判を受けて立つことになった当初、リップシュタット教授は、否定論者に真っ向から立ち向かおうとします。自分も証言するし、アウシュビッツの生存者にも証言してもらおうと考える。でも、弁護団にそれは絶対にダメだと固く禁じられる。

ホロコーストがあったことは事実なので、事実を否定する人と対等に議論してはいけないのです。なぜなら、否定論と肯定論をならべてしまうと、まるでふたつの可能性が存在するかのように錯覚させることができるからで、それが否定論者の狙いでもあります。

事実をもとに、細かい部分を検証するのはいいのです。でも根本の事実を否定する論説を、絶対に絶対に対等に扱ってはならない。というのが、この映画を観るとしみじみ伝わってきます(でも邦題や映画の公式サイトはちゃんと理解されてないみたい)。

リップシュタット教授の代わりに弁論を行うのは法廷弁護士リチャード・ランプトン(トム・ウィルキンソン)であり、教授は自分の裁判で勝つために沈黙を守る。

あきらかに好き勝手なこと(おまけに間違っている)を言ってくる相手を前に、ひたすら黙っていなくてはならないというのは苦痛だったろうし、その方針にはじめは苛立っていた教授だけれども、ランプトン弁護士を信頼して一切を任せることにするのだった。

人数が違う、書類が残っていない、写真がない等々を引き合いに出したり、生存者の記憶のあいまいなところを利用したりするところなど、否定論者はどこも似たりよったりですが、とにかく議論の相手にしてはだめ、というのは肝に銘じたいところ。

アメリカの法廷物を見ることが多いので、事務弁護士と法廷弁護士でチームを組むイギリスの法廷はなるほどと思うこともあって、興味深かったです。



[PR]
by rivarisaia | 2017-12-19 19:18 | 映画/洋画 | Trackback | Comments(0)

女神の見えざる手


b0087556_22303731.jpg
女神の見えざる手(Miss Sloane)』監督:ジョン・マッデン

大手ロビー会社で大胆な戦略を武器に活躍していたエリザベス・スローンは、銃規制反対派についた自社の仕事を蹴って、「規制法案」を通すべく小さな会社に移り、元の会社(および巨大な権力)と対決する。味方も欺き、利用する彼女のやり方にはチームから反発も出るのだが、勝利を目前したとき、不正疑惑で彼女自身が聴問会にかけられることに……

観ている最中はぐいぐいとスピードで押し切られて面白かったんだけど、もう1回観たら果たしてどうかなーと思うところもなきにしもあらず。それはたぶん、「銃規制」は小道具にすぎず、あくまでこれは「ミス・スローンの話」だからで、繰り返し観ると物足りなく感じるかも。

ただ、ミス・スローンの、手段をとわず一人孤高に戦うその戦いっぷりは、彼女の行動に共感できないところがあったとしても、感嘆せずにいられないところ。

相手が最後の切り札を切ったあとで、自分の切り札を出す、とミス・スローンは言っているので、当然聴問会でもミス・スローンがぐうの音も出ないネタを出してくるだろうなというのと、途中で「Bug」の話が出たときに絶対仕掛けてる!と思ったので、最後の展開は予想通りだったんだけども、密偵を残してたところにびっくりしました。それ想像してなかったー。驚いた。

最初のほうの一見他愛もない会話で、ミス・スローンがソクラテスの話をするんですが、それがすごく気になっていて、あとでつらつらと考えたんだけど、ソクラテスといえば倫理かな?と思ったんですよ。

ミス・スローンは、個人的な感情や利益抜きにして、倫理的に銃は規制すべき、と考えていて、そこはゆるがないわけだし。

でもそのあとで、そういやソクラテスって裁判にかけられて、有名な反論(ソクラテスの弁明)をするじゃない。結果的には有罪になるんだけども。聴問会にかけられて、最後がっつりと民主主義や正義をふみにじる巨悪なシステムに反論して、ただ有罪にはなっちゃう……って、ミス・スローンのまんまじゃないですかー。

想像ですけど、ミス・スローンは、電話でソクラテスの話を聞いた時に、最終的に自分が訴えられて罪をひっかぶるところまで計算済みだったんじゃないですかね。密偵のあの人は、どこまで計画知ってたんだろ。映画には映らないふたりのやりとりとか知りたい。

本作は、銃規制についての話ではないけど、職業倫理の話ではあるなと思いました。大手ロビー会社や議員の人たちは、倫理もへったくれもないんですが、ミス・スローンはじめ弱小ロビー会社、スローンの密偵など、倫理を貫く人たちもいる。なかでも印象的だったのは、エスコート・サービスの男性。職業上知りえた秘密は絶対にバラさない。

彼に関してだけは、ミス・スローンは計算外だったかもしれないね。


[PR]
by rivarisaia | 2017-12-11 22:31 | 映画/洋画 | Trackback | Comments(0)

おクジラさま ふたつの正義の物語

ハーブ&ドロシー』の佐々木芽生監督が手がけた、捕鯨をめぐるドキュメンタリー。家人がクラウドファンディングにちょこっと協力していて、楽しみにしてました。でも、なんだかんだで観に行くのがギリギリになり、感想書くのも遅れちゃった。

b0087556_23165815.png
おクジラさま ふたつの正義の物語』監督:佐々木芽生

『ザ・コーヴ』がアカデミー賞を受賞したことをきっかけに、いきなり”捕鯨問題”の中心地となってしまった、小さな漁村・太地町。農作物もうまく育たない土地で人々は昔から捕鯨に頼ってくらしてきたという歴史がある。戦後の食糧難の時期も、GHQの認可を得て鯨肉で飢えをしのいだ。代々、鯨漁で生計を立ててきた漁師も多い。

静かで穏やかだった田舎の町は、ある日突然世界からの非難の的になってしまった。

小さな町に反捕鯨運動の活動家たちが世界中からやってきて、カメラで撮影し、インターネットでバンバン情報を発信していく。

当然ながら町の人たちは困惑するのだが、うまく対処できない。自分たちなりの意見があっても、それを上手に世界に向けて発信することもできない。両者の溝は深まるばかり。

唯一、片言の英語でシーシェパードとコミュニケーションを取っているのは、街宣車を乗り回している右翼のような男性だけ。これはとても意外で、「考え方は違うけど相手のことを尊敬してるし、意見が違うなら話し合えばいいじゃないか」と主張していたのはこの人だけだった。

真っ向から意見が対立する相手を尊重するというのは、とても大切なことなんだよね。それができないと議論は成立しない。

佐々木監督は、じつにさまざまな立場の人々の、それぞれ異なる主張をカメラにおさめていて、俯瞰してみると、どちらの言い分もそれぞれに納得できるところとできないところがある。最終的には話し合って、おとしどころを探っていくしかないんだけれども。

この映画は「捕鯨」についてだけど、対立する世界について考えるドキュメンタリーでもあり、これと似たような構図は世界のどこにでも見られる。だから、どちらの意見が正しいかという単純な答えはこの映画では提示されない。

やがて年月が経ち、かつては伝統捕鯨の技術の継承が話題の中心だったけど、現在は鯨肉に含まれる水銀の量が問題になっている。鯨肉自体も売り上げが落ちている昨今、太地の人たちも鯨とのこれからの関わりについて考える時にきているのかもしれない。

最後に太地の町長が言っていた、世界から研究者が集まるような研究施設をつくりたいというのは良いアイデアかも。湾全体を活かして、最終的には外洋との囲いのない、鯨が自由に泳げるような研究施設。実現したら面白いね。

一度、太地町に観光に行ってみたい。とても綺麗な町だった。

(イルカとクジラは基本的に同じで、大きくならないクジラをイルカと呼んでいるだけなので、今回はぜんぶ「鯨」で通しています)

[PR]
by rivarisaia | 2017-11-29 23:31 | 映画/日本 | Trackback | Comments(0)

オラファー・エリアソン 視覚と知覚

2008年の「ザ・ニューヨークシティ・ウォーター フォールズ」のインスタレーション完成までを追いつつ、じっくりとオラファー・エリアソンのレクチャーを受けたような感じのおよそ80分のドキュメンタリーです。

b0087556_23214262.png
オラファー・エリアソン 視覚と知覚(Olafur Eliasson : Space is Process)
監督:ヘンリク・ルンデ、ヤコブ・イェルゲンセン

彼の言っていたことを、たぶん私は半分も理解できてないんだけど、世界の見え方、空間の捉え方について考え直すきっかけにもなりそう。とはいえ、いま忙しくて、なかなか考え直してる時間がないんですけどもね! 折に触れて、そう、散歩してる最中とかに思索にふけりたいものですよ。

それにしてもオラファー・エリアソンすごいなと感心したのが、彼の作品を見るたびにどうしてこんなことを思いつくのか不思議でしょうがなかったんですけど、インプットのスケールが半端ないこと。

人はまったくのゼロからは大したものが生み出せなくて、なにかを創造するというのは「インプットしたものがその人の中を通過して形を変えてアウトプットされること」だと思っているんですけど、オラファー・エリアソンはそもそものインプットが壮大だった。

たとえば生まれ故郷のアイスランドに行って、大自然と向き合い写真を撮る。それも落ちたら死ぬような氷河の裂け目の写真を、車に設置したハシゴに乗っかって上から撮影したりしていて、いやーそりゃもうアトリエにこもってたりしてたんじゃ、あんな作品は生まれてこないよね、そうだよね、インプット大事……!としみじみ思った次第です。

あとね、アート作品鑑賞するときに、最近ぼんやり眺めちゃうことが多かったんだけど、もっと頭使って鑑賞しないとだめだな、と反省しました。

[PR]
by rivarisaia | 2017-11-25 23:25 | 映画/洋画 | Trackback | Comments(0)

ドリーム

相変わらずバタバタしていて、フィルメックスには行けそうにないですが、映画祭の前に観た映画の感想をちまちまアップすることにします。

b0087556_23074229.png
ドリーム(Hidden Figures)』監督:セオドア・メルフィ

最初は「私たちのアポロ計画」という副題がついていたけど、「マーキュリー計画なのに、なんでアポロやねん!」という批判が起こり、副題は撤去されました。のちのアポロ計画にもつながってるからって、メインはあくまでマーキュリー計画なのにアポロはナイ。ドリームっていうのもちょっとズレていますが。

1960年代初頭、ヴァージニア州にあるNASAのラングレー研究所が舞台。トイレもバスの座席も学校も、社会のあちらこちらが白人用と有色人種用に分けられていた時代のアメリカ。

計算手のキャサリン・ジョンソン(タラジ・P・ヘンソン)、計算部代理スーパーバイザーのドロシー・ヴォーン(オクタヴィア・スペンサー)、エンジニアのメアリー・ジャクソン(ジャネール・モネイ)という3人が、黒人でしかも女性という二重のハンデを背負いつつも、偏見や差別と闘い「マーキュリー計画」に大いに貢献する、という映画です。

電子計算機が登場する以前は、「コンピュータ」とは「計算をする人間」を指し、大勢でチームを組んで複雑な計算を人力で行っていて、NASAでも多くの黒人女性が計算手として雇われていました。

脚本なのか編集なのか、ややひっかかるところや、史実とは異なり盛っている部分もあったとはいえ、全体的にはよくできていて、主演3人が前向きなので暗く重々しい雰囲気にならず、明るい気持ちになれるのがよかった。

とにかく私は、前例がないことをやったり、既存のバカっぽいルールを壊したりする人の話が好きなのです。

ただ手放しですっきりする映画というわけでもなくて、NASAのような進歩的な人たちがたくさんいるはずの場所で、おまけにズバぬけて優秀な人材に対してもこの扱いか、じゃあ一般社会での凡人はもう絶望的じゃないか、という気持ちにもなっちゃう。

主演3人がチャーミングなのはいうまでもないんだけど、いま振り返ると強烈に印象に残っているのが、キルステン・ダンストが演じていた計算部の白人女性上司ヴィヴィアン・ミッチェル。

たぶん彼女は、女性の地位が低い職場で苦労している人なんだと思う。だから、私だって我慢してすごくがんばっているんだから!と考えているはずで、偏見に満ち満ちた態度を取ってしまっていることに、マジで気づいてなかったというか、そんなことを考える余裕もなかったんじゃないかなあ。

こういうことは往々にして起こる。彼女のような人はどこにでもいるし、誰の心の中にも、当然私の中にもきっとヴィヴィアンはいるから、まさに他山の石としたい人物だった。

そしてヴィヴィアンの男性版が、シェルドンことジム・パーソンズ演じるポール・スタフォードで、ヴィヴィアンとポールは私たちの反面教師コンビなのでしょう。

いっぽうでジョン・グレンが見た目も行動も好感度メモリ最大限までアップした状態で登場するんですけど、男前すぎないですか。「あ、彼女たちにも挨拶させて!」とにこやかに黒人計算手チームに歩みよっていく場面とか、なんだろうあの爽やか好青年っぷりは。

[PR]
by rivarisaia | 2017-11-20 23:25 | 映画/洋画 | Trackback | Comments(0)

見たもの読んだものについての電子雑記帳


by 春巻まやや
プロフィールを見る